二日後、サイカはテルシオの冒険者ギルドにいた。
彼の手には採集依頼に基づいて採集してきた薬草が入った袋があり、目の前にはミリーがいる。
「これ、お願いします」
「は〜い、毎度どうも!」
ミリーはそう言うと、袋の中身を確認してカウンターの中から一枚の紙を取り出し、スタンプを押した。
その後、彼女はギルドの奥に行き、再び戻ってきた時は片手に小さな革袋を持っていた。
「依頼の品、確かに受け取りました。
これが報酬です」
「ありがとうございます!」
サイカは袋から報酬の硬貨を抜き取り、自身の革袋に入れる。
袋ごと報酬を受け取る者もいるが、かさばるためにサイカは中身だけをいつも受け取っている。
「すいません、サイカさん…ちょっと…」
「え? なんですか?」
そのままカウンターから立ち去ろうとしたサイカを、ミリーは呼び止めた。
「実は……」
彼女は非常に気まずい様子で、一枚の依頼用紙をサイカに見せた。
その依頼用紙には採集依頼の内容が書き込まれていた。
採集品は『目覚まし草』。
長距離を移動する行商達などが好んで使っている薬草で、葉の部分は眠気覚ましに、茎の部分は洗って食べれば滋養強壮にも効果がある。
これだけなら問題ない。
だが、その採集地点である草原地帯は、ラミアの集落に近かった。
「……」
「……嫌なら、受けなくても構いません。
断ったとしても、決してサイカさんが不利になるような事はありません」
ミリーは周りに聞こえないように、慎重に話した。
この依頼は、現在のテルシオの反魔物領という立場からして、後々問題になりやすい依頼だ。
テルシオが親魔物領だった頃は、ラミアの集落との関係も比較的良好だった。
それこそ、たまにラミア達が作った民芸品を町で見かけるくらいだ。
だが、テルシオが反魔物領となってからはテルシオと集落との関係は断絶。
そしてここ最近、人間のラミアを含めた魔物娘に対する襲撃事件が相次いでいる。
もっとも、襲撃した人間はことごとく魔物娘に捕らえられ、二度とテルシオには戻ってきていない。
それどころか、逆に魔物娘の人間に対する逆レイプ、誘拐事件が多発している有様である。
ミリーはサイカが魔物娘に対して寛容かどうかは知らないが、彼が優しく、誠実な性格であることは知っている。
現在町議会や教団は度重なる魔物娘の逆レイプと結婚を前提とした誘拐に頭を悩ませており、どういうわけかは知らないが、一部の議員や教団関係者から、魔物娘に拉致された人間も殺すべきなどという過激な意見も出てきている。
そんな状況だと、サイカが採集依頼を受けて運悪くラミアに連れ去られ、集落で犯されているところを同じ人間達に見つかれば殺されてしまうんじゃないかと、ミリーは心配していた。
実際サイカは魔物娘に逆レイプはされていても、今の所は上手い具合にハーレムが築かれている。
それがこの世界にとっていいことかどうかは不明だが……
ミリーはジッとサイカを見つめる。
彼女はこの町で生まれ育ったが、今の町議会の反魔物娘政策には反対している。
もっとも、それを表に出せば今は法律で処罰されるため、口には出さない。
他の町人もそうだ。
そして、出来ればサイカにも、そうあってほしいと思っている。
魔物娘の討伐依頼を受けたゴロツキ共なんかはどうでもいい。
元々、あいつらはカネ次第でどんな依頼でもやるような種類の人間なのだ。
むしろ、そんな奴らの数が魔物娘討伐の依頼を受けたために減った事は、ミリーとしては嬉しい。
ギルドの経営は厳しくなっているが……
「……いかが、でしょう?」
ミリーは、祈りを込めながらサイカに話しかける。
『どうか、断って』と……
「……」
サイカは何も答えない。
彼はジッと紙を見つめた後、辺りを見渡した。
「やります……」
サイカはそう呟いた。
それを聞いて、ミリーは念を押す。
「本当にいいんですね?
分かっているとは思いますが、今この町は―」
「分かっています」
サイカはハッキリと答えた。
「この町が反魔物領となっていること。
魔物娘と親しくしている人間も処罰されることも……
でも……僕は……」
そこから先の言葉を、サイカは言う事が出来なかった。
自分は魔物娘が好きだ。
そんなことを言えば法律に違反することも、サイカの耳には入っていた。
「……分かりました」
ミリーはそう言って、別の紙を取り出して必要事項を記入し、サイカに契約金の支払いを求めた。
サイカが黙って契約金を支払うと、
「……気を付けて下さい」
そう言って、ギルドを出ていくサイカを見送った。
※
その後、サイカは宿の荷物を引き払って、スラ子達がいる洞窟へと向かった。
彼の応対をしたお婆さんは初めは怪訝な表情をして
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