「ありがとね」
横たわっているユキさんに、サチさんはそっとお礼を言った。ユキさんは目を閉ざして意識を失っているようだが、口元には笑みが浮かんでおり、まだ快感の余韻に浸っているようにも見えた。
あのときと同じ、パジャマ姿のサチさんはゆっくりと俺の方へ向き直り、無邪気な微笑を投げかけ……そして、抱きしめてくれた。
ゴーストである彼女の体は、ふわっと優しい感触だった。血の気など感じられない真っ白な肌はとても温かく、柔らかい。触れる気体、とでも言うのだろうか。人体の弾力と温かみを持ちながらも、どこか不思議な、気泡のような柔らかさを感じる。すり寄せられた頬もふんわりとしていた。
「シンペイくんとまた会えた。やっぱり私は幸せ者だなぁ」
その瞬間、俺の目から自然と涙が溢れた。彼女とまた会えた。死んだはずの彼女が帰ってきた。言いたいことが沢山あるはずなのに声が出ず、代わりに涙だけが出てくる。
サチさんは奇麗な手で優しく俺の頭を撫でてくれた。頭頂から後頭部、そして背中の方まで、温かな手で擦られる。恍惚としそうな懐かしい手つきだった。
「シンペイくん、大きくなったね」
そう言われて、サチさんの背が俺より低いことに気づいた。もうあれから十年も経っている。サチさんの歳が享年で止まっていると考えれば、もう同い年なのだ。それでも彼女の体にしがみつき、甘えるように泣くのを止められなかった。子供の頃は大人に見えたのに、こんなに華奢な体をしていたのか。それなのに俺の方が彼女に包み込まれているような、そんな安心感がある。
「会いたかった……」
腹に力を入れ、やっとのことで出た言葉は一言だけだった。
「私もだよっ……やっとこうして、触れ合って……」
頬をすり寄せてくるサチさんも涙声だ。俺も彼女も、今までずっとこうして泣きたかったのかもしれない。サチさんが死んだと聞いたときから十年間、一度も泣いていなかった気がする。今なら泣いてもいいのだと、彼女の温もりが言っているように思えた。
「……シンペイくんの体、油の臭いがする。ずっと頑張っていたんだね」
サチさんは目を細め、テケ車を眺めた。十年前とは違い、錆を落とし、塗装し直し、遥かに奇麗な状態になっている。思えばよくここまでやれたと自分でも思うが、やはりそれもサチさんと約束したからだ。
「サチさん、一緒に乗ってくれるよね?」
「もちろん! ちゃんと約束守りに来たよ」
彼女の体がテケ車の上までふわっと浮かぶ。砲塔のハッチを撫でながら俺を見下ろし、ふと彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「まだ元気だね」
「うっ……!」
自分が股間を露出したままで、相変わらずペニスが勃起していることをようやく思い出した。ユキさんの膣内に二回も出したのに、サチさんの体の感触でまた起きてしまったのだ。魔物と一緒に学校生活を送っていると自然にインキュバス化する男子もいるらしいが、俺もそのクチだろうか。
サチさんは空中を滑るように、すーっと俺の側まで戻ってきた。先ほどまでユキさんに取り憑き、俺にいやらしい妄想を流し込んできたのは彼女だろう。今の表情もまた、魔物らしい好色な笑顔である。
「また兵隊ごっこしよっか
#9829;」
「うわっ!?」
背中に抱きつかれ、ペニスに手を添えられる。ぐいっと体の向きを変えられて、ふんわりと優しくペニスを擦られた。
「あぅ……」
気泡のような感触の手はとても滑らかで、くすぐるようにペニスを刺激してきた。ゴーストの体にも重さはあるようで、背中にかかるそれがサチさんの温もりをより一層強くしていた。妄想の中で熱く抱き合ったサチさんが、今現実で俺の股間を触っているという興奮が、さらに快感を増す。
「射撃の練習だよ。的を狙って当てるの
#9829;」
「ま、的って……」
早くも先走りの汁が滲み出たペニス。その鈴口の先にある『的』と言えば、未だ気を失っているユキさんだ。うつ伏せにへたり込む彼女にぶっかけるように、サチさんは手淫を続ける。
「ユキちゃんっていい子だよね。それに凄くエッチなの。シンペイくんとセックスする妄想を見せてあげたら、凄く喜んでたよ」
両手で一生懸命にペニスを撫で擦りながら、サチさんはクスクスと笑う。ユキさんの魅力的なお尻はまだ俺に向けられており、その丸みが欲情を誘った。そして背中に押し付けられる、サチさんの胸の膨らみも気持ちいい。
「シンペイくんのこと、ずっと好きだったんだって。私と同じ」
このままサチさんの手で射精させてほしい。ユキさんにぶっかけたい。そんな思いだけが浮かんできた。インキュバス化した、またはしつつある俺の本能なのか、それともサチさんに流し込まれた妄想が後を引いているのかは分からない。だがとにかく気持ちいい。
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