ヴァンパイアからの招待状2/ヴァンパイア

「―――おや、来ましたか」


椅子に腰かけ、ガルルヴェルはマリー達の方を見向きもせずに、本を読んでいた。


「来ましたか、じゃないぜ……全く」

「マリー、この人とは初対面じゃ……?」

トバリは脳味噌をフル回転させて今の状況を整理しようとしていた。



あらすじ。

ノワールの洋館に、ある用事で招待されたマリーとトバリ。

招待客の中には、何故か扮装しているスヴァルがいた―――。


あらすじ終わり。



「私自身、見つかるとは思っていなかったんです…がっ!?」

「いい加減その面倒な設定止めろっての」


マリーは容赦なく首根っこを掴んだ。


「マリー、止めるのはこっちですよぉ!すみません、ガルルヴェルさん!」


トバリはマリーを止めようと必死だが、ガルルヴェルは「……?」といった様子だ。


「トバリ君、まだ気付いてないのかい?」

「? 何がですか?それよりもその手を早く……」

「こいつ、スヴァルだよ」


トバリは今言われた事が理解できず、固まったのち、


「…………え?」


と、思わず聞き返していた。


「ほれ、声とか髪の毛とか元に戻しな」

「ええ〜……今回これ地毛なんですけど」

「マジかよ、お前」

「…………あっ、ホントだ!」


声を聞き、やっと気付いた様である。


「しっかし、何で分かったんですか?
俺はちゃんと『魔法障害【マジカルウォール】』つけてる筈なんですけどねぇ―――しかもレベル4の強めのヤツ」

「私を甘く見るんじゃ無いよ。私にはもうトバリがいるんだからさぁ」

「そうか、大佐の視認レベルが上回ったのか……それじゃ見破られる訳だ」

「あのー、話が全く見えないんですけど」

「そうそう、目的を忘れるところだった。
何故君はここに変装までして来たんだい?」


スヴァルは読んでいた本を閉じ、ドアに鍵をかけた。


「今回は仕事じゃないんです。プライベートの頼まれ事ですよ」

「確かにヴァンパイアの調査はまだ先の筈だったが……プライベート?」

「依頼として、『ヴァンパイアのワイン』を持ってくるように頼まれたんです」


トバリは疑問を口にした。


「でも、それって変装しなくても……」

「確かにそうかもしれないが、招待状を貰うためには印象付けをしなきゃならない。
分かるだろ?呼ばれなかったら意味が無いんだ。
だからこうして、前もって接触した」

「なるほど……勉強になります」

「んで、印象付けの為に、こんな面倒な性格のキャラクターを演じた訳か。
君もなかなか馬鹿だねぇ。
馬鹿っていうか、完璧主義者っていうか……」

「馬鹿って……。
大佐は余計な事まで言うからなぁ……だから今までモテなか―――」

「何か、言ったかい?」

「……あー、―――いや、何も?」


場の空気がとてつもなく殺気立っている。


「中尉、それを含めて僕は好きなんです。
どうか、大佐の昔を掘り起こさないであげて下さいよ」


トバリは深い意味を持たせて言った訳では無かったのだが、


「トバリ君、今日は寝かせないよ…!(ハァハァ」

「あれ!? 大佐の心情に何が!?」


マリーにとっては愛の言葉以外の何物ではなかった。


「愛を深めるんだったらもう出ていって欲しいんですけどね……」


スヴァルは目の前のバカップルを見て溜め息をつくしかなかった……。



「さて、私自身はもうしばらく赤の他人を貫き通すかね」

「トバリ、そろそろ行くわよ。
ガルルヴェルさん、くれぐれもボロが出ないように頑張ってくれたまえよ?」

「大佐、プレッシャーかけちゃ駄目ですよ……中尉、自然に行けば大丈夫です」


スヴァルは一息ついてから、「後学の為に言っておくが」と前置きして、


「トバリ……『大佐』、『中尉』じゃないだろう?
今は別人だ―――『中尉』でも何でもない。全力で今の役になりきれ。
それが一流への道だ」


「分かったな?」と、トバリに説いた。


「了解しました。以後心掛けます。それじゃ、失礼します」


二人は鍵を開け、ガルルヴェルの部屋を去っていった。

ガルルヴェルは再び読書に戻る。


(やはり、魔女は敵に回さなくて正解だな……全部お見通しなのはキツい)


そう思っていると、ドアをノックする音が室内に響く。

返事をするまえに、「御免」と一声、勢いよくドアが開いた。


現れたのは、リザードの女性―――カゲロウと、名乗ったサムライであった。


「これはこれは…先程の侍のお嬢様。読書中の私自身に何か用か?」

「読書中に押し入って申し訳無い。だが、どうしても言いたかったのだ」


カゲロウは鞘に入ったままの刀を立て、ガルルウェルの目を見据えて、告げた。


「私を、雇ってほしい。教団魔物調査
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