数組の竜騎士達に守られながらこちらに手を振るケンタウロス達が駆け回る広大な草原を抜け、世間話をしにくるハーピー達と共に山脈の間を抜け、自分の乗る飛行船は憧れの地、竜皇国ドラゴニアの下層へ着陸した
逸る気持ちを抑えてここまで護衛をしてくれた竜騎士達に礼を述べ足早に退船手続きを済ませる
「そんなにそわそわされて、よっぽど楽しみにされていたのですね、この国の民として嬉しいです」
受付の龍にクスクスと笑われつつも自身の目的を告げると彼女もまるで自身の事かの様に嬉しそうに大きな手でこちらの両手を包み込んだ
「まぁ、その為に遠路はるばるここまでいらしてくれたのですか、貴方も陛下に認められる立派な方になれるよう応援させていただきますね」
暖かい応援に胸を打たれながらも感謝の言葉を述べてその場を去る
あぁ、ついに憧れの竜騎士になれる時が来たのだ
数年前の自分はこの地に足を踏み入れるような事は一切考えていなかった
穏やかな時間の流れる緑明魔界となった故郷で友人達や家族のように愛しい人を見つけ、親の仕事を継いで幸せな時間を過ごすのだろうと考えていた
幼い頃に親魔物領となった故郷の地が好きで、魔物娘達のお陰で発展していく街が好きだった
きっかけはある日街に訪れた行商人の一団
「竜商人」を名乗る彼らは、他の魔物娘の商人達とは大きく違っていた
行商人としてよく見かけるゴブリンや形部狸は一切おらず、構成される魔物娘はワイバーンやドラゴン等のドラゴン属の人達のみ
もちろん荷物を運ぶのは馬車馬や飼いならされた魔界豚ではなく、彼女達竜である
その名に恥じない彼らはドラゴニアという国からやってきて、自らの故郷の良さを広める為に各地を巡っている途中だったそうだ
取り扱う商品もよく見る魔界産の物ではなく、竜に由来しているかのような品々ばかり
ある意味異質とも受け取れるようなそれらに自分はすっかり引き込まれてしまった
竜達が飛び回り、愛を育み、美味しい食べ物や美しい観光地、冒険者を魅了するダンジョンや闘技場
彼ら彼女らの口から出てくる取り扱う商品や土地の説明は興味を引かれるものばかり
そして広告役の吟遊詩人の吹く力強く、心地よさの感じる竜魔笛の音色と、それに合わせて歌う彼の伴侶のワームの紡ぐ物語に魅了されてしまった
かつての暗い歴史を経て建国された人と竜が手を取り合って歩む竜達の理想郷、そしてその中での花形となる竜騎士と騎竜の愛の物語
それは、自分も竜騎士となって騎竜と共に空を駆け巡りたい、共に愛を育みながら魅力的な土地に住んでみたいと思わせるには十分すぎる物語だったのだ
夢を抱いた自分はそれを目指すための道を歩んだ
いつかのためにへばってしまわない様に身体を鍛え
親と話し合い、快諾されてからは路銀稼ぎのために必死で働き
竜商人達から聞いた物だけでなく集められるだけの情報を集めてドラゴニアまでの進路を決め
仲の良かった友人達に別れを告げて旅に出た
人の足ではとても遠い道のりだったが、道行く商人の馬車に乗せてもらい、気の良い魔物娘達に狙われそうになりつつも一時的に共に歩んだり、食料がギリギリで空腹になりながらも道中の街にたどり着いたりと充実した旅だった
そしてドラゴニアの隣国から出ている飛行船の定期便に乗り込み、この地へたどり着いたのだ
「それでは竜騎士訓練生と騎竜候補者の親睦会を始める、各自相棒が決まったら申請するように、我慢できなくなった場合でもこちらで処理するので心配はいらないぞ、今日の残りは自由時間とする為好きにすると良い」
竜騎士団長殿が言葉を告げ、パァンと手を叩くと共に辺りが一気にざわめき出す
訓練生側にはこれから先の竜騎士人生が決まり、騎竜候補側には待ちに待った伴侶が決まるかもしれないのだ、騒がしくなるのも仕方ないことだろう
周りを見ると早くも相棒が決まったのかワームに巻きつかれている者やワイバーンと仲睦まじそうに手を絡ませ騎竜申請に向かう者も見受けられる
訓練生よりも騎竜候補者のが多いと言う話を事前に説明されているのであぶれると言うことは無いだろうが自身も決めなければ
騎竜候補者は今か今かと目を爛々に輝かせて居る茶髪のワイバーンや、にこやかな笑みを浮かべて他の騎竜候補者と談笑する黒髪の龍、よだれを垂らしながらあちらこちらに目移りしているワーム等本当に個性豊かな魔物ばかりである
皆が皆魅力的に映るが故に自分も目移りしながら部屋をウロウロしていると、部屋の端で佇む一人のドラゴンが目に映った
真っ直ぐに天を刺すかのように頭から生えた三本の角、カールがかかりグルグルと巻かれた金髪のロングヘアー、肩から豊満な胸元付近以外を覆う貴族の纏うドレスと騎士が身につける鎧を足したかのような金色の鱗
訓練生達に値踏みするかの視
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