9品目 『お嬢様ランデブー』

某日。

「店長、裏の倉庫見てきました」
「おつかれさまっすー。どんな感じっすかー?」
「いくつか在庫不足の物がありました。特に栄養剤と、あとは日用品の類ですね」
「あー、やっぱりそっすかー。予想通りっすねー」
「さ、さすがですね」

僕にはどの品物が多く売れているかなんて皆目見当もつかない。
品物を発注するときに必須のスキルであると店長は語るが……。

「あの、店長?」
「っすー?」
「不確かな感覚に頼るより、毎回ちゃんと在庫確認すれば良いじゃないですか?」
「………」

うぅ…ジットリ。

「まーそうなんすけどねー」
「そうですよ。これからはこまめに確認―――」
「するのはめんど臭いっすー。人生楽に生きたいっすー」
「……さいですか」

……さいですか。

「それじゃぁ、どうして今回は僕に確認させたんですか?」
「勘が鈍っていないかーシロさん使って検証したっすー」
「ひどい!?」

なーんてやり取りをしている冬の午後。
このほのぼの空間を跳ね除ける出来事は、突如として訪れた。

バンッ!!

「「!?」」

お店の扉が勢い良く開かれる。
そして僕達が視線を向けた先に立っていたのは……

「ファルシロン! わたくし自ら、あなたを迎えに来てさしあげましてよ!」
「……チッ」

現領主様の娘、ロザリーさんが立っていた。
というか、この人には登場する度に驚かされる。
あとどこからか舌打ちが聞こえたきたけど、気のせいだろうか。

「迎えにって…すみません。僕、ロザリーさんと何か約束してましたっけ?」
「いいえ? わたくし、先程あなたと『食事』に行きたいと思いましたの」
「はぁ、そうなんですか」
「えぇ、そうですの」
「………」
「………」
「……え? それだけですか?」
「? えぇ、それだけですわよ?」

なんて行動力……!

「えっと…随分と急ですね」
「お母様も仰っていましたわ。『思い立ったが吉日』!」
「ナルホド」
「お父様を寝取るときも、まったく迷いはなかったと聞きましたわ。まさに即決!」

微妙にニュアンスの違いを感じるけど…う〜ん、どうしたものか……。

「シロさん」
「?」

店長が僕に耳打ちしてくる。

「(うちは大丈夫っすからー、2人で行ってくるっすー)」
「(え、でも……)」
「(あのお嬢様はー『腐っても』領主の娘っすー。機嫌を損ねるのはー得策じゃないっすー)」
「(う〜ん……)」

正直、ここで機嫌を損ねてもどうなるものでもないと思う。
14年も傍にいれば、喧嘩の1つや2つ日常茶飯事だったし。

「(イイから行くっすー。口答えは許さないっすー)」
「(そ、そこまで言うなら…わかりました、行ってきます)」

僕は作戦会議?を終えロザリーさんへと向き直る。

「お誘い、謹んでお受けします」
「さすが、ファルシロンですわね♪」

そう言うとロザリーさんは、僕の二の腕に絡みつくようにして密着してくる。
む、胸が……///

「イチャつくならー他所でやるっすー」
「ふん! タヌタヌに言われるまでもありませんわ!」

店長とロザリーさんとの間に一瞬火花が散った…ような気がした。
僕は店長にアイコンタクトで、

「(店長、この埋め合わせは必ず……)」
「(ニヤリ)」
「(  ゚ ▽ ゚ ;)」

ロザリーさんは僕を店の外へと連れ出す。
なんだろう、今の怪しげな笑みは……。
僕、どうなるんだろう……。
扉がゆっくりと閉まる向こうで、店長の表情が徐々に狭まり…そして見えなくなった。

「さあ、早く行きますわよ! 例のレストラン、あなたのために貸し切りましたの♪」
「か、貸し切ったんですか!?」
「ふふん♪ 当然のことですわ! もちろんその後、最高級のホテルも手配していますのよ?」
「ホテル!?」
「お父様とお母様の計らいですの。『昔のように、たまには2人1つのベッドで眠るのも悪くないのではないか?』と。もちろん、わたくしも大いに賛成ですわ! あぁでも、昔はリンも一緒でしたわね? ふふっ♪ でも、今夜はあなたと2人きりですわ♪」

………。
色々と、覚悟をした方が良さそうだ―――





〜店長のオススメ!〜

『メス豚汁』

男性が飲むと女体化
女性が飲むと淫乱になる
※効果は一時的なものです

価格→1980エル

12/08/08 22:39更新 / HERO
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