今、俺の目の前には複雑な魔方陣が描かれている
いくつもの文献や資料を読み漁りやっと完成させたものだ
この魔方陣を使って悪魔を召喚する
よくある、悪魔と契約し望みを叶えてもらうってやつさ
俺の野望を叶えるためだったら悪魔に魂だって渡してやる覚悟はある
さて、そろそろ召喚の儀式を始めるとするか
魔方陣を用意してあるのでやることは二つだけだ
最初は魔方陣の中心に自分の血で名前を書かなくてはならない
それは用意してあったナイフで指を少し切り、その指で書き上げる
少々痛いが野望のためならこの程度はどうってことないさ
次に召喚するための呪文を唱える、一言でも間違えてしまうとそれで失敗してしまう
しかし、これに関しては丸三日かけて完璧に暗記したので問題ない
召喚する悪魔のタイプについては文献で
『淫らな世界の住民』
と書いてあったのでおそらくサキュバスかインプ辺りであろう
悪魔とはいえ美しい女性に魂を持っていかれるのであればそれはそれで本望だ
さて、暗記したとはいえ間違えるといけないのでここからは集中するとしよう
「〜〜〜」
俺が呪文をとなえ始めると魔方陣が光り始めた
どうやら成功したようだ
あとは呪文を間違えずに唱え続けるだけだな
俺が呪文を唱え終えると魔方陣が目を開けてられないほど強く光り始めた
そしてガラスが割れたような音がした
しばらくして、目を開けると魔方陣は消えていた
代わりに魔方陣の中心だった所に一人の女性が立っていた
その身に纏っている雰囲気だけでもわかる、悪魔だ
見た目でも分かりやすく、とても美しいが人間にはあるはずも無い部位がいくつか付いていた
蝙蝠のような翼、禍々しい角、先がハートの形をしている紫色の尻尾
そのどれもが彼女を悪魔であるということを物語っていた
「貴方が召喚主ね」
その声も美しく、巧みな話術で何人もの人間を惑わし、己の糧としてきたのであろう
だが俺は自分の野望以外には興味がないのでそれもないはずだ
「ああそうだ、到着して早々で悪いが俺の望みを叶えてもらおう」
興味は無い、とはいえ相手は悪魔だ、下手に会話を続けるとどんな事になるか分かったものではない
さっさと望みを叶えてもらい、代償を払い、さっさと帰ってもらうのが得策であろう
「フフ、もちろん何でも叶えてあげるわよ、相応の代償はもらうけどね」
「貴方の願いは何?世界征服?巨万の富?」
普通の奴ならばそこ辺りだろう
だが俺はそんなものには興味がない
「違うのね、じゃあ自分が愛した人でも蘇らせて欲しいのかしら?」
それも違う
俺は色恋沙汰には興味はないし、そんな願いをかなえてもらって蘇ったとしてもおそらくゾンビ化している、とかいうオチであろう
「……そんなものには興味は無い、俺の願いは唯一つだ」
「フフ、どんなものでも私は構わないわよ、ちゃんと代償を払ってくれるのならね」
そう、俺の願いは唯一つ
この願いを今まで生きていた人生20年余りずっと持ち続けていた
「俺の願い……それは花粉症を治す事だ!!!」
「へ?」
ふふふ、あまりの凄さに流石の悪魔も声が出ないか
「ショボいわね……」
なん……だと……
俺の今までの人生を馬鹿にしようとするのか!この悪魔は!
「悪魔の貴様にはわかるまい、年を明けて2ヶ月もしないうちにおきる苦痛を」
「はぁ……」
「鼻詰まりはひどい上に鼻水は垂れてくる、目は我慢できないほど痒くなる苦痛を、それだけでもとても辛いというのに朝は鼻詰まりによって気持ちの良い暖かさのまま寝れず、起きても前日に目をかきすぎたせいで目が開かなくなっている、外に出たくない憂鬱な気分で一日を始めなければならんのだ、その上酷い鼻詰まりのせいでおいしいものを食べてもいまいち味が分からなかったり、鼻をかみすぎて鼻血が出てしまったりする、夜も夜とて鼻詰まりが酷いのでなかなか寝付けなかったり、寝れたとしてもまたしても鼻詰まりのせいで目が覚めてしまったり、いびきが出てしまったりするんだ、ていうか鼻が詰まっているというのになぜ鼻水が垂れてくるんだ、つまっているならでてくるなよちくしょう、お前のせいで俺は鼻が痛くなるんだ、とにかく」
「春なんてだいっきらいだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は魂の叫びを思いっきりシャウトした
いかん、また目が痒くなってきた
「目薬!目薬はどこだぁぁぁ!!!」
「これのことかしら?」
……目薬をさしたら少し落ち着いてきた
「すまない、興奮してしまった」
「……別に構わないわ、貴方がそんな辛い思いをしているなんて知らなか
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