掌編集「処女喪失の後」

1.バフォメット

「……むふふ」

 笑みを浮かべながら、バフォメットは腰を上げる。幼い膣から男の証がヌルリと引き抜かれ、淫液がねっとりと糸を引いた。肉棒に処女膜を突き破られたときの感覚を思い出しながら、僅かに垂れた白濁を指で拭いた。
 毛皮で鉤爪までついた魔獣の手に対し、股間にあるのは幼い女の子の割れ目そのものだ。ぴったりと閉じたその恥丘が、男の剛直を根元まで咥えこみ、激しく精を搾り取ったのである。

 股がられていた若き勇者は、幸せと敗北感の入り混じった目で彼女を見つめていた。月明かりに照らされ、バフォメットのあどけない顔が倒錯した美しさを放つ。

「本当に初めてだったんだな……」

 彼の呟きを聞き、バフォメットはくすりと笑った。教団の勇者は大抵、魔物が乙女心など持つはずがないと思っている。誰彼構わず交わるに違いないと信じている。

「魔物にも様々じゃ。性交した上で己に相応しい相手かを決める者もおるが、ワシは恋をしてから処女を捧げたかったでのう」
「こ、恋って! 俺は陛下の命令でお前を倒しに……!」

 声を荒げながらも、恋という単語に赤面している。そんな初心な反応も、彼女の好みだ。しかしこの男は間違いなく天才的な勇者なのである。彼は魔物の中でも極めて強力なバフォメットを、魔力切れを起こすまで追い詰めたのだから。

「ま、ワシの色仕掛けには敵わなかったがの?」

 背中を向け、小さなお尻を得意げに見せつけてくる魔物。若者は胸を高鳴らせ、食い入るようにそれを見つめてしまった。今まで異性から遠ざけられて訓練を受けてきたたのである。幼少期に触れ合った故郷の女の子の可愛らしさが、目の前の魔物に重なる。

「じゃが、色仕掛けはしても命乞いはせぬ。ほれ」

 バフォメットが指差したのは、勇者の装備。誘惑に乗って脱ぎ捨ててしまった鎧と、光り輝く長剣が地面に転がっている。
 手の届くところに。

「ワシの首を取りたいのなら、まだ間に合うぞ。何せもう魔力が残っておらぬでな?」

 精を吸って魔力は回復しているが、敢えて嘘をつく。

 大悪魔バフォメットの首を掲げて凱旋すれば、間違いなく教団の英雄だ。報酬も名誉も思うがままだろう。
 しかし彼はもう、そんな物に価値を見出せなかった。バフォメットの名器の味、そして背徳と無邪気が同居する、甘い交わりを知ってしまったのだから。

 勇者の名を投げ出し、青年は彼女を抱きしめた。当然、バフォメットもそれを受け入れた。

「どうやら、ワシの処女に勝る報酬はなかったようじゃな」

楽しげに笑う、偉大な幼き悪魔。そのふとももの柔らかさに触れ、青年の肉棒は次第に硬くなる。
バフォメットは彼に更なる報酬を与えるべく、それを脚の間に挟み込んだ……




















2.エキドナ


 眠りこけた相方をそっと抱きしめ、青い肌で優しく包み込む。大蛇の下半身をゆっくりと巻きつけていき、きつくならないよう気をつけながら、しっかりと抱擁した。
 蛇身と女体の境にある女性器は、激しい性交の後でじっとり濡れている。そして子宮は子供を作る魔法の液体で、たっぷりと満たされていた。愛しい相手の顔に頬を寄せ、若き蛇妖は嘆息する。初めて子宮に男根を受けれた感覚と、放たれた精の熱さ。あれが子作りの儀式であり、両親も同じようにして自分を産んでくれたのだ。多種多様な妹たちも、そうして生まれた。

 同じことを今度は、自分が行う。今初めてを捧げた彼と、何度も何度も繰り返すことになる。そんな生活への期待に胸を膨らませながらも、若きエキドナは別の感情も抱いていた。今胸に抱く、愛しい人への感謝だ。

「ありがとう、私を許してくれて……」

 眠る彼の耳元に、そっと囁く。その筋肉質な体を抱きしめていると、鍛錬の成果が出ていることを実感する。

 エキドナの胎からはあらゆる魔物が生まれる。そこに優れた子種を得るために、彼女たちは『英傑たる素質を持つ男』を本能で察知できる。だから彼女は、教団が落ちこぼれとして見放した元勇者候補生に、その素質を見出せた。途方に暮れる彼に人間の姿で近づき、良き理解者として振る舞い、旅へ誘った。
 時には師匠となり、手取り足取り、武芸と魔術の指導をした。また時には同い年の少女として、話し相手となった。絆を育み、先々で大小様々な人助けを行なった。

 自ら英傑を育てる……エキドナとしては珍しい行為ではないし、間違ったことでもない。だが彼から感謝の念と好意を向けるようになり、次第に罪悪感が大きくなってきた。正体を偽り続けていることに。

「……怒るかと思ったのに」

 魔物の姿を見せたときの彼の反応が、脳裏に焼き付いている。
 少し驚き、そして笑って、彼はこう言った。


 ーー薄々気づいていたよ。
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