今回の舞台はかつてアサシンだった男が経営している宿屋
そして現在そこの一階にある休憩室に居る一組の男と魔物が主人公である
二人は机を挟んで向かい合いそれぞれが自分の持っているトランプの札に視線を落としていた
二人の傍らには数枚のコインが積み重ねてあることから博打をやっていることがわかる
この時点で二人が何をしているかがかなり絞られてくる
男が無表情な顔でカードを少し見た後、手札から数枚のカードを捨て、山札から捨てた分だけのカードを引いた
ここから導き出される結論
そう、ポーカーである
「………レイズ、銀貨二枚だ」
男の声に魔物、バフォメットは顔をしかめる
男の傍らのコインは大量に積んであるが、逆にバフォメットは、男が上乗せしたゲームに参加するための銀貨が二枚のみである
「ぐぬぬ、わしの最後のチップを使わせるつもりか……」
「じゃがわしはそんな手には乗らんぞ」
バフォメットの言葉に男は無表情のまま答える
「……そうかもしれないな、だが今回は手が悪いからお前を降ろさせて次のゲームに期待しているのかもしれないな」
男の言葉にますます顔をしかめる
だが急に笑い、モフモフとしたかわいらしい手で男に指をさした
「じゃが残念じゃったのう、今回のわしは絶好調じゃからおぬしには負けんのじゃ」
「……で、コールするのか?しないのか?」
「もちろんコールじゃ!!!」
そう叫び自分の手札を机に叩きつける
3のスリーオブアカインド(スリーカード)、4のワンペア、フルハウス(ボート)である
バフォメットはドヤ顔で男を見る
対する男は相変わらずの無表情で自分のカードを机の上に置く
ジョーカーが1枚、キングのスリーカード、ハートの5、フォーオブアカインド(フォーカード)である
男はバフォメットの傍らにあった二枚の銀貨を自分の山に積む
「……残念だったな、これでお前の俺に対する借金は二倍になったという事だ」
「うむむ、これで借金が返済できると思ったのに」
「……世の中そんなに甘くねぇんだよ、憶えておけアンティ」
アンティと呼ばれたバフォメットは少し落ち込んだ様に見えたが、ニヤリと口元を吊り上げて言った
「のう、ジャックよ、おぬしもこれだけで引き下がるつもりはないじゃろう?」
ジャックと呼ばれた男は無表情のままである
「……確かにもう少し遊びたいところだが、お前、もう金もって無いだろう」
ジャックの言葉にアンティは少し顔を赤く染めて言った
「ふふふ、おぬしから借りればいいじゃろう、額は今までの分じゃ!もちろんただで貸してくれとは言わんがの」
「……俺がお前に金を貸して得するようなことなら別に構わないが」
「おぬしも男じゃから得をするに決まっておろう」
「もしわしがまた全額無くなったのなら、わしの処女をくれてやろう!!!」
アンティの言葉を聞いてジャックは少し考え込む
しばらくの沈黙が続いたが、ジャックが口を開く
「……もし俺が勝ったのなら借金は昨日までの分の4倍になるがそれでもいいのか?」
「もちろんじゃ!まぁわしが負けたならその分もおぬしに体で払ってやろうぞ」
「……OK言ったな、これで負けてもいつぞやみたいに泣くなよ」
ジャックはそう言ったあと、自分の硬貨の山のいくつかをアンティの方に渡し、トランプを混ぜながら言う
「ルールはいつも通りのワイルドありのクローズドポーカー、ワイルドカードはジョーカーのみでいいか?」
「うむ、というかこれ以外のルールはわしは知らんからの」
二人の戦いが再び始まった
戦いが始まってから約1時間経った現在
硬貨の山は二人とも同じ程、ややジャックの方が少ないぐらいである
「……トリプルセブンズ」
「むぅ、トリプルスリーじゃ」
これで数が完全に同じになった
それぞれ同じ数の参加費(アンティ)を払いカードを5枚引く
それぞれカードを見たときの反応は非対称的だった
ジャックは相変わらずのポーカーフェイスを崩さずに自分の手札をどうするか考え、アンティは自分の手札を見た途端にニヤニヤし始めた
ジャックは何も言わずにテーブルを軽く二回叩く
チェック(今回のベットをパスすること)である
それに対しアンティは
「ヌフフ、おぬしはパスするのか、そうじゃのう、いきなり上げすぎてもおぬしは乗ってこぬし、わしもチェックでいいかのぅ」
ニヤニヤしながらこの言葉を言う
次にジャックは手札5枚のうちの二枚を捨て、山札から同じ数を引く
「ふふふ、おぬしはそこまで手が良くなかったのかのぅ、わしは交換はなしにして
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