欠品 『リンの日常』

「あ、リンちゃんおはー」
「え!? リン来た!? おっはろーーー!!」
「ん、おはよ。ていうかアリサ、あたしの姿確認してから挨拶しなさいよ」
「そ〜んな細かいこと気にしなさんなって〜! 仮にリンが透明人間になったとしても、オレはずっとリンの友達でいてあげるからさっ!」
「嬉しくないし、意味わかんないわよ」
「ま、まぁまぁ」

長期休暇前日。
リンの通う高等部は、いつにも増して騒がしい。












「あ、いけない…羽ペン忘れてきちゃった」
「わたしの貸してあげる。たくさん持ってきてるから」
「ん、助かるわ。ありがたく使わせてもら……」
「「「「女帝!!!!!」」」」
「ひっ!?」

リンの周囲には、突如現れた同学年の男子生徒達が。

「女帝! もし良ければ、僕のペンを使ってください!」
「女帝! 俺のだ! 俺のを使ってくれ!」
「おいお前ら! 女帝に物を押し付けるとは何事だ!?」
「そうだそうだ! 選択権は全て女帝にあるんだぞ!!」
「押し付けがましい低俗な民衆共め! 恥を知れ!!」
「え、偉そうに……俺達に説教する気か!?」
「説教と高説の違いもわからんとは…はっ! これだから男というものは!」
「お前も男だろうが!?」
「というわけで…女帝! 俺のペンをお使いください! 女帝のために今朝新調したばかりなんです!」
「嘘つけ! お前その1本しか持ってねえだろ!?」
「う、うるさい! つーか何でお前は俺の持ち物把握してるんだ!?」
「す、好きだからに決まってんだろうが!!」
「うおええええええええーーーーーーorz」

――なに、コレ。

「くおおらあああああーーー男子共ーーーーー!!!!!」
「や、やべ!? アリサだ!」
「ここは一時撤退だ!」
「くそっ! もう少しで女帝を俺の女にできたのに……!」
「バカ言ってないで逃げるぞ! アリサにボッコボコにされるぞ!?」

ぎゃー逃げろーという喧騒と共に、リンに群がっていた男子生徒達はそそくさと自分達の所属科へと逃げ帰っていった。

「はぁ…はぁ…たくっ! これだから性欲の塊共は!」
「相変わらず凄い迫力だね、アリサは」
「迫力? 顔芸の間違いじゃない?」
「リンがひどい!?」
「まぁ、でも…おかげで助かったわ。ありがとね」
「リンがデレた!?」
「う、うっさい! 別にデレてないわよ!!」

リンを守る側近2名。
1人は顔芸?が得意な突撃隊長アリサ。
そしてもう1人は、

「にしても、リンちゃんどうして『女帝』なんて呼ばれてるんだろうね?」
「さぁね、考えたこともないわ」
「情報通のローラでもわかんないん?」
「情報通は買い被りすぎだよ〜」

ローラは前髪をいじりながらモジモジとしている。

「これはわたしの意見だから、参考程度に聞いてくれればいいよ」
「ドキドキ♪ ワクワク♪」
「うるさいわよアリサ」

ローラはコホンと咳払い。

「まぁ考えればすぐわかることなんだけど、リンちゃん普段周りに対して凄くツンケンしてるでしょ?」
「そうかしら?」
「そうじゃね?」
「うん。だから近寄りがたいって言うか、ちょっとだけ怖いって言うか……」
「でも、な〜ぜか男子は寄ってくるんだよな〜」

アリサが首を傾げる。
まぁ、正直理由はどうでもいい。
なぜなら最終的にはアリサが追い払ってくれるからだ。

「そこは単純にリンちゃんが可愛いからじゃないかな? あとほとんどの男子は生粋のドM?」
「な!? ちょ、何言って……」
「あ〜確かにな〜。同性のオレでもリンなら『逝ける』と思う」
「逝けるってなによ!? 逝けるって!」
「褒めてんだよ〜! ほ〜ら照れんなって〜♪」
「べ、別に照れてないわよ! ちょ…な、なによその顔は?」
「べっつに〜?」
「ローラ!? アリサ殺ってもイイ!?」
「お、落ち着いてリンちゃん! ね?」

午前の時間はあっという間に過ぎていく―――












「は〜授業ダルかった〜〜〜」
「これで、やっと長期休暇に入るわね」
「そうだね。リンちゃんはお休み中、どこかお出かけしたりするの?」
「えっと、そうね…今のところ特に予定は……」
「リンってば、大好きな『お兄ちゃん』と一緒に過ごしたいんだよな〜?」
「は、はああ!?」

リンの顔がボッと赤くなる。

「だ、誰がお兄……兄さんのことが好きですって!?」
「言い直さなくても良いんだぜ〜? ほらほら言っちまえよ〜? 『お兄ちゃん♪』ってな!」
「うがあああああああああ!!!」
「ぎゃあああああああああああああああ!!??」












帰り道。

「いててて…リンに噛みつかれた〜」
「フンッ!」
「アリサの自業自得だよ?」
「え〜〜」

3人で帰路につく。
いつもの光景。

「でも…フフッ♪」
「な、
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