「…此処が、ドラゴンの住み着いた森か」
トレードマークの中折れの白いソフト帽に軽く手を置きながらそう呟いた男『ヴァイス=シリウス』は愛用の銃『ロストマグナム』を軽く構えながら森の中へと入っていった。
彼はルーゼンという街で『パニッシャー』という酒場のマスターとして暮らしていた。しかし、あくまで表向きの顔である。裏では莫大な報酬の代わりにどんな危険な依頼でも受ける探偵である。
今回の依頼者はこの街に住む豪族で、依頼内容はこの街から数キロ程離れた場所にある森に住み着いたドラゴンの住処を突き止め、これを撃退する事である。何でもあの森には一風変わった香りのする実がなる木があるらしい。その実を口にすると力が漲ってくるという代物だとか。
そしてその木の近くでドラゴンが飛んでいたのを目撃したという。その木を守るためにドラゴンを撃退して欲しいと。依頼を受けた彼は、目印の為にひとつ実を頂いた。
「あの実を売って一儲け…か。お偉いさんは金を儲ける事しか考えていないとみえる」
ヴァイスはそう皮肉を漏らしながらも森の中を進んでいく。しばらく進むと、微かだがあの実と同じ香りが漂ってきた。銃を抜き、その香りを辿りながらゆっくりと歩を進めていく。
香りが大分強くなった。例の木が近くにあると判断して立ち止まると周囲を見回し、上を見上げた。すると少し離れた所に実のなっている木を見つけた。ヴァイスはひとつもぎ取って懐に入れた。
「さて…そろそろ彼方さんも気付いた頃か?」
先程香りが強くなるにつれて薄々感じていた気配が徐々に大きくなる。そして森がざわめき、気配が一際大きくなった時、それは現れた。
“ガアアアァァァァ――!!”
空を切り裂く咆哮と共に黒き龍が今目の前に降り立った。
「…なるほど、大した気迫だ」
ヴァイスは帽子に付いた葉を落として被り直し、黒き龍に語りかける。
「お前さん程の魔物が人里近い森に何の用だ?ドラゴンっていうと俺には人里から離れた山かなんかに住んでるイメージがあるんだが」
龍は毅然とした態度で言葉を発する。
『お前に話す理由はない。此処から立ち去れ。さもなくば――』
「力ずくでも排除する…か。だが、俺にも理由があってな、はいそうですかと立ち去るワケにはいかないんでね」
『ならば――!!』
龍は今にも口から炎を吐き出さんと大きく息を吸う。
「待て!…此処で火を吐けば、お前さんの住むこの森が無くなっちまうぜ?」
ヴァイスはそう言って背を向けるとついて来いと言わんばかりに森の外へと歩き始める。
『良いだろう。しかし時間が掛かりすぎる。背中に乗れ、外まで乗せてやる』
「じゃ…遠慮なく乗らせてもらう」
そう言って背中に飛び乗ると一気に森の外へ飛び立った。
森から更に数キロ離れた荒野に降り立ち、ヴァイスは龍から降りると「なかなか良い空の旅だった。感謝する」と一言加えて己の得意とする間へと離れる。龍は背を向けている彼に攻撃はしなかった。恐らく背後を襲うなどという行為は己の誇りを汚す行為なのであろう。
「じゃ…そろそろ始めるか」
愛銃ロストマグナムを構えると、龍は炎を吐かんと大きく息を吸い込んだ。
ヴァイスはその隙を突き、走りながら弾丸を放つ。しかし、龍の頑丈な鱗には傷が付くはずもなく、当然ものともしていない。
『その様な玩具で私を倒せると思ったか!』
龍が吐いた炎がヴァイスを襲う。
「チッ…やはり鉛弾では何の意味も無いか」
舌打ちしつつ炎を避け、銃にあるスロットに小さな紫色の塊をセットし、体勢を立て直すと再びトリガーを引く。すると今度は実弾の代わりにエネルギー弾の様な物が放たれた。
『!?…魔力弾か』
流石にコレは通用するのか、少しダメージを受けたようだった。それでもかすり傷程度ではあるが。
「フ…、流石は地上の王者。コレでもかすり傷程度か」
圧倒的に不利な状況なのにヴァイスは不気味な程に落ち着いていた。
『そうだ。お前の攻撃なぞ児戯に等しい。悪い事は言わん、素直に立ち去れ』
「そいつは無理な相談だ。俺はどんな絶望的な状況でも、依頼は必ず果たす。それが俺のポリシーだ」
『ならば…もう何も言うまい!』
咆哮し、巨大な尻尾を振って弾き飛ばそうとする。
「っと…!」
それを見事に跳んでかわし、背中、翼に何発も撃ち込む。
『…っ!』
流石に翼は薄いのか、次々と撃ち抜かれていく。
「コレでお前さんは空を飛べなくなったな」
『小賢しい真似を…!』
振り向きざまに強靱な腕で叩き落とした。墜落点から砂煙が舞い上がる。普通の人間なら即死である。生きている筈がない。
『…終わりだな』
「さて、そいつはどうかな…?」
だが砂煙が舞う中から声がし、さしたる怪我もなく立つ彼
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