レイラちゃんと、人間失格な僕

「おじさん、お世話になります」

「いいのいいの。レイラちゃん、昔はたまにうちに泊まったりしてたんだよ。覚えてる?」

 もう高校生にもなったレイラちゃんは恥ずかし気に俯かせていた瞳をこちらに向けた。
 
「はい、しっかりと」

「レイラちゃん昔から賢かったもんなあ」

「そんなこと……」

 レイラちゃんは恥ずかしそうに頭を下げた。ぴこぴこと尻尾が揺れているのが可愛らしい。
 昔に比べてかなり大きくなった。まあ当然なのだが、きっと種族的な理由もある。
 
 レイラちゃんはグリフォンだ。翼と、猛禽類の爪を持ち、下半身は獅子のものになっている。
 獅子の下半身は、すらりとしているものの当然人のものより大きいし、腰巻きのように生えたたてがみが更に大きく見せている。つられて身体も大きく、高校生なのに身長は僕と大差ない。胸も大きい。
 
「そういえば、レイラちゃんって巣持たないの?」

 弟夫婦の娘で、弟からグリフォンの巣に対する執着を聞いていたので、通学のためとはいえそう簡単に住処を変えられるとは思えないのだが。
 
 レイラちゃんはにこっと笑ってスマホを振った。
 
「私の宝物は全部これとパソコンに入ってるので」

「現代人……」

 今どきの魔物娘はそこまでデジタル化してるのか。まあ、部屋に執着されて何も取り出せなくなるよりはよっぽどいいか。
 子供の時から写真を撮るのが好きだったことを思い出した。微笑ましい記憶だ。
 
 レイラちゃんは尻尾でころころと器用にキャリーケースを引きながら、勝手知ったるとばかりに家の中をとことこ歩いていく。
 
「二階の右の部屋ね」

「ん、わかりました」

 本当によく覚えているもので、レイラちゃんはそのままキャリーケースを持ち上げて階段を上がっていった。
 レイラちゃんは賢いね。彼女が子供のころに繰り返していた言葉が、また口をつきそうになった。
 
 
 
 
 
 レイラは兄貴を気に入ってるから。弟はそう言った。
 しかし、うちに来てからというもの、レイラちゃんはニコニコしながらスマホを眺めていることが多いのだ。
 
「何を見ているんだ?」と尋ねても、「宝物だから秘密です」としか言ってくれない。

 とはいえ、別に嫌われているわけではないというのはわかる。
 
 それが一番よくわかるのが食事の時だ。
 僕は仕事をしながら、ほぼ毎日自炊をしている。それが弟が僕に娘を預けた理由の一つでもある。
 
「あーん」

 レイラちゃんの口の中で、舌がゆらゆらと揺れる。
 レイラちゃんは食器を使えないのだ。なんせ手が鳥の脚のような形をしている。だから執拗に「あーん」を強請ってくる。
 
「あーん」

 だから、僕が隣に座って、代わりに箸やスプーンを使ってレイラちゃんに食事を与える。
 その際にいちいちレイラちゃんは嬉しそうな顔をするのだ。これでは嫌われているとはとても思えない。
 
 箸を引き抜くと、レイラちゃんとの間に唾液の橋が架かる。
 それがまたいやらしく見えるのは、僕が意識しているからだろうか。
 
 毎日の朝と夜の食事が、変な意味で楽しみになってきていることだけはレイラちゃんに知られたくなかった。
 
 スマホを見るレイラちゃんの笑顔さえどこかいやらしく見えて、僕は慌てて目を逸らした。
 
 
 
 
 
 僕の生活はレイラちゃんが来て、少し楽になった。
 週末になると、洗濯や掃除をしてくれるからだ。
 
「おじさん」レイラちゃんが言う。「洗濯機回しときました」

 とはいえ、何から何までできるわけではない。レイラちゃんの爪は鋭く、一枚一枚服をつまんで干そうとするとどうしても穴が開いてしまうそうだ。
 だからこうなってしまうのだ。
 洗濯機が止まってから、僕はレイラちゃんが自室にいることを確認すると、黒いパンツをおそるおそるつまみ上げた。
 
 大人びた紐パンの、生地の部分に穴が開いてしまっている。それがやけにエロティックで、僕はそれから目が離せなくなって。
 息が荒くなるのを必死に抑えながら、そっと手を添える。心臓がうるさい。
 ゆっくりと広げてみると、その真ん中。レイラちゃんの女の子の部分が当たっている場所に縦に穴が開いていて、まるでそういうグッズのようで。
 
 とことこっと足音がして、僕は慌てて洗濯機にパンツを放り投げた。
 
 ちょん、とレイラちゃんが顔を出す。
 
「あ、終わってますね。ちょっと気になってたんですよ」

 そう言って、レイラちゃんは洗濯機から一つの布を取り出した。黒い、紐パンだ。
 
 紐の部分を器用につまんで広げたレイラちゃんは少し顔を赤らめた。布も広がり、真ん中の細い穴がはっきりと見えた。
 
「やっぱり穴空いてる……。ほら、見てください」レイラちゃんが僕にパンツを
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