「〜♪〜〜♪」
良く晴れた日のこと、ミカはグラウンドの隅に作られた花壇に水をあげていた。
「あら、ご機嫌ですわねミカさん。花壇のお手入れですか?」
「あ、セシルちゃん。うん、お花さんたちにお水を上げてるの」
「そうですの。ならわたくしもお手伝いしますわ」
「ほんと?ありがとうセシルちゃん」
そう言うとセシルはじょうろを取りに行く。この短い時間に小さな事件が起きた。
「ふえぇぇぇーーん!!」
「今の声はミカさん!?」
突如聞こえてきた泣き声に驚いたセシルは急いでミカの元へと戻る。
「ふえ〜ん…!ぐすっ、いたいよ〜…!」
地面にうずくまるミカを見て慌てて駆け寄る。
「ミカさん大丈夫ですの!?何かありまして!?」
「ふぇ〜セシルちゃ〜ん、ハチさんが指刺した〜…!」
ミカがセシルに指先を見せる。そこには小さな針が刺さっていた。
「これは…」
「何だ?どうした?」
声を聞きつけたコウマが駆け寄ってくる。
「先生、ミカさんの指に針が…」
「せんせ〜いたいよ〜…!」
「蜂に刺されたか…。とりあえずミカは俺が連れて行くから、すまねぇがセシルは片付けておいてくれねぇか?」
「わかりましたわ」
「よし、良い子だ。ミカ、すぐ手当てしてやるからな」
コウマはセシルの頭を撫でると、ミカを抱きかかえてすぐに自室へ向かった。
「よし、薬出すからもうちょっと我慢してココに座ってろ」
コウマは薬箱からピンセットと消毒液、ガーゼ、絆創膏を取り出す。
「ほら、手ェ出せ」
ミカは目に涙を溜めながら針の刺さった手を差し出す。コウマは彼女の手首を軽く掴み、ピンセットで針を挟む。
「ちょっと痛ぇだろうがガマンしろよ?」
彼女がこくんと頷いたのを確認すると、針を引き抜いた。そして指をくわえて毒を吸い出す。何度か繰り返した後、消毒液を含ませたガーゼで拭き取り、すぐさま絆創膏を貼り付けた。
「これでよし。しばらくは痛ぇだろうが治るまで我慢しろよ?絆創膏剥がれかけたらまた新しいのに替えるからな」
「うん、先生。ありがとう」
「んじゃ、セシルのとこに戻れ。心配してるだろうからな」
「うん。……あの、先生」
「ん、何だ?」
「どうしてハチさんは私を刺したの?」
ミカの質問にコウマは少し考え、そして伝える。
「攻撃された、と思ったんだろうな」
「私お花さんにお水をあげてただけだよ?」
「その水が原因だな」
「お水が?」
ミカは理由が解らず首を傾げる。
「そうだ。例えばだ、ミカ。リックウォーターの滝を思い浮かべろ。凄い水の量だろ?」
コウマはミスティアの北にある大きな滝を例にあげた。
「うん」
「その水をミカ、お前の頭に降ってきたらどう思う?」
「…怖い。溺れちゃうよ」
「今そう思った事を蜂も思ったんだ。そしてその水が降る原因を見つけた。それがミカ、お前だ。蜂は水をかけられて攻撃されてると思ったんだろうな。だから自分の身を守る為に攻撃したんだ」
「そうなんだ…」
「けどな、その蜂…多分ミツバチだろうな。ミツバチは針で相手を攻撃するときは、死ぬ覚悟を決めた時だ」
「なんで?」
「ミツバチは針を尻から抜こうとすると、腹が千切れて死んじまうんだよ」
「そうなんだ…かわいそう」
「そう思えるなら、その痛みに耐えてやれ。後水をやるときは注意してやろうな」
「うん。わかった」
「にしても、優しいなミカは」
コウマはミカの頭を優しく撫でた。
「えへへ…///」
「俺も昔刺されたことがあるが、俺の場合は巣をホースの水で撃ち落とそうとしてたのが原因だけどな」
コウマは昔ミカと同じく蜂に刺された時の事を話し始めた。
「ええっ!?」
彼の過去の行いにミカはビックリする。コウマが悪戯している姿を想像出来ないのだろう。
「ガキの頃、家の屋根の下に巣が出来てな。危ねーから処理する理由に悪ふざけで巣を的にして遊んでたんだわ。んで、ついに蜂の巣が地面に落ちたーって時に中から蜂がブワッと出て来てな、散々追いかけられた挙げ句体中を滅多刺しされたんだよ」
「ひえぇ〜…」
その時の様子を想像したミカは恐ろしいといわんばかりに身震いする。自分は指一ヶ所だが、コウマは体のあちこちだというのだ。
「流石の俺もあの時は泣いたな。大群に追われた恐怖と刺された痛みに。だから俺も蜂は嫌いだ」
コウマが蜂を嫌う理由を知ったミカは思わずクスクスと笑ってしまった。
「ふふふ、でもそれは先生が悪いよ〜」
「そうかぁ?あんなトコに巣を作る蜂が悪いんだよ」
まるで悪ガキのような笑顔で蜂が悪いと面白おかしく言うコウマに、ミカは苦笑した。
「違うよ〜、やっぱり先生が悪いよ〜」
「じゃあ謝っとかな
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