「ちょっと!
いい加減、サイカを降ろしなさいよ!
このデクノボウ!」
「マスター。
こいつ……ぶっ殺していいですか?」
「ひっ!?」
テルシオから数キロ離れた森林地帯。
そこでは、盗賊の討伐任務を終えたサイカ達が、新たに仲間となったゴーレムのイワ子を連れて、テルシオへと帰ろうとしていた。
現在サイカは、腰が痛いという理由でイワ子におんぶをしてもらっている。
「…アカ子の言う事は正しい。
……あなたはもうそろそろ交代すべき……」
イワ子の隣を歩くスラ子が、ジト目でイワ子を見た。
「その意見には賛成できない。
マスターを疲労困憊させたのは私だ。
私が責任を持って、マスターを町まで送り届ける」
イワ子がそう言うと、恐怖から解放されたアカ子が元の調子に戻って口を開いた。
「ふん! アンタ、知らないみたいね!
あそこは今、教団の連中がアタシ達の事悪く言ってるのよ!?
そんな場所に今行ってみなさいよ!
何をされるか、分かったもんじゃないわ!」
アカ子の発言を聞いて、イワ子は歩きながら考える。
正直言って、自分一人がどうにかなるなら、何の問題もない。
だが、自分が不用意に問題を起こしたせいで愛するマスターが傷つくのは、なんとしても避けなければならない。
悩んだ末、彼女は決断した。
「……確かに。
ならば、我らはマスターを町の近くまで見送り、指示があるまで待機する。
……よろしいでしょうか、マスター?」
イワ子は自身の背中にしがみつくサイカに対して、判断を求めた。
「うん、それでいいよ」
とは言ったものの、こうなってくると、テルシオの宿に泊まるわけにはいかなくなる。
どこか、目立たない場所に拠点を作れないものか……
そうこうしている内に、町の近くまで来てしまった。
「それでは、私はこの辺りで待機しております」
「うん、わかった」
そうして、サイカはイワ子の背中からおり、町へ入った。
自分が依頼を受けてから、たった数時間しか経っていない。
にも関わらず、ひどく長い時間、町を離れていた気がする。
だいたい、ギルドにはなんて言えばいいのだろうか?
今回、サイカは一人も盗賊を討伐していない。
ほとんどイワ子がやったことであり、洞窟を出る時にはほとんどの盗賊が気絶させられていた。
あの状態では、またいつ悪さをするか分かったものではない。
にも関わらず、自分が倒したと虚偽の報告をするべきだろうか……?
もしバレればギルドの規定に違反し、今回の報酬はナシになり、今後依頼を受けることが出来るかどうかも怪しい。
では、イワ子がやったというべきだろうか?
これも得策ではない。
今、この町は教団によって反魔物領となる可能性を秘めている。
そんな時にイワ子の存在を明かせば、間違いなく彼女に危険が及ぶだろう。
結局考えはまとまらず、冒険者ギルドの前まで来てしまった。
中に入り、受付でいつもの様子のミリーに声を掛ける。
「ミリーさん」
「あっ! サイカさん!」
その声に、酒場にいる者達の視線が一斉にサイカに向く。
あいつ……帰ってきやがった……マジかよ……奴らはヤられたのか?……
考えていた事だが、彼らもあの盗賊団と共謀していた可能性は高い。
今の声を聞いて、サイカは改めてそう思った。
彼は周囲を警戒しながら受付に行き、ミリーに顔を近づけた。
ミリーもサイカの意図を察したのか、同様に顔を近づける。
「カナリアさんに…会わせてもらえますか?」
「……何か問題でも?」
サイカから発せられる言葉を聞いて、ミリーは眉をひそめた。
「……いいえ。
ただ、どうしても彼女に直接話したいことがあるんです」
「……分かりました。こちらへ」
しばらくサイカの顔を見て、ミリーはギルドの奥へとサイカを招いた。
その様子を、酒場にいるほとんどの者達が目撃をしていることを、サイカは知らなかった……
※
「あら! 帰って来たのね!」
サイカがギルド長の部屋に入って聞いたカナリアの第一声はそれだった。
「それでは、失礼します」
ミリーが扉を閉めて数秒後、カナリアは表情を一変させてサイカに近づいた。
「……どうだった? 首尾は?」
「……問題ありません」
彼女の様子は気のいいギルド長から女戦士へと変わり、サイカに詰め寄る。
「何も問題なければ、わざわざ私と話がしたいなんて言わないだろう。
話してくれ、何があった?」
「その前に、質問させてください」
サイカのただならぬ様子に気づいたカナリアはサイカをソファに座らせ、話を聞くことにした。
「それで……何が聞きたい?」
カナリアは、柔和な笑みを浮かべて質問した。
それはサイカに、無駄に緊張させないための配慮でもあった。
カナリアのその笑顔を
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