翌日の放課後、二人は他に人の居ないグラウンドで対峙していた
詩織の手にはP90(サブマシンガン)、背中にはVSS(スナイパーライフル)が背負われていた
対する甲はM134(ミニガン)のみというシンプルなものである
しかし、ここで一つ疑問がある
「大佐殿、開戦する前に一つ聞いても良いでありますか?」
「なんだ?」
「なんで人間の大佐殿がそんなものを使えるのでありますか?」
そうである、映画やゲームなどで勘違いされやすいが、そもそもミニガンなんてものは、重量、反動、どれをとっても生身の人間で扱えるものではない
魔物娘が世界に現れるようになってからもその事実は変わっていない
それ以前に魔物娘ですら一部の種族ぐらいしか扱えないものである
「あぁ、それなら簡単な話だ」
「小官は制服の下に特殊な服を着込んでいる」
「少々値段は張るが、中々便利なのでな」
彼は少々と言ったが、この技術が進んだこの世界でもそんなものを作れる会社などはほぼ皆無に等しく需要があまりないので、実際はかなりの値段になるだろう
しかし、詩織はそんな事は気にせず、納得したようだ
「分かったのであります、じゃあ一応もう一度ルールを確認するのであります」
「弾丸にはヒールペインがかけてあること、制限時間は1時間、降参をするか意識を失った方の負け、これでいいでありますか?」
「大丈夫だ、この大量の弾全部にヒールペインはかけてある」
「じゃあ、このコインが地面に落ちたら開戦なのであります」
そう言って詩織はコインを上に放り投げた
コインは回転しながら宙を舞い、そして
音をたてて落ちた
コインが落ちると同時に小管はミニガンのトリガーを引く
キュイインとモーターが音をたてて銃身を回転させる
やはりこの音はいいな
しばらく回転した後、先端から銃弾がばら撒かれる
小官は装備にもよるが、基本的には固定砲台のような戦い方をする
鈍重にじわりじわりと前線を己の力で押し上げたり、頑強に拠点を攻めに来る敵を叩き潰すのが好きだからだ
だが、詩織は小官とは逆に戦場を駆け回るタイプのようだ
右へ左へと素早く駆け回り、小官の放った弾丸を避けている
SMGが好きと言っていたからスナイパーか軽量の突撃兵だと思っていたが、まさか突スナとはな
そして彼女は両手に持っていたP90を腰に差し、背中のVSSを取る
……こんな動き回っている状態では流石にスナイパーライフルは使えないだろう
そう思いつつ、彼女の方に向かって弾丸をばら撒き続ける
しかし
パスン、パスン
彼女は小官の張り巡らしている弾幕を避けながら、撃ってきた
消音されていて、スナイパーライフルの割には小さな音が小官の耳に届く
しかも狙いは精密で、小管の右肩と左肩を確実に狙って当ててくる
なるほど、アーマーを破壊してこれを持てなくしようと言うのか、面白い
だけど構造上、残り三百発程度は必要になるな
おそらくその事に気が付いた場合は小官が背負っているM134を駆動させるためのバッテリーを狙ってくるだろうな
まだまだ甘いな
………一つ気になる事がある
種族も見た目も全然違うのだが、詩織は彼女に似ていた
かつて小官を大佐殿と呼び、慕ってくれていた、彼女に
この世にはもう居ない許婚に
………どれだけ頑丈なのでありますか!?
かれこれVSSでマガジン三つ分は撃ち込んでいるのでありますよ!?
VSSの残りのマガジン数は後七つでありますか……
おそらくこのまま撃ち続けても無駄な気がするのであります
大佐殿の表情もまだまだ余裕そうだからそう思う
一応まだ一発も当たってはいないけれど、あんなものは一発でも当たったら即KOしてしまうような威力であります
………ヒールペインじゃなかったらミンチになるレベルなのでありますよ
このままジリ貧になるのもマズイ
M134が弾切れになる前に私の体力が尽きてしまいそうだからであります
………正直射線上に入らないように避けるだけでも結構キツイのであります
現状から基本的に体に命中させても無意味だと考えるのであります
つまり、つぎに狙うのは背中のバッテリーにするのであります
あれさえ壊してしまえばM134は使えなくなってしまうのであります
その上、背後を取れば弾丸に当たる心配は無い
そうと決まれば実行するのであります
私はそう思い、VSSを背中に戻した後、危険も承知で大佐殿との距離を一気に詰める
そしてそのまま跳躍
人間ならばムリな話ではあるが、魔物である私ならばこのまま飛び越えて後ろに回りこめるはず
が
「ぐっ
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録