一歩踏み出すごとに、ドレスに巻き付けてある鎖が音を立てた。リリムの親衛隊長らしい異様な格好を、と思って作った衣装だけど、最近ではサーカスで妖しげな女性を演じる方に役立っている気がする。まあ私としてはどちらの任務もそれなりに気に入っているけど。
さて、私は黒いハンドバッグ一つ手に、部下が作った小さなテントに向かっていた。先ほど立てたばかりの、サーカス興行用のド派手なテントとは対照的なみすぼらしい代物。それでも結界が張られた即席の監獄……この場合は営巣っていうのかな。何かしでかした部下を閉じ込めてお仕置きするには十分なものだ。
「隊長殿が『おもちゃ箱』を持ってきたニャ。今日は酔っぱらいドラゴンの血の雨ニャ?」
「汁の雨だと思うニャ」
すれ違い様に部下の担架兵たちがそうつぶやき、聞いた私もつい吹き出してしまう。けど少し前にあった出来事は本当のところ、かなり笑えないことだった。間違って酒を飲み暴走した部下が、レミィナ姫の見つけてきた新入りを殺しかけたのだから。寛大な姫も今回は怒ったし、ここは私が隊長としてみっちり調教してやらなきゃいけない。
……私としては新入りに対する、姫のあの態度もちょっと気になるけどね。姫は職人好きかと思っていたけど、これはひょっとすると……。
と、それよりもまずはやることを済ませないと。
見張りのクノイチと軽く挨拶をかわし、営巣テントへ足を踏み入れた。
「うっ……」
テントのど真ん中で膝を着くドラゴンが私を見上げる。すでに裸に剥かれ、無駄にボリュームのある胸が丸見えになっていた。両手と翼は背中で縛られているが、どの道まだレミィナ姫の麻痺魔法が残っており、体をまともに動かせないはずだ。多分並の魔物ならショック死する出力で撃ったんだろう、あれは。
「またやってくれたね、テスナ」
「す、すみません隊長、そ、その……」
私の持つ鞄に怯え、彼女の体は小刻みに震えていた。まったく、さっきまで暴れ回っていた巨竜と同じ奴とは思えない。戦いのときは先陣切って敵をなぎ倒すっていうのに、今は叱られた犬同然だ。
「飲み物は酒じゃないか確かめてから飲めって言ってるのに」
「も、申し訳有りません。喉が渇いていたから、ニオイも分からないまま、一気に……」
テスナはしゅんとうなだれる。仕方のない奴。
「あんたさァ、人間だった頃は教団のエリート勇者だったじゃん。それが何で人間辞めて、不良王女の手下の手下になったか覚えてる?」
「あぅ……」
「酒に酔って味方の騎士団を壊滅させて、聖堂の机ぶっ壊して司祭殴り飛ばして、終いにゃ女神像に小便かけて……」
「い、言わないでください〜」
魔物になったところで、黒歴史をえぐられるのは気分のいい物じゃないだろう。こいつは酒癖さえなければ、魔王は無理でも当時のレミィナ姫くらいは倒せたかもしれない実力だったのに。させないけどね。
さて、説教はこのくらいにしてさっさとお仕置きを済ませよう。興行の準備があるし、いろいろ忙しいし。
「まあ実際のところ、私にも責任はあるんだよね」
目の前に鞄を置いてやると、テスナの顔がさっと青ざめた。私がこういうときに使うお仕置きキット、通称『エカリシスカのおもちゃ箱』。テスナは親衛隊で一番こいつの恐ろしさを知っている。
「今まであんたが酔っ払って暴れてもその都度お仕置きするだけでさ、根本的な解決にはなってなかった」
「え……?」
「そこでちょっと前に、あんたの酒乱を抑える品を注文してたんだ」
話しながら鞄を開け、中に入っている小袋を勿体ぶるように取り出してみせた。『ルージュ・シティ サバト局』と書かれた羊皮紙の札が縫い付けられている。
「特注して開発してもらった、新型の触手植物さ」
「触手!?」
目を見開くテスナの前で、袋の中身を掌に取り出す。紫色のぷよぷよした触手の種は、ちょうど桃のそれくらいのサイズだ。恐怖と、そしてもしかしたら期待が混じっているかもしれない眼差しで、テスナは種子をじっと見つめている。
「これを体に入れれば、テスナはもう酒乱でみんなに迷惑をかけなくて済むってわけだ」
「か、体に入れるって……どこから……?」
「ここに決まってるじゃん」
彼女の足を掴み、ぐいっと股を開かせた。哀れなドラゴンは悲鳴を上げたものの、麻痺した体では私の腕を押しのけることは不可能だ。
「はい、お股くぱぁして」
「い、嫌ぁ……!」
股間の奇麗な割れ目を指で広げてやると、ついに彼女は半べそをかいてしまった。目尻に涙をためて怯えるドラゴンなんてなかなか見られる物じゃない。元人間だからというのもあるけど、やっぱり好きな人以外に見られるのは恥ずかしいんだろう。私は好きな人相手ほど恥ずかしいけど。
毎晩旦那相手に使っているはずのア
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