日が暮れて。しばらく待って。
深夜三時頃。ちーくんがやっと寝付いた。
私はちーくんの部屋にそっと侵入した。
昼寝した分寝つきが遅かったけど、その分朝は長く弄れるかな?
これは私の趣味だ。
ちーくんが愛しい。ちーくんに欲されたい。ちーくんが触れる全てのものが私であればいいのに。ちーくんに食べられたい。
母さんに聞くと、こういう感情はショゴスにとって一般的なものらしかった。
だからこそ。
私はちーくんになりたい。ちーくんの身体を構成する、ちーくんの心以外を私にしたい。ちーくんの心に従う、ちーくんの身体になりたい。勝手に私の身体にして、ちーくんに無意識に使われたい。
この感情は趣味に他ならない。
普段は服にして隠している粘液が、欲望に応えるようにどろりと足元に垂れた。
そっとちーくんの頭に手を伸ばす。
ちゃんと洗われた綺麗な髪だ。
だけどこれも私にしたい。私がいい。私が洗われたい。ちーくんの指に掻き乱されたい。
ちーくんの頭。大事な部分だ。守るのは私がいい。ちーくんの髪の毛よりも、私の方がいい。
指先から私の欲望の結晶がだらりと垂れる。
毛根に少し粘液を垂らし、毛穴の隅々に浸透させる。
皮膚を傷つけないように拡げて、そっと毛を抜く。
代わりに私の身体で作った毛を埋める。これで私になる。
これを繰り返す。頭髪は本数が多い。じっくりと取り掛かる必要がある。
ちーくんだったものは私が全て吸収する。これはこれで価値あるものだ。
ちーくんの顔がすぐ近くにある。
眉毛。私にしたら、私が整えられる。一番ちーくんをかっこよくできる。
私は頭を振って余念を消した。まずは髪の毛。焦るな、私。
三年間も待ったじゃないか。ゆっくりやろう。
しかしちーくんの頭髪が私を惑わせる。
ちーくんの頭皮に私を詰める。これで興奮しないのは魔物娘じゃない。
両腕の産毛も昨日同じように私に変えてある。
産毛は最悪抜けたままでもいいが、頭髪はダメだ。
私は努めて丁寧にちーくんの頭皮と向き合った。
朝を迎えた頃、既にちーくんの頭髪、眉毛、髭は全て私に置き換わっていた。
睫毛と鼻毛はまだ手を付けられない。もし起きたら、と思うとダメだった。
多分昼前まで寝るだろう。だが途中で起きない保証もない。
三年という時間のコストを考えるとそんなリスクは背負えない。
多分、きっと、ちーくんは私が好きだ。そのことを思うたびに、下半身が熱を持つ。落ち着け私。
でも、だからこそ嫌われたくないし、もし嫌われたら私は。
私は関係を前に進めるのが怖い。
私はちーくんの恋人になりたい。
だが、同時に姉でいたいのだ。
普通の魔物娘らしくないとは言われる。それは自分でもわかる。
でもちーくんがどう思うかが重要なのだ。
当のちーくんはまだ寝ている。
私はその額にそっと唇を落とした。
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