湯船の中で立ち上がった英は、じっと見つめてくる鏡花と正面から互いの身体を観察し合った。
秘蔵の写真にも存在しない、隠すことなく晒された裸体を改めて見てみると凄い、とか綺麗、といった感想しか出てこない。
いつまで飽きずに眺めていられることだろう。
(この視線がなければ……!)
英と比べれば幾分か遠慮がちな視線は、それでも英の身体を上から順に確実になぞっていって、股間でその動きを止めた。
自分が見られていることにも頓着せずにそこに視線を集中させていて、英はなんとも落ち着かない気分だ。
「じゃあ、約束通り、洗わせてもらおうかな」
声を張って言うと、英は湯船から出た。
浴室は立ち上る湯気で暖かくなっている。これなら風邪をひく心配もないだろう。
ナイロンタオルにボディーソープを付けて泡立てていると、鏡花が首を傾げた。
「あれ……?」
「え?」
何かおかしなことをしてしまっただろうかと思って疑問符を返すと、鏡花は口ごもりながら言う。
「そちらで洗うのですか?」
確かに繊細そうな肌だ。洗う際にも気を遣っているのかもしれない。
「もしかしてスポンジ派だったか? ちょっと待ってくれ」
家に体を洗うためのスポンジなど置いてあっただろうかと英が考え始めたところで鏡花が「あ、いえ」と止めた。
「その、手で直接洗うものかと……」
それは、自分の体を手で洗うということがなかったので見逃していた可能性であり、また、多少は頭をよぎったものの、それはそれであまりにもスケベ心に忠実すぎやしないかと敢えて選択から外した考えでもあった。
(俺、これでも少しは遠慮してたんだな……)
感慨深く思いながら、英は訊く。
「いいの?」
「お嫌でなければ……」
嫌だなどと思うはずがない。
英はナイロンタオルから手に泡を移した。
タオルを戻して手にボディーソープを追加し、丁寧に両手にヌルヌルを広げる。
そうして手を浅く広げて構えると、英の手をじっと見つめている鏡花とまた目が合った。
鏡花の体に触るために熱心に手を擦り合わせていたためか、視線に対して後ろ暗い気持ちが湧いてしょうがない。
思わず動きを止めた英に鏡花が首を傾げ、それから何か思いついたように手を迎え入れるように広げた。
後ろ暗さを感じる必要など何もないと言ってくれるような行動に、流石はキキーモラだと思いながら、英は手を伸ばした。
思わず唾を飲み込むと、鏡花がそわそわしだす。
ゆっくりと近づいた英の手は、そっと包むように鏡花の首に触れた。
絞めてしまおうと思えばそれができる行為を目を閉じて受け入れた鏡花に、英は生き方を変えようと決めたあの頃から自分の中で失われてしまったはずの加虐心が鎌首をもたげるのを感じた。
(いかんいかん)
こんな気分になるのはこの興奮のせいだろう。
英は自分の猛る心を宥めるように鏡花の首を撫でさする。
気持ち良さそうに鼻から息を抜く鏡花に心を癒されながら、英は手を肩へと移動させた。
頼りない肩を辿って細い腕に行き着く。
ぷにぷにとした二の腕に泡を馴染ませていき、手首の羽毛を逆毛に撫でる。
そのまま掌に下って最後は指を絡めた。
掌同士を重ねて、絡ませた指を滑らせると、淡い力で鏡花が握り返してくる。
それに気恥ずかしさを感じた英は手を解いて手首を掴み、逆立ったままの羽毛を片方ずつ手櫛で整えていった。
泡で重くなった羽毛を手首に張り付かせて満足した英は、今度は腕の付け根――脇へと手を伸ばした。
「はい、バンザイしてー」
「ば、ばんざーい……」
素直に上げられた腕の下にできた窪みに手を触れる。
二の腕の下から胸の境界までに掌を這わせると、鏡花がくすぐったそうに身をよじった。
それを楽しく眺めながら、手はすすっと脇腹へと滑らせていく。
「ん、ふ……っ」
手が見事な腰のくびれに沿うとそこから腋窩へとまた手を戻していく。
その動きごとに震える鏡花に合わせて、英の目の前で乳房がふるんと揺れる。
掌では余ってしまうだろう大きさに成長したそれは、メイド服を押し上げる様を見るたびに密かに妄想していた以上に美しい円錐形だ。
それが揺れる様をもっと楽しみたくて何度も脇に手を這わせていると、鏡花が「あの……」と声をかけてきた。
「こちらはもう十分綺麗になりましたので、そろそろ別の場所に移って――見るだけではなく、直接触っていただいてもよろしいかと思いますが」
「そ、そうかな。いや、汗をかきやすい部分だから念入りにと思ってさ」
いつの間にか魅惑の揺れに催眠にかけられていたらしい。
(流石おっぱい。魔性だ)
声をかけてもらった英は、腹をくくって両の手を乳房に向けて構えた。
「じ
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