ある日の夜、いつもの様に酒場の閉店作業を行っていると、一人の男が飛び込んできた。
「今日はもう店仕舞いだ、また明日来てくれ」
ヴァイスはちらりと男を見やるとそう言ってすぐに作業を再開した。
「い、いや。私は客じゃない。頼みたいことがあるんだ。噂で聞いたが探偵なんですよね?」
「…依頼か。話を聞こう」
ヴァイスは男をカウンターへ通して座らせ、奥で仕込みをしている二人を呼んだ。
「それで、どういった内容だ?慌てて駆け込んできたようだが」
「はい、私は行商人をしており、この街以外にも色々なところへ回っている者なんですが、先程ここの街から3キロ程離れた川辺を歩いていたところ、人が倒れているのを見かけて、駆け寄って介抱しようとしたときに突然背後から襲われまして…」
「相手の姿は見たのか?」
「いえ、動きが早かったのではっきりとは…。それに振り返った時に蒼白い光を放って来ました。それがあまりにも眩しくて目を瞑ってしまって…」
「蒼白い光…?」
シャリルは訊ねながらコーヒーを入れたグラスを男の前に置いた。
「どうも…。その光の後、持っていた包みをひとつをひったくられました。目を開けたら倒れていた人の姿はなく、その場所には流木が」
「ひとつ?その中には何が入ってたんだ?」
「今日の朝市で売り出そうと思っていた食料品です」
「他に盗られた物はあります?」
「いえ、必死に逃げてきたのでそれ以外は」
「ふむ…金目の物を奪わずに食料を奪ったということは、よほど腹でも減っていたのか…。その倒れていた人ってのも油断させるために犯人の見せた幻ってことも考えられる」
犯人の犯行動機に悩んでいるとフィリアが男の服のある部分を見て言った。
「ねー?おじさんの服、この辺コゲちゃってるよ?」
「ん?確かに燃えたような跡があるな…。これはいつついたものか分かるか?」
彼女の言ったとおり、男の服の一部がこげてボロボロになっていた。
「いえ、前の街を出発した際にはこんなものは…」
「となると…、その光ってのは蒼白い炎って方で考えた方が良さそうだ」
「おじさん熱くなかったの?」
「え?どういうことだい?」
フィリアの意図が分からず怪訝そうに訊ねる。
「だって蒼白い炎って赤い炎よりもとっても熱いんだよ?お料理で使う火もみんな蒼いしね」
「そ、そうなんだ。わからなかったなぁ…」
「ということはその炎は恐らく威嚇で放ったんだろうな。食料狙いの線が濃厚だな。もしかしたら違うかも知れんが…」
「と言うと…?」
「違っていたら、お前さんはもう殺されていたって事だ」
男はそれを聞いて青ざめた表情になった。そしてそうならなかったことに安堵した。
「お前さん、魔物に恨みを買われたりはしてないか?」
「いえそんな!恨みを買われるなんて事…!」
「だろうな。見知らぬヤツを助けに行くくらいだ。そんなことはないだろうさ。しかし、炎の魔法を使う魔物なんざ沢山居るからなぁ…」
「そうでもないわよ?」
「どういう事だ?」
「さっきフィリアも言ったけど青白い炎は通常の炎よりも何倍も熱いの。つまり火属性の高等魔法に属するわ。しかも幻まで見せてくるとなると自然と絞られてくるわ」
「なるほどな。シャリル、お前さん大体の見当がつくのか?」
「えぇ。魔女、バフォメット、エキドナ…この辺りかしらね」
「フィリア他にも知ってるよー?」
はーいと元気良く手を挙げる。
「ほう?教えてくれ」
「えっとねー、イナリとヨウコっていうの」
「稲荷と妖狐…ジパングってとこに現れる魔物か。フィリアよく知っていたな。偉いぞ」
「えへへ、ジパングのご本をこの前読んだの。そしたらね、『ようじゅつ』と『きつねび』ってのを使うんだって」
「妖術に狐火か。確か妖術ってのは相手に幻を見せるものと聞いた事があるな…。とりあえずこの2体も視野に入れておこう」
「そうね。とりあえず明日犯行現場に行ってみましょう?何か見つかるかも知れないし」
「そうだな。お前さん、襲われた場所を教えてくれ。色々と調べてみよう。それから依頼料だが…」
「それはもちろん用意させてもらっています」
男は金貨が大量に入った鞄を3つと、売るはずであったであろうお酒を数種類取り出した。そのお酒はどれも見慣れないものばかりだった。
「これで足りますでしょうか?」
「この酒は?」
「私個人のルートで手に入れました各地方のお酒です。ジパング産のお酒もありますよ」
「ふむ……よし、じゃあこれ全てで手を打とう。必ず犯人を突き止めてやるからな。とっ捕まえたらソイツが奪った食料分とその服代を支払わせてやるよ」
「わかりました。場所はここになります。では、私は宿の方に」
そう言って男はメモ
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