仇敵を料理する方法について

「ひゃぁっ……い、や……嫌ぁ……」
「ははっ、どうしたのさ? 僕らに喧嘩売った気概を見せてみなよ?」

 本来客室だったと思われるドアを開けると、フランチェスカがそこにいた。壁には全裸に剥かれた若い女が鎖で拘束されており、フランチェスカから与えられる快感によがっている。兵として訓練を受けた体は引き締まって美しく、凛としていればさぞ涼やかな美女だろう。しかし魔物の指先に股や乳房を愛撫され、その表情はだらしなく蕩けきっていた。構成員に拷問されたらしい傷から血が流れているにも関わらず、涎と愛液垂れ流しながらひたすら喘いでいる。僅かに残った屈辱の表情が嗜虐心を煽るのか、フランチェスカは舌なめずりしながら行為を続けていた。
 そして部屋にはもう一人……若い男がいた。やはり全裸に剥かれ、拷問後の傷だらけの姿で壁に拘束されている。フランチェスカの陵辱行為を憤激の眼差しで睨みつけているが、開いた口からは声が一切出ていない。口封じの呪いでもかけられたのだろう。

「あ、シロー」

 責めの手を止め、フランチェスカは私の方を向いた。

「ごめんよ、置き去りにしちゃって」
「いえ」

 私のあっさりとした返答がつまらなかったのか、彼女は捕虜の女の秘部を指先で広げ、見せつけてきた。桃色の肉から止め処なく粘液が滴り、卑猥極まる光景である。

「ほら、綺麗なピンク色だろ? 見られると興奮しちゃうかもね」
「い、嫌ぁ! やめ……ひゃぅぅ!」

 割れ目の突起を指先で刺激され、捕虜はびくりと快楽に震える。少し前まで一人前の兵士だった戦乙女が、だらしなく汁を垂らしながら媚態を晒しているのだ。羞恥に満ちた表情といい、普通なら男の情欲をそそるのに十分すぎる淫靡さだろう。しかしどういうわけか、私はこの光景に興が冷めるような感覚を覚えた。
 フランチェスカはふいに、自分のベルトを外し始めた。黒い下着も降ろし、つるりとした恥丘を晒す。昨夜散々堪能させられたにも関わらず、それを見ると体が勝手に疼き出した。あの花園から与えられる快楽を体が待ち望んでしまう。だが彼女は私に背を向け、捕虜に自分の体を重ね……恥丘同士を密着させた。

「さあ、仕上げだ……」

 ゆっくりと、フランチェスカが体を上下させる……

「あああああああああっ!」

 耳障りなほどに甲高い嬌声を上げ、捕虜は激しく身をよがらせた。彼女を拘束する鎖の金属音、擦りあわされる股間部から聞こえる卑猥な水音がそれに混じる。

「ひゃぁあぅ……♪ ふぁああああああん♪」

 単なる貝合わせにも関わらず、捕虜は大げさな声を上げて悶えている。まるで鉄の鎖さえ引き千切ってしまいそうなほどに。だがよく観察してみると、ただ女性器を擦り合わせているだけではなかった。フランチェスカの性器から漏れ出す魔力が捕虜の体内に侵入し、体を蝕んでいるのだ。
 私の流派は退魔剣術、即ち魔物との戦いを主眼とした撃剣。そのため呪術などについても多少は学んだ。だから神経を研ぎ澄ませば、魔力の流れも把握できるというもの。フランチェスカの蜜のように甘い毒が、捕虜の体を徐々に染めていく。かつてフランチェスカがそうされたように、捕虜の体が作り替えられているのだ。

「ふううぁぁん♪ はひゅっ、ひうぅぅうぅ♪」
「んっ……ふふっ、いい声だね……女同士でこんなに気持ちいいんだ、これが彼のチンポだったら……?」
「ぅ……!?」

 耳にも注ぎ込まれた毒により、捕虜の目が見開かれる。魔力と刺激で蕩けきった無防備な精神が、フランチェスカに言われたことをそのまま想像してしまうのだろう。どうやら声も出せないまま彼女を助けようと藻掻く男が、彼女の恋人らしい。鎖を引きちぎる力は無いようだが、愛する女が魔物の手に堕ちていくのを目の当たりにして、すんなり諦めのつく奴などいない。
 そんな抵抗を嘲笑うかのように、フランチェスカは作業を続ける。

「魔物になれば、剣なんか握らなくて済む。……ん……好きな男だけを見ていればいいんだ」
「はぅんん……か……かれ……だけ……」

 瞳がどんよりと曇っていく。よがる彼女を抱き締めながら、フランチェスカは微笑んだ。

「その方が幸せだろ……? 魔物になれば死ぬような目に遭わなくていい、平和に暮らしていればいい」
「まもの……へいわ……へい…わ……」

 妖しく輝く紫色の瞳。暗示にかけられたような、間の抜けた声。しつこく性的刺激を与え続けられた捕虜には、もはや抗う気力など残っていなかったのだろう。フランチェスカの魔力が強くなり、とどめの一押しをかけようとしていた。

「さあ……うんとエッチな魔物になりな」
「あ……あ……あああああああああん♪」

 一際長い嬌声と共に、捕虜の体に異変が起き始めた。昨夜フランチェスカから聞かされた現象……魔物化である。
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