「うわっ……朝からお前の顔を見るとか最悪だわ……」
「それはこっちのセリフよ!気持ちの良い天気なのにあんたみたいな心辛気臭い奴を最初に見るとか一気に嫌な気分になるわ!」
気持ちの良い日差しが顔を出してきた時間帯、住宅街の一角の家の前で一組の男女がお互いを貶していた
男性の方は今まさに家から出てきたと言った様子で眠そうに欠伸をし、ジトっとした視線を女性の方に向けている
女性の方は長い胴体を引き摺っていた動きを止め、途中から蛇となっている髪と同じく男性の方を威嚇しているかのように鋭い視線を男性の方に向けている
「なんでこう、魔物娘からもモテない奴と登校時間が一緒になるのかしら、もう少しゆっくりしてても良いのよ?むしろ遅刻してきたらどう?」
「俺だって家を閉め出されないなら糞真面目な罵倒蛇と一緒の時間に出ないっての……むしろそっちが早く出た方がいいと思うぞ……朝は寒くて冬眠しちゃいそうだから無理か」
二人はお互いに貶すような言葉を口から長々と吐き出しつつ同時に自らが通う学校への歩みを始める
進むペースは全く同じ速度で罵詈雑言を言い愛ながら
多くの学生の一日における数少ない楽しみ、お昼休み突入直後の昼食時は三者三様の過ごし方がある
購買に駆け込む者、別のクラスの友達の元へ食べに行く者、午前最後の授業から引き続きお昼寝を続ける者
「なんで飯の時間すら隣の席からどかないんだ?俺の事大好きかぁ?」
「私だってとっととお昼食べて友達のところに行きたいの!あんたこそグースカ寝ててお昼を食べそこねればいいのよ」
朝から変わらず罵倒を浴びせ愛ながら自席で弁当を食べる者
少し食べては口喧嘩を加速させているものの、クラスメイト達は気にかけるまでもなく自分達の話題を楽しんでいる
「相変わらず量が多すぎじゃねぇか、メドゥーサからツチノコにならないようにちょっともらってやるよ」
「多いのは確かだけど勝手に取るんじゃないわよ!それならあんたのデザートをとっちゃうわ」
二人が弁当が食べ終われば言い愛はピタリと止まり各々の友人の元へ向かうのが日常であり
口喧嘩さえしているものの弁当の中身の交換や食べる速度は一緒なのは見て取れ
メドゥーサの方の髪の蛇は男子生徒から形式上収奪した好物の甘味を美味しそうに味わっているのだから
授業が一通り終わった放課後、過ごし方は思い思いである
帰宅部RTA記録更新に熱心な男子生徒、教室に残り友人と歓談する女子生徒、想い人との逢瀬を楽しむ魔物娘の生徒
そして愛も変わらず口喧嘩を続けながら帰路につく二人
「今日は友達と帰んないのかよ、家まで一人じゃ帰れないでちゅかー?」
「方向が逆なの知ってて言ってるでしょ、嫌味なの?それとも私の事を心配してくれてるのかしら?」
朝と変わらず歩みの速度は息を合わせたようにぴったりで
メドゥーサの髪の蛇は彼の足音に合わせて心地よさそうにリズムを刻み
男子生徒は車道側で歩みを進めている
「とっとと帰るのにまた宿題やってないみたいな事はやめてよね、なんでかまた私まで説教されるのは勘弁してほしいわよ」
「お前は俺の母親かよ、つーか宿題忘れたのも半年以上も前の話だからいい加減蒸し返すのやめろよ」
傍を通る人、ある者は心配そうにしつつも関わろうとせず、ある者はちらりと視線を向けて痴話喧嘩かとそのまま外し
またある者は今日も元気にやってんねぇとにこやかな笑みを浮かべている
二人が隣同士にあるお互いの家の近くまで来た途端、教室を出てからずっと続いていた口喧嘩もその足と同じくピタリと止まる
一緒のタイミングでふぅとため息を吐くとちらりと視線を合わせ愛、数秒もせずに無言でそれぞれの自宅へと足を運びはじめる
夕飯も済ませ、元気な学生であればこれからが夜の本番だという時間
件の男子学生は自室のベッドの上でぼーっと佇む
「ふぅ、今日も一人寂しいあんたの為に来てやったわよ」
「寂しいのはどっちだろうな」
ガラリと窓が開き、件のメドゥーサがスルスルと器用に男子学生の部屋に入り込む
昼間のように言葉のぶつけ愛は行うものの、昼間のようにケンカ腰ではない
「わかっているでしょ、お互いに」
「当然だろ、何年一緒に居ると思ってんだ」
同時に肩を竦め、お互いの顔を優しい手付きで撫でる
空いた手で互いの背を抱き耳元でつぶやいた
「「お前(あんた)のことが大スキライだからな(ね)」」
二人の愛言葉を交わすと、日中外では見せなかったような笑みを浮かべ
どちらともなくキスを交わしながら服に手をかけ始めた
変わらぬ平日の晴れた朝
今日も二人の家の玄関先ではにぎやかな声が響いている
「なんで毎朝毎朝私があんたの家の前を通るタイミングで出てくるわけ、窓から見てんの?」
「
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