第四話 『……妖女め』

 施設のベッドにレミィナを寝かせた後、彼女の希望によって部屋の中には私だけが残った。リリムが体調不良など滅多にあることではないようで、領主達も騒いでいたし、シュトルヒに乗ったことが原因ではないかという者もいた。領主やミシュレは理不尽な連中ではないが、この状況では私が責任を負わされることもあり得るだろう。

 だがそれ以上に、レミィナの容態を気にする必要がある。ただの乗り物酔いなら良いのだが。彼女は普段から自分の翼で飛んでいるが、パイロットでも他人の操縦する飛行機に乗ると酔う奴はいる。

「姫、大丈夫ですか?」
「……わたしとしたことが、魔力切れだなんて……」

 レミィナの声はいつもの健康的なものではなく、か細く弱々しかった。息は整ってきたように見えるが、未だにぐったりとベッドに横たわっている。赤い瞳が虚ろに、ぼんやりと私を見つめていた。

「魔力切れ?」
「シュトルヒに魔力を入れちゃったから……わたし、空っぽなの」

 掠れた声に、私は危機感を覚えた。魔物の魔力はイコール生命力ではないようだが、魔物達にとって極めて重要なものだというのは間違いないだろう。魔物の姫であるレミィナも例外ではないはずで、飛行機の燃料として魔力を使えば、当然疲労もするはずだ。あれは元々高品質のガソリンを使って推力を得る乗り物である。もしそのエネルギー供給が、想像以上に彼女に負担をかけるものだったとしたら……

「申し訳ありません、姫。何か私にできることがあれば……」
「精が欲しいの」

 私の言葉を遮り、レミィナは言った。その意味が理解できないでいると、彼女は私にゆっくりと手を伸ばす。細い指先が小刻みに震えていた。

「少しでいい……ヴェルナーの精液、吸わせてくれれば……」

 そう言われてようやく思い出した。彼女はリリム、男との交わりを通じて精を奪う悪魔。つまり男との交わりは彼女たちにとっては食事と同義であり、足りなくなった魔力を補充する手段と言えるだろう。
 情けない話かも知れないが、彼女を助けるためなら何でもする気でいた私はここに来て躊躇った。彼女にとってはただの食事だろうが、私からすれば彼女と男女として関係を持つことに他ならない。確かに魅力的な女性ではあるものの、そのような関係にまで近づきたくはないのだ。

 私が渋っているのを見てか、レミィナはずるずるとベッドから這い出してきた。柔らかそうな女体が床に落ち、潤んだ目で私を見上げてくる。渇望の光を宿した赤い瞳にじっと見つめられ、そんな弱々しい彼女から目を逸らすことができなかった。

「大丈夫……お口で一回吸うだけだから、ね……?」
「姫……駄目です、私などとは……」

 下半身に手を伸ばしてくるレミィナから距離を取ろうとした、その瞬間。
 突然、私の脚に痺れるような感触が走った。続いて腕も痺れ始め、言うことを聞かなくなってしまう。まるで見えないワイヤーで縛られているかのように、全く動かすことができないのだ。

「拘束魔法よ……大丈夫、気持ちよくなるだけだから」

 レミィナは慣れた手つきで手際よくベルトを外し、私の下半身を脱がせていく。抵抗を試みようにも、目に見えない魔法による拘束は如何ともしがたい。私にも魔法が使えれば抗うこともできるのだろうが――

 と、私はあることに思い至った。

「……姫、魔力は空っぽではなかったのですか?」
「あ」

 はっと気がついたように声を出し、レミィナは横に視線を逸らす。そしてゆっくりと、再び私と目を合わせ……花のような笑みを浮かべ、告げた。

「まあ、気にしないで!」
「このペテン師め! 一度ならず二度ま……!」

 私の叫びは止まった。レミィナの手が、男根に触れたからだ。
 白くて綺麗な手が、下着の中からまだ硬さのないそれを引っ張り出す。ピアノでも弾かせたら似合いそうな指先が、先端部分をくすぐるような刺激を与えてきた。屈辱を感じながらも胸が高鳴る。

「へぇ。ヴェルナー、割礼受けてるんだ」

 ギクリとすることを言われ体が強ばったが、次の瞬間には別の刺激でそれが吹き飛んだ。
 彼女の息が、男根に吹きかけられたのである。先端から根本まで疼くような快楽が広がり、彼女の手に支えられたまま、女を求めてゆっくりと怒張していく。まるで「餌になれ」と命令されているかのように。

「んふふっ……大きくなっちゃったからには、抜かないとねぇ
#9829;」
「姫! いい加減に……!」

 私の制止を無視し、レミィナはキスをしてきた。口ではなく、竿の先端に。
 柔らかく、切ない感触が神経を刺激したかと思うと、ぬめりを帯びた舌がそこを舐め上げてきた。

「う……!」

 体が震えてしまう。私の反応を上目遣いで見つめながら、レミィナは猫がミルクを舐めるかのように舌による愛撫を続け
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33