「君、風邪はもう治ったのか」
声の方に振り返る。先輩が俺のデスクの傍に立って、うっすらと笑みを浮かべていた。組んだ腕の上に乗った豊かな胸に思わず目がいくが、先輩が見ているのに気付いてすぐに逸らした。
「おかげさまで。……年末だっていうのにすみませんでした」
俺が休んだのは二日間だけだが、年末という間の悪さ。その間、俺の仕事のほとんどを先輩が代行してくれた上、彼女は俺の家へ食料や薬を買って届けてくれたり、看病に来てくれたり、感謝しきれないほどに尽くしてくれた。
死ぬほど忙しかったのは想像に難くない。だが先輩は、激務の合間を縫って看病に来たときも平生通り、クールな笑みを絶やさずテキパキと食事の用意をしてくれた。多分、超人なんだろう。
「ま、なってしまったものは仕方ない。それよりも、優秀な私がこの会社に居た幸運をもっと有難がるべきだな」
「……有難がってますよ?」
「ふふ、普段の君からはどうもその気配がないからな。普段からもっと頼ってくれてもいいんだぞ?」
先輩は少し近づいてきたかと思うと、流れるような動作で俺の首に腕を絡めて、身体を背中に押し付けてきた。耳にかかる吐息がくすぐったい。
「あ、あの……先輩」
「もう仕事は終わりだろう? この後、ささやかな忘年会に付き合ってくれないかな?」
「忘年会って……」
「お茶飲みの相手をしてもらうだけさ。君は病み上がりだし、手加減してやるよ」
「ああ、はい。喜んで……その、そろそろ離れてもらわないと」
「興、奮……してきちゃう?」
つん、と耳たぶに生暖かく柔かいものが当たる。
「うぁ……あ、止めてください……」
「んー? どうした……まだ耳を軽く舐めただけだぞ?」
今度は耳の淵をなぞるように舌の先端が移動する。ぬるぬると唾液を塗り、一通り蹂躙して、仕上げに軽く齧った所で先輩は満足したらしく、俺の首から腕をほどいて身体を離した。
「ふぅ、悪かったよ。さ、早く支度してくれたまえ。急がないと年が変わる」
「は、はい……」
耳の湿った感触をなるべく意識しないように、俺は若干前かがみになりながら席を立った。
先輩はその様子をニヤニヤと心底嬉しそうに眺めていた。
「どうした、腰でも痛めたか? なんならさするぞ」
「いえ、結構……」
先輩に連れられて入った店は洒落たバーで、随分と落ち着いた雰囲気だった。入口が外からは少し分かりにくいところに設置されているせいか、年末にしては客がかなり少なかった。
カウンター席に並んで座り、先輩の注文したのと同じカクテルを注文した。
「君も好きなのか? アラウンド・ザ・ワールド」
「いえ、カクテルを全然知らないので」
「……そうか。言ってくれれば教えたのに」
間を置いて二つのグラスが目の前に置かれる。先輩は思い出したように被っていた帽子を脱いだ。パタパタと埃を払ってから、脇に置いて、グラスを取った。
倣って、俺は残った方のグラスを取った。
「今年は世話になったね」
「いや、俺の方がお世話されっぱなしで……」
「言ったろう、もっと頼れって。君は一人でなんでも抱え込む……心配なんだよ私は」
ちょっと寂しそうに笑って、先輩はグラスを口につけてくいっと上品に傾けた。
「私が呑みに誘っても全然ノってこないしな」
「それは……」
二人で呑んだら何をされるか分からないじゃないですか。
言おうかどうか迷って、結局言わないでおいた。普段のセクハラなんか目じゃないくらい、先輩には世話になってるのだ。会社に入ってきてすぐの頃からずっと。
カクテルを一口、呑む。爽やかな味わいだった。美味しい。
「酒、弱いんで……迷惑かけるかも、と思って」
先輩は空になったグラスをバーテンダーに預けた。俺はグラスの残りを飲み干して、同じように預けた。
前触れもなしに先輩は俺の肩を抱いて、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。
「酒に弱いなら、あんまり長居できないな」
「俺、付き合いますって……」
先輩の手が肩から下へするすると移動し、ズボンの上から俺の股間を愛撫する。もぞもぞと弱い刺激がもどかしい。お返しに先輩の胸に手を置き、優しく揉む。
「あんっ
#9829; ……ふふっ、いつもジロジロと私の胸見ていたのは、触りたくてしょうがなかったからかな?」
「だって、こんなに大きくて形が良くて……柔かい胸だから」
「ありがとう。でも、私はこっちの方を触ってほしいな……
#9829;」
先輩は俺の手を掴んで、下の、秘所へと誘導した。ぴったりとしたズボン越しにやわやわと刺激すると先輩は艶やかな嬌声を上げた。
「あはぁっ……
#9829; どうだ、私のココの感触は? 興奮するだろう? してるだろう?」
「はい。あの……舐めてもいいですか」
「ここが私の家なら光の速さでオーケーしたが……
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