Old One’s Future

調査の依頼をしてきたグレムリンには散々「うかつに設備に触れるなよ、あの遺跡は遥か昔のきちんと動いてた時には安全設計がしっかりしていただろうけど、今となっては中途半端に動く分どうなるかアタシにもわからんからな」と釘を刺されていたのにやらかしてしまった
床の崩落に巻き込まれて無傷で階下に落ちただけなのは幸運としか言えなかったが、壁に手をつけて立ち上がろうとしたのがまずかった
仮にもダンジョンのトラップ解錠で飯を食っている身なのにうかつすぎた
振り向いた先にある一面が黒い壁になにやらつらつらと古代文字が浮かび上がり、その横にある縦置きにされた棺桶のような箱から光が漏れている
周囲に似たようなものがない事を確認し、立ち上がり、ナイフに手を伸ばして距離をとっている間に光が漏れている箇所から煙のようなものは漏れ出し、黒い壁に浮かび上がる古代文字はグレムリンでも読むことはできないような速度で浮かんでは上に流れて消えていっている
やがて古代文字の流れが止まり、箱の中が開いた





[駆動魔力低下によりセーフモードでの起動......OK;]
[言語機能の一時停止......OK;]
[人格データ保護......OK;]
[人格データによる各部操作機能制限......OK;]
[人格データへのカメラ映像の確認制限......OK;]

「なんだい……助手君には起動前に充電はしっかりしておくように言っておいたじゃないか」

[マスターへの緊急充電要求プロトコル......エラー;]
[マスター登録がされていません]
[生体認証者に対してマスター認証しますか?......[Y/N]]

「……YESだ、元々緊急時はあの子にマスター登録してもらう予定だったんだ、どうせシステム上の主従関係だから問題ないだろうし」

[生体認証者に対するマスター認証プロトコル......開始;]





箱の中から出てきたゴーレム……いやオートマトンは直立姿勢で顔だけうつむいた姿勢のままこちらにぎこちない動きで歩み寄ってきた
以前に依頼者とは別のグレムリンから酒の席で聞いたことがある
古代遺跡に眠るオートマトン達は大抵は燃料が切れているので下手に近づいたり魔力を与えなければ動くことはないが、きちんと保管されているタイプの娘は設備が生きている場合があるが燃料が十分であるかどうかは疑わしい
もし主人になるようにお願いされた場合は応えてあげ、燃料補給をしてあげると賃金飯要らずで家事から護衛怪我の治療までしてくれる素晴らしい従者になると

『ユーザ"ケイ"に質問......当機のマスターになってくださいませんか?』

……ソロでの冒険者活動に最近限界を感じてきている所ではあった
鍵開け、トラップ解除などの危機察知系やマッピングに関する技術には自信があるが、それ以外の直接戦闘や緊急時の治療などは苦手だからだ
今回の古代遺跡調査にしても結局は古代文明に対する知識が無くて通用しない箇所も多々あった
その点彼女を従者とすることができれば、少なくともこの遺跡に対する知識は自分よりもあることから調査は進むだろうし、それ以外の面でも今後彼女に前衛を張ってもらえることを考えれば、ソロでは受けられなかった依頼を受けられることもできるだろう

断ることに対するメリットは浮かばず、ここで断るとおそらく彼女の燃料は切れ、偶然ここに来たお人好しが補給をしてあげるまで動くことすらできなくなるだろうと思うと心が痛む

「ユーザ"ケイ"ってのは俺のことで良いのかな……俺で良ければ君のマスターになるよ」

『感謝します......それではマスター認証登録プロトコルを開始します』

この時の自分は3つ失念していた
一つ、彼女の言う「ユーザ"ケイ"」っていうのがどういう意味なのか
一つ、彼女のマスターになるために何をするのかということ
一つ、彼女の燃料が何なのかということを




[生体認証者からのマスター認証合意......OK;]
[マスター認証登録プロトコル......開始;]

「指から皮膚組織の採取だろう、手早くしてくれたまえ」

[人工舌による口内組織及び唾液サンプルの摂取......開始;]

「なんだその機能は!まっ……待て……この味はあぁ
#9829;」

[口内組織及び唾液サンプルの摂取......完了;]
[マスター認証登録......完了;]

「ふぅ
#9829;……起動する前に私が知らない機能が追加されたのか……?ともあれ、あの子に充電設備まで移動させてもらい駆動用魔力を確保せねば」

[著しい魔力低下によりマスターからの緊急補給プロトコル......開始;]

「……人間からの燃料補給?なんだそれは」

[搾精機構及び吸精機構による魔力補給......開始;]

「……私はそん
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