流石はドラゴンというべきか、あっという間に彼女達が住んでいるという城に到着した
このあたりはかなり昔に王政が廃止されたという話を前に聞いたのでこの城はその時の名残だろうか
大きな翼を羽ばたかせて城の前に着陸し、俺とジャムを降ろすと、巨大な旧世代の姿からゆっくりと現在の人型の姿へ戻っていく
先ほどまで掴まっていた鉤爪を持つ手や力強さを感じさせる足、巨体を浮かせていた翼はそのまま縮んだようなものになり、動物のそれよりも硬質感がある二本の角が黒色の髪の間から生えている
大きな胸を包むチューブトップのような服を守るかのように紅色の甲殻や鱗を纏い、一種のタトゥーのようにも見える
「ようこそ我が城へ、改めて名乗ろう、私の名前はアーサー・モルレッドだ、使用人を助けてくれたお礼に私と家族でもてなしてやろうぞ」
アーサーがニコりと微笑む、魔物の例に漏れず美しい姿であるが、彼女の場合は男性だけでなく女性受けも良さそうな美しさである
彼女に見惚れていると、荷物を置いたジャムがこちらに向き直り、スカートの端を持ちあげて頭を下げた
「先ほどはありがとうございました、私(わたくし)の名前はジャム=ティーカ、此処アーサー様のお城で使用人をやっております」
顔を上げ、優しく微笑んできたジャムにもドキドキしているとアーサーがはっはっはと笑い、こちらの方をバシバシと叩いてきた、もちろん加減はしているのだろうが、少し痛い
「ジャムには自分の理想の主が見つかるまでという条件で働いてもらっているが、ここに住んでいる以上私の大切な家族なんだ、もちろん君が彼女の主になってもいいんだぞ?」
アーサーの言葉に苦笑いを浮かべる
そんな好かれるようなことはしていない、自分自身に従っただけなのだから
自分への嫌味を浮かべた所でふと気が付く、彼女達には名乗ってもらったのに自分は名乗ってないではないか
これは失礼だととっさに感じ、自分も頭を下げて一礼をする
「俺の名前はオルファ・カタミルだ、見ての通り冒険者をしている」
簡単な自己紹介にアーサーは頷くと、目の前にある大きな扉に手をかける
どう考えても人間1人ならば動かせないような物だが、ドラゴンである彼女にとってそれは容易らしい
地響きのような音を響かせて扉を開けると彼女とジャムは少し中に入り手招いた
「普段外に居る馬車引きのケンタウロスが居たら共に挨拶したのだがあいにく御者と新婚旅行へ行っていてな、さぁ中へ」
2人に促されて中へ入ると見た目通りの大きな広間に出た
正面には二階へつながる階段があり、突き当り踊り場の壁にはアーサーと彼女の『家族』と思われる沢山の魔物娘達が描かれた巨大な絵画がかかっている
天井からはウィル・オ・ウィスプに形を似せた大広間に相応しいサイズのシャンデリアがぶら下がっている
「見ての通り、私と家族の絵画だ、良いだろう、あそこに描かれているリャナンシーに描いてもらったんだ」
アーサーは絵画の中に居る彼女の頭の上に座っているリャナンシーに指を差し自慢げに、嬉しそうに笑顔を浮かべた
「オルファ様、まずは客室へと案内致します、こちらへどうぞ」
自分に相応しくない光景をぼんやりと眺めていると前に立っているジャムがゆらゆらと尻尾を揺らしつつ次に行くべき所を腕で示してくれた
彼女について行こうとすると、彼女の隣に立っていたアーサーがばさりと翼を広げて飛び上がった
「すまないが、私は少しやるべきことがあるのを思い出した、ジャム、後は頼んだ」
ジャムが頷いたのを確認するとそのままアーサーは二階の奥の方へと飛んでいった
広いとはいえ室内なのによく飛べるなぁと感心しているとニコニコと笑みを浮かべてジャムが待っていることに気が付いた
彼女に対する申し訳なさと少しの気恥ずかしさを振り払うように彼女の示す先を目指すべく歩き出した
ジャムに通された客室は俺が今まで泊まったことのあるどの宿屋よりも豪華だった
部屋の中央にある大きなベッドは見ただけでもわかるほどのふかふかさでありながら安い宿屋の1部屋よりも広い
机に置かれている燭台には匂いから察するにアルラウネの蜜を使った蜜蝋が刺さっている
窓から映る景色は近くにある湖と森が見えており非常に美しい
なんというか……貧乏冒険者な自分にとっては逆に落ち着かなさそうな場所ではある
「夕食まではお時間がありますので、少しだけ『サービス』させていただきますね
#9829;こちらに座っていただけますか」
有無を言わせない彼女から漂うオーラに従い素直に椅子に座る
こういう迫力もドラゴンの元で働いているから出せるのかなぁとか思いつつ、いったい何をするつもりなのだと考えたところで彼女が自分の前に移動し、跪いた
彼女は俺のズボンに手をかけると、何の躊
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