ブリガンティン
マスト(帆柱)が二本で、前(フォアマスト)が横帆、後ろ(メインマスト)の一番下の帆が縦帆の帆船。
二本とも横帆ならブリッグ、縦帆ならスクーナーと呼称する。
エル・ヴァリエンテ号はメインマストが二枚の縦帆のみで構成されており、厳密にはハーフロマダイトブリッグと呼ぶ。
……窓から日が差し込み、俺はベッドの上でうっすらと目を開けた。寝慣れたベッド。船長室のベッドだ。
昨日船を焼いたはずではなかったか、と記憶の糸を辿っていると、不意に頬へ柔らかな物が当たった。
「アマロ船長! 朝ですよ!」
快活な声に目を見開き、そして息を飲んだ。
信じられないものがそこにいた。純白の水兵服を着た、くりくりとした目の可愛らしい女。彼女は窓から差す光を浴びていたが、まるで彼女自身が光を発しているかのように見えた。褐色の肌に、桃色のふんわりとした短い髪、そして瞳もまた深い桃色。愛らしい童顔なのに、胸は服の上からでもわかる膨らみを持っていた。スカートから見える足はすらりとして、とても美しい。
だがそればかりではない。彼女の美しさは、人間ではない故の美しさだった。袖から腰にかけて半透明な羽衣、または翼のようなものがヒラヒラと揺れている。そしてその頭上には、神族の象徴である光輪が見えた。ハートの形をした、淡いピンク色の光輪が。
「フー……リー……!?」
書物で知っていた、異教の天使がそこにいたのだ。
「おはようございます、はじめまして!」
元気良く挨拶をし、天使は花のような笑顔を見せた。
「私はメリーカといいます。エロス神のお導きにより、姉妹共々、今日から貴方のお側に……」
「ま、待て」
頭が状況に追いつかない。ゆっくりと何が起きているか整理する。
「何故フーリーがここにいるんだ?」
「私たちは天界からアマロ船長の義挙を見て、お側でお仕えしたいと思ったのです! そして我らが主エロスも認めてくださいました!」
愛の女神エロスの教団。人のみならず魔物からも信仰を集め、その勢力を拡大しつつある。性的にふしだらな面があるとされながら、何故か主神教団からは邪教認定を受けておらず、多くの国に信徒がいる。
フーリーはエロス神の生み出す天使の一種。主神教団のエンジェルが勇者や聖人を導き、魔物と戦うために降臨するのに対し、彼女たちは善行を積んだ人間に『褒美』を与えるため遣わされるのだという。愛に恵まれなかった者が、それを望んでエロス教へ改宗することもあると聞く。
「待て。俺はエロス信徒ではないぞ?」
「存じております。しかし船長は昨晩、我らが主の声をお聞きになったはずです!」
不意に脳裏を過ぎる、あの神秘的な声。嵐の中でも聞いた、不思議な優しい声だ。
あれがエロス神の声だと言うのか。神と交信するなど、選ばれた力の持ち主でなくてはできないはずなのに。
「主は船長がこれからも義挙を続けることを願い、その手助けと『報酬』を兼ねて私たちを遣わしました。もちろん、私たちが船長にお仕えしたいと願ったからでもあります!」
誇らしげに胸を張る天使メリーカ。その途端、思わずその胸に目を奪われた。服の下で揺れた、その二つの膨らみに。すると彼女は俺の視線に気づき、白い歯を見せて笑った。
「あはっ。アマロ船長、おっぱいに興味がお有りですね?」
「あ、いや、その」
胸に視線を向けたことは誤魔化せまい。女はそういうことに鋭く気づく。どう取り繕うべきか、また天使の口から「おっぱい」という単語が出たことに頭が混乱する。
あまりにも急激な流れに着いていけない俺の前で、メリーカはさらに過激なことを始めた。
服の裾を捲り上げ、褐色の胸を露出させたのだ。
「あれこれ考えるよりも、先に体で受け止めてくださいませ。このメリーカからの愛を……」
胸が大きく高鳴った。チョコレートを溶かしてミルクを混ぜたような、艶やかな褐色の肌。その盛り上がりが柔らかく揺れ、その下には小さく可愛らしいへそがある。背徳的だと思いながらも、俺はその光景から目を離せない。
メリーカは水兵の服を脱ぎ捨て、それどころかスカートまで脱いでしまった。女性の最も神聖な部分には一切の毛がなく、太ももの合間に慎ましやかな恥丘が見えるのみ。甘い香りが船長室に立ち込めた。
「さあ、船長っ」
メリーカがベッドの上に登ってくる。天使が、俺のベッドに。小さな手が優しく俺の手を握り、膨らみへと導いた。触れた瞬間。指先が褐色の双峰に沈み込む。
子供のような笑顔に対し、その膨らみは大人の女そのものだった。掌からこぼれ落ちそうになるそれを、俺はいつのまにか一心不乱に揉んでいた。柔らかな乳房に指先が沈み込んでは、弾力で押し返される。何という心地よい感触だろうか。
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