氷のダンジョン!

※13000字超えてます。お忙しい方はご注意ください。







三軒目 冷やしラーメン専門店『エウロパ』

 山形・福島発祥の夏メニュー、冷やしラーメン。ゲテモノと思うなかれ、夏場にあっさりと食べられるラーメンとして人気の一品だ。
 そのスープには二種類あり、まず普通のラーメンのスープを冷やしたタイプ。これは脂が白く固形化して浮いてしまうため、それを丁寧に除去する必要がある。もう一つは植物性脂肪を使うタイプ。こちらは冷やしても脂が固まることはないが、その調理には少々手間がかかる。どちらにせよ手がかかるメニューなので、店にとっては夏限定だからこそできるのだ。

 しかしここはダンジョン。ラーメンの魔境。この中には真冬にも冷やしラーメンを出す、というかそれ以外出さない店が存在するのだ。

 それが、『エウロパ』。木星の軌道上を周る、氷の月にちなんで付けられた店名だ。この真冬にも関わらず、この店に冷やしラーメンを食べに来る客がいる。大半は雪女など寒冷地の魔物で、たまに熱暴走気味のゴーレム属が強制冷却に訪れたりもする。夏に比べれば少ないまでも、需要はあるのだ。

 店長はグラキエス、その他に店員三名で切り盛りする。内二人は人間男性とイエティの夫婦で、仕事の後は帰宅して暖かい夜を楽しんでいるようだ。
 そして、もう一人の店員は……


「店長。俺、もう我慢の限界です」

 今夜、勇気を出して店長を押し倒したところだった。

「……何か私に悪いところがあったなら、言ってほしい。可能な限り改める」

 ベッドに組み敷かれたグラキエスは自体を把握できていない。感情まで凍結した氷の精霊だけに、その表情もまた凍りついている。だが目が微かに見開かれているあたり、驚いてはいるようだ。
 そんな彼女の態度は、若き店員・大嶋一信を苛立たせるだけだった。

「店長。俺は毎日あんたに精気を吸われてます。それは別にいいんです」

 グラキエスの吸精は普通の魔物とは違い、触れるだけで強制的に力を吸い取る。それはワイトのように快楽を与えるものではなく、吸われた男性は強い寒気と孤独感を覚えるのだ。ただし一信の場合、合意の上で彼女に精気を捧げていた。それに今更不満を覚えたわけではない。

「吸われた後、無性に人肌が恋しくなるんです。そこへきて、何であんたはいつも裸なんですか!」

 それこそが、彼のフラストレーションの理由だった。
 店長・みぞれは実に模範的なグラキエスだった。この世界に進出した魔物娘の多くは地球の文化に溶け込み、この世界の衣類を身につけている。しかしみぞれは伝統的なグラキエスの格好、つまり魔物学の図鑑に載っているような、『全裸で胸部分のみを氷でコーティングした姿』で通しているのだ。しかも胸の氷も乳首より上を隠すのみで、いわゆる『下乳』は露出している。氷のような、しかし柔らかな肌は恥ずかしげもなく晒されていた。

 当然、女の子の大事なところは全く隠していない。スレンダーだが胸やお尻がしっかりと膨らんだその女体は、素晴らしく芸術的な存在だった。オーロラのように輝く髪が、それに拍車をかける。

「私は精霊だから衣類がなくても風邪はひかないし、寒さも感じない。加えて精霊の排泄は余剰エレメントを放出するだけだから、私の尿道口と肛門は常に清潔であり、衛生的な問題もない」

 淡々と、そして馬鹿正直に理由を語るみぞれ。若干十八歳(魔物にとって学歴はあまり重要ではない。ついでに言うと、精霊に年齢はあまり関係ない)でこの『ダンジョン』に店を構えるその手腕は、誰もが認めている。氷の領域の魔物が快適に過ごせるようにと、女王の命令で冷やしラーメンの専門店を出したのだ。そのためにどんな修行を積んだのかは定かではないが、少なくとも衣類の必要性については学ばなかったようだ。
 中卒労働者である一信は至って健康な男子であり、彼女の姿は目に毒だった。

「店長の裸毎日見せられて、しかも先輩たちが惚気てる所も見せつけられて! ムラムラしてしょうがないんです!」
「ムラムラ、という表現はよく分からないが……」

 みぞれの視線が下へ落ちる。もっこりと膨らんだ、一信のズボンが目に入った。

「君の男性器が勃起状態にあることから推察して、私との性交が望みなのか?」
「早い話がそうですッ!」

 システマチックなみぞれに苛立ち、一信は怒鳴ってしまう。今日も丁度吸精された後で、極限まで人肌が恋しい状態だ。そこで極上の肢体を目の前にして堪えているのだから、彼の忍耐強さは賞賛されるべきだろう。
 みぞれは少しの間何かを考えていたようだが、やがて行動に移った。脚を広げたのだ。

 一信の目が極限まで見開かれる。彼女の最も大事な所を、その割れ目を、あからさまに見せつけられたのだ。ふとももに引っ張
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