ある少年兵の日記 ―アマゾネスの村にて―


水の月 一日
 教団軍にはいって、ようやくさいしょの戦いにでることになった。魔物にうばわれたくにをこうげきするらしい。
 ぼくはまだ子供だけど、司祭さまから魔法をおそわってきたから、ほかのみなさんを助けてがんばろう。


水の月 二日
 たくさんの兵士があつまった。りっぱな馬にのってよろいを着た騎士がおおぜい、じんちの前にならんでいた。他にはぼくと同い歳の少年兵もいるけど、みんな変な目でぼくを見ている。
 ぐんがくたいのタイコがなりひびいて、少しびっくりした。明日にはもうこうげきをはじめるらしい。すぐ近くにまものがじんちを作っている。がんばらないと。


水の月 三日
 とつげきラッパがなった。騎士がみんな槍を手にとつげきしていった。そのあとに歩兵が、そのあとにぼくたち魔法つかいがとつげきした。
 はじめて魔物をみた。きれいだった。きれいすぎて、こわかった。たぶんみんなも同じように思ったんだろう。だって魔物のすがたを見て、うごきをとめてしまう人がたくさんいた。そうするとみんなまものに取り押さえられたり、剣できられたりしていった。魔物たちが「魔王へいかバンザイ」とさけんでおそってくるのがとてもこわかった。
 ぼくは捕虜になってしまった。黒っぽいはだの魔物がぼくを剣できって、そのしゅんかんに気がとおくなってたおれてしまった。目がさめたら、檻のような馬車にのせられていた。ぼくのほかに大人の兵士が二人のせられている。
 くらい森のなかへ入っていく。こわい。たぶんこれから、食べられるんだ。
 司祭さま、ごめんなさい。ぼくは魔物をまったくたおせませんでした。主神さま、ごめんなさい。ぼくはそちらへいきます。


水の月 四日
 いったいぼくはどうなるのだろう。
 ぼくたちは魔物の村につれてこられた。森のなかにあるむらで、まだ家などを作っていて、できたばかりのむらのようだった。
 むらのろうやに入れられた。いっしょにつれてこられたのはラッパ吹きの人と、傭兵の人だった。『ラッパ吹き』は何をかんがえているのかよくわからない。『傭兵』はぼくのことが好きじゃないらしい。「きょうかいで魔法をおそわって、お金にこまっているわけでもないのに、なぜ少年兵になった?」とぼくにきいてきた。ぼくはまものをやっつけるため、世界の平和のためだとこたえたのに、『傭兵』はイヤそうな顔をした。

 そのあと、三人の魔物がぼくたちに会いにきた。いよいよ食べられるんだと思ったけど、魔物たちはそんなことはしないといった。黒っぽいはだで、むらさき色のシッポがあって、つばさがかたほうだけ生えていた。からだじゅうにふしぎなもようがあって、ほとんどハダカみたいなふくをきていた。こしに大きな剣をさげて、槍ももっていた。そいつらは『アマゾネス』という魔物だといった。アマゾネスたちはこの森にあたらしいむらをつくるから、男をさがすため魔王軍にみかたしたらしい。ぼくは男の人をたべるのかと思ったけど、けっこんするのだと聞いておどろいた。

 三人はぼくたちに、「わたしたちのなかから一人えらんで、むこになれ」と言った。ぼくはそんなのイヤだと言ったけど、何をかんがえているのか分からない『ラッパ吹き』が、「せっかくだから、おれはこの赤い目の子をえらぶぜ!」といって、赤い目のアマゾネスとけっこんすることにしてしまう。赤い目のアマゾネスはうれしそうに『ラッパ吹き』をだきしめた。
 ぼくは『ラッパ吹き』におこったけど、『ようへい』がすこしかんがえたあと、ぼくにこっそり「今はていこうするな」と言った。『傭兵』はべつのアマゾネスをえらんでけっこんをやくそくした。そのアマゾネスはにっこり笑って『傭兵』の手をにぎって、ろうやから出ていった。
 さいごにのこったアマゾネスはぼくに近づいて、「じゃあ、お前はわたしとけっこんするんだぞ」と言った。そのアマゾネスは背が高くて、強そうだけどきれいだと思ってしまった。魔物を『きれい』と思ったらジゴクにおちるって、司祭さまにいわれたのに。

 そのアマゾネスはぼくの歳をきくと、ぼくに「おねえちゃんとよべ。弟もほしかったんだ」。『おねえちゃん』はぼくを自分の家につれていき、ぼくもにげなかった。『傭兵』がいったように、今はていこうしないで、スキをついて逃げた方がいいだろう。
 『おねえちゃん』の家は思っていたよりもりっぱで、大きな木の上にあった。家に入ったあと、ぼくはふくをムリヤリぬがされ、かわりにアマゾネスたちとおなじ、けがわの腰巻きをつけられた。ハダカを見られてはずかしいし、イヤだったけど、ガマンした。『おねえちゃん』は「よくにあっている」と言うけど、やっぱりはずかしい。
 そのあとがたいへんだった。『おねえちゃん』が家にあるつぼから、赤くておいしそうなくだものと、黒い木の実をとり
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