後編


「クルト、おはよ」

 朝、目が覚めるとエナの笑顔が目の前にある。これにはなかなか、慣れそうにない。

「おはよう、エナ」

 眼を擦って意識をはっきりさせながら、寝巻姿のエナを抱きしめる。柔らかい寝巻の生地を通して、エナの暖かみと息遣いが伝わってきた。これが現実であると確認するため、強く抱きしめて感触を味わう。エナがそれを受け入れ、頬を寄せてくると、僕は彼女の髪をそっと撫でた。
 甘いニオイに、股間がぴくりと反応し、彼女の柔らかな太腿に先端が触れる。昨夜、交わるだけ交わってそのまま寝たため、タオルケットに覆われている僕らの下半身は共に裸だ。シックスナインで一回、胸で一回、そして膣で数回。シーツからは彼女の漏らした尿のニオイが漂っている。しかしそれだけヤったにも関わらず、僕は彼女と抱き合っているだけで疼いてきてしまう。

「まだ早いし……ちょっとくらい、いいわよね?」

 僕の心を読んだかのように、エナは悪戯っぽい笑みを浮かべ、タオルケットの下に潜った。もぞもぞと、僕の股間に顔を持って行ったようだ。

「ちゅ♪」
「うっ」

 亀頭にぷるぷるした唇が触れた。続いてぬめりのある舌がペニスを舐め上げ、亀頭が口に含まれてしまう。
 エナがペニスをしゃぶっている姿を見たくて、タオルケットを払いのける。彼女は上目づかいで僕を見つめながら、楽しそうに口での奉仕を続けた。ときどき舌先で尿道口をつついたり、玉袋をくすぐってきたりするのがたまらなく気持ちいい。

「ふるほぉ、ひもひいい?」
「ちょっ、喋ったら……!」

 舌の動きが逐次、ペニスに快感をもたらす。
 そしてエナはトドメとばかりに、舌先を尿道に押し込んできた。

「ううっ、で、出るっ!」

 エナの舌を押し出そうとするかのように、尿道を精液が迸る。一気に快楽が突き抜け、彼女の口内に全てをぶちまけた。

「んんっ♪」

 エナは喉を鳴らして、僕の欲望を飲み下していく。それでも口から少し溢れて、口周りを白く染めた。
 ちゅぽん、と音を立て、エナはペニスから口を放した。精液のついた顔でニコリと笑うと、仰向けになって大きく股を開き、蜜の滴る花園を曝け出した。そして期待に満ちた目で、僕を見つめている。

 かつて一緒に遊び、いつしか高嶺の花となり、憎悪の対象でさえあった彼女が、こんなにも淫乱な姿をしているのだ。
 我慢できるわけが、なかった。






「……で、結局朝からズッコンバッコンやってたわけか」
「ごめん、兄さん」
「ごめんなさーい」

 先に朝食を済ませていた兄は、頭を下げる僕らにため息を吐く。
 あの後、誘惑に勝てず何度か交わり、気がついた時には10時頃になっていた。幸い今日は仕事が少なかったが、かなり朝寝坊した形になってしまったのだ。

「エナ、一緒に住むのは許可したが、ナニは仕事に支障の無い範囲で頼む」
「うん。ごめんね、ライジェ」

 そう、露地裏での出会いと交わりの後、行く宛がないというエナを僕らの家に連れてきたのだ。兄は僕同様彼女を憎んでいたため、最初は同居に反対したが、エナの真摯な思いが通じて許してくれた。しかし空いている部屋は無かったため、僕と同じ部屋・同じベッドで寝ることになり……その結果がこれ、というわけである。
 本当にエナの体は癖になり、依存してしまったかのように交わってしまう。そしてエナも僕を求めてくるのだから、この誘惑に抗えるはずがない。だからと言って、仕事を気にせず寝坊していい訳ではないが。

「さっさと飯食え。今日はコルバさんの開店パーティだろ」
「あ、そうだったね」

 コルバさんから、開店記念パーティの招待状が届いていた。町の人気者であるギター弾きとセイレーンのコンビも来ることだし、何としても行ってみたい。それまでに仕事を終わらせておかなくては。

「エナも、パーティ行くだろ?」

 当然行くだろうと思っていたが、念のために聞いてみる。すると、彼女は微かに俯き、苦笑を浮かべた。

「人ごみ、苦手だから……お留守番してるわ」
「え、そうなの?」
「うん、折角だけど……」

 申し訳なさそうに言いながら、エナはエプロンを着けて朝食の用意を始めた。兄はその姿を少し眺めていたが、「仕事の用意をしておく」と屠場へ向かった。
 エナが来てから、兄は何か考え込むことが多い。何か迷っているような、僕の知らない何かを知っているような、そんな様子だ。元々寡黙で、必要以上のことは喋らない人だが、あの様子は何か気になる。

「クルト、ちょっと手伝って」
「あ、はいよ」

 だが、今はこのままでいい。兄はきっと、まだエナを許していないのだろう。それでもいつか、分かりあえるはず……僕はそう信じている。













 ……仕事を済ませ、日が暮れた頃に僕らは
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33