目を覚ますと、俺は自分の部屋ではない誰かの部屋に居た。
あれ?此処はどこだ?どうして寝てるんだっけ?確か・・・自分の家に帰ってから・・・そうだ!!!
俺は誰かに眠らされた事にようやく気が付いた。
そして、立ち上がろうとしたところで自分の身体の状態も把握する。
え?なんで立ち上げれないんだ?・・・腕がない!?足も!!何で!?
自分の手足が無いことに混乱と同時に得体の知れない恐怖が覆いつくす。
無我夢中で腕と手を動かしてみると確かに手足の感覚あるので、一応手足は無事にあるらしい。だが、肩の先、足を見てみると無い。なんだか訳が分からなくなりさらに混乱する。よく見ると、切断面らしき部分に金具が装着してあるのに気づいた。それがカラクリの種だと思った俺は何とか外してみることを試みる。
するとドアから誰かか入ってきた。
「あら?起きてたんですね!おはようございます!」
何と入ってきた人物は俺がよく知っているお隣に住んでいる人だった。部屋もよく見ると一度だけだが入った事があるので何となく見覚えがあった。
「なんで敷井さんが・・・もしかして敷井さんがこんな事やったんですか?」
「こんな事って・・・そうですよ。だって私がこうでもしないと何処に行くか分からないじゃないですか、例えば・・・誰も居ない、見つからない所で一人で・・・なんて。そんなことより気分はどうですか?」
「なっ・・・」
考えてることが筒抜けだったことに驚いた。何故隣人であるだけの人が俺のことをここまで知っているのか、少し気味が悪く思えた。
「・・・そんなの俺が何処に行こうが敷井さんには関係ないです。さっさとこれ外してください」
「関係なくは無いですよ!だって私、貴方の妻なんですから」
と彼女は衝撃的な発言をした。何を言ってるのか理解できなかった。俺には彼女も居なければ妻も居ない。にも関わらず彼女は俺の妻と言い出したのだ。理解できずに唖然として黙っていると彼女から口が開く。
「もしかして照れているんですか?フフッ可愛いんですね・・・っとそうじゃなかった。ここ最近はちゃんとした食事も摂れてないですよね?今お粥が出来たところなので持ってきますね!」
そういって彼女は部屋から出て行った。
さっきから絶え間なく情報が入ってくるので混乱しっぱなしの俺は、一旦冷静になるために情報を整理する。
彼女は何故俺を拉致まがいな事をしたのか、何故俺のことを旦那様などと呼ぶのか、考えれば考える程理解不能だ。
幸いにも会話は成立するので彼女が戻ってきたら聞くしかないようだ。やや強制的だが睡眠をとったので頭はすっきりしている。
数分経った後、彼女が鍋を持って戻ってきた。
「旦那様!お粥を持ってきたので食べさせてあげますね?」
「その前に幾つか質問したいです」
「はい!なんでしょうか?」
「何で俺が敷井さんの妻になるんです?」
「夫婦だからに決まってるからじゃないですか!後、夫婦なのですから敬語も止めてください」
全く理解できない。
「ええと、分かった敬語は止める。でも俺は敷井さんと結婚した憶えはないよ」
「もしかして私じゃ駄目・・・なのですか?」
彼女は目に涙を浮かばせながら上目遣いでこちらを見る。少し悪いことしたと罪悪感を感じた。
「あ、いや、嫌とかじゃないんだけど、なんで俺?他にも俺なんかより良い人がいるでしょ?」
「旦那様より良い人なんていないですよ!それに私は知ってますよ、旦那様が誰よりも優しい人だって」
「・・・そんなことないよ」
いきなり優しい言葉をかけられて少したじろいた。
「あります!!後輩が辛い思いをしない為に仕事したり、私に迷惑かけないよう敢えて厳しい言葉を放ったことも気づいています」
「・・・・」
「私じゃ駄目ですか?私だったらちゃんと支えることだって、旦那様が仕事しなくても養うことだって出来ます!!」
「・・・・でも、俺には敷井さんに出来ることは何も無いよ」
「そんな!旦那様は何もしなくていいんです!そもそも旦那様は特別何かする必要もないんですよ!」
「・・・でも敷井さんにはこんな死に損ないの俺なんかよりもよっぽど良い人が見つかりますよ」
「・・・・分かりました。そこまで言うなら」
やっと理解してくれたか、とそう思った瞬間
「力づくでも私の旦那様にしてあげますからね」
そういって彼女は立ち上がると俺を置いてドアから出て行った。
そしてほんの数分、彼女が戻って来ると思いきや、そこには明らかに人間ではない者がこの部屋に入ってきた。下半身は白い蛇、上半身は人間。まさしく人外がそこに立っていた。
「本当は私のことをもっと知って貰ってから姿を見せる予定でしたが、旦那様が私が思ってたより少し頑固だったので此方も強引に行かせて
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