俺と同居人は昔からの知り合いだったり、ギャグマンガやエロゲのような衝撃的な出会いがあったわけではない
だけど『気に入ったマンションの部屋の空きがなかったからルームシェアをすることになった』や『ルームシェアの申請をしたら彼女と一緒に暮らすことになった』というわけでもない
彼女と妙に縁があり、ウマがあったし、ちょうど良かったから同居する事になった
ただそれだけである
俺は不動産屋でマンションの内装を確認するために移動していた時に良い感じのゲーセンとゲームショップを見つけていたので部屋を見に行った帰りにその二つに寄る事にした
マンションの方はいまいちピンとこなかったが、この二つを発見できただけでも収穫だと思える
まぁ急いで引越ししたいわけでも無いので別に構わない、まだまだ会社でひよっこの俺が良いところに住むというのも先輩達にばれたら面倒なことになりそうな気もするし
まずはゲームショップの方から見てみることにした俺は街角でひっそりと佇む店に入ってみた
内装はそれほど古くなく、広すぎず狭すぎずといったところ
しかし商品は充実しており、一般のテレビゲームからエロゲ、同人のゲームまで有名どころからマイナーなものまでしっかりと揃っている
しかも物によっては店長がそのゲームをやった感想や面白さ、オススメ度まで書いたふきだしのような紙が貼り付けてあり購入欲がそそられる
肝心な値段は有名なものだと平均程度だが、良作だが知名度が無いもの、生産数が少なかったり既にプレミアが付いているものについては少し安い目に設定されている
店長に窺ったところ『面白いものなら沢山の人にやってもらいたいからね』と熱弁してくれた
俺は『良い店を見つけた』とほくほく気分で店を回りエロゲコーナーでとあるものを見つけた
…………まさかこんなところでオレンジ通り4番目を見つけるとは
某エロゲ会社の子作りドラゴン以降の作品は全部やったが、それ以前の作品は見つけるのも困難なレベルなので発見できたのはかなりの幸運である
俺はそのパッケージに手を伸ばしたが、もふもふとしたようなものに手が触れた
それが魔物娘の手だと気付き右下に視線を移すと、背伸びしてパッケージに手を伸ばしているバフォメットと視線が合った
「ほう……おぬしもこの作品に興味があるのか?中々見る目が良いの」
「この作品を作っている会社から出ているゲームが好きだからな」
俺は彼女と固い握手をし、その日は彼女と(途中から店長も混ざったが)閉店するまで語り合った
これが最初の出会いである
次に出会ったのは3日後、目星の付けていたゲーセンに行った時だった
今度は店の内装や置いてある筐体など細かいところは省くが、まぁ良いところで格ゲーをしていた時に遭遇した
ストーリーで最後まで行ったあたりで乱入され、全ラウンドカウントギリギリまで戦って惜しいところで負けて悔しかったので相手がどんなやつか見てやろうと思い台の反対側に向かうと、そこに座っていたのがまたも彼女だった
「晶よ、おぬし格ゲーの腕も立つようじゃの、流石のわしも焦ってしまったわ」
「まさかアンタとはな、通りで強いわけだ」
彼女とはなんだか縁があるな、そう思いつつ彼女ともう一戦し再び握手を交わした
それから一ヶ月がたった時そろそろ本格的に部屋を決めなくてはと思い、以前訪れた不動産屋に訪れた
あの日からは一度も彼女と会っておらず、彼女の存在は思い出として記憶の片隅に追いやられていた
既にいくつかの候補に絞っているのでどれにするか悩みつつ、店のドアを開けると
彼女が店内に居た
「む……またおぬしか」
「……お前とは妙に縁があるみたいだな」
少し話してみるとどうやら彼女も引越しを考えていて良い物件がないか探していたらしい
それで彼女がどんなを候補に挙げているか聞いてみたところ、一つだけ俺が候補に入れている場所と被っていた
類は友を呼ぶ、つまりはそういうことなのかもしれない
彼女と軽く笑い合っていると、半分空気になっていた店員のミミックがなにか閃いたように口を開いた
「あっ!そのお部屋なら少々の手続きを踏んでもらう事になりますが、ルームシェアができますので一緒に住んでみてはどうですか?」
俺とマツバは顔を見合わせにやりと口元を歪ませた
「これだけ縁があるのならば共に暮らしてみるのも面白いかもしれんの」
「趣味が合うやつなら一緒に生活しても苦にはならんだろうしな、それに生活費が減ると考えてもお得だし」
とまぁ俺とマツバの出会いはこんなもんだ
………余談だが、彼女がニートだと知ったのは同居を始めてからである
[5]
戻る [6]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録