ストーカー・アンド・ボディガード

咲さんに護衛されているのにもかかわらず、また物が無くなってしまうようになった
彼女に聞いても首を振るだけで原因はわからない
もしかしてストーカーもニンジャクノイチなのだろうか
アイエエと言いたくなるのも我慢して対策を考えなくてはならないのかもしれない
彼女が居るのにもかかわらずまた盗みを働いているということは、もしかしたらそれ以上のアクションを起こしてくる危険性があるからだ
その件についても彼女に相談してみよう









件のことを彼女に伝えると、少しの間目を閉じ、何か考え付いたのだろうか、自分の荷物を持つと俺の手を引いて歩き出した
一応放課後だし、明日は休日なので遅くなっても問題はない、彼女に従うとしよう
相変わらず彼女にキスしたり絞られたりしているのでどうにも彼女の匂いが付いているようで、他の魔物娘からはカップルとしてみられているようだ
悪い気はしないけれどね
彼女は周りの生暖かい視線を無視しながら教室を出て行く
そして無言で俺の手を引いたまま学校を後にする
…………どこに向かっているのだろうか?









どこに向かうのか知らされてないまま彼女に連れられていくと、彼女は普通の一軒家の前に止まった
ここが目的地なのだろうが、いったい誰の家なのだろうか

 「……私の自宅」

……なぜ彼女は自宅に連れてきたのだろうか?
よく分からないことが多い
頭の上に?マークを浮かべながら彼女の後に続いてその家に入る
少し和風に感じる家の中を歩いていき、二階にある、おそらく彼女の部屋につれられる

 「……お茶を出すからちょっと待ってて」

そう言って彼女は部屋を出て行ってしまう
とりあえず色々と聞きたいことは多いけれど彼女が居なければ聞くこともできないので大人しく待つことにする
部屋全体は和風な感じなのだが、小物等は女性らしく可愛らしいモノがちょこちょこと並んでいる
……そして女性特有の甘い香りが部屋を漂っている
彼女の香り……嗅いだことのある……家の中……
そこまで思考したところで俺は気が付いた
彼女はの香りは確かに彼女に出会う以前に嗅いだことのある匂いなのだ
それも最近の話
自分の家の中で
ストーカーに何かを盗まれた時に嗅いだ犯人の残り香とほとんど同じような匂いだからだ
ならばここに居ることはマズイだろう
鴨が葱を背負ってなおかつ鍋とカセットコンロを抱えてきたようなものだ
彼女に『おいしく』いただかれてしまうだろう
しかし、彼女が相手ならそれでもいいかなぁとかも思ってしまう
どうしたもんかと悩んでいると部屋の扉がガチャリと開かれた

 「フフフフフ」

部屋に入ってきた彼女の様子は何かおかしかった
お茶を出すと言ってた割には何も持ってきていないとか、いつもと違う私服姿が美人とかそういう話ではなく、どこかおかしい
雰囲気とか様子が先ほどとは全然違うのだ

 「私の暗殺対象……私だけの主様……大切な旦那様……私の愛しい人……フフフ」

彼女はぶつぶつと何かを言い、微笑を浮かべながら俺の方にゆっくりと近づいてくる
本能的、というか明らかにマズイと思った俺は思わず後ずさりしてしまうが、出入り口は彼女が入ってきたドアぐらい
窓の方に行ったとしても鍵が閉まっているため、開けるまでに彼女に近づかれてしまう

 「あ……ちょ……どうしたんだよ……」

後ずさりながら彼女に問いかけるが彼女は変わらずぶつぶつ何かを言いながら近づいてくる
そして彼女の手が俺に触れそうなぐらいまで近づかれたとき

 「……待ちなさい、朔」

ドアからもう一人の彼女が現れた
クノイチが使えるという分身の術という様子ではないし、分身薬を飲んだわけでもないだろう
混乱している俺を尻目に俺に近い方の彼女は不機嫌そうにドアの方に顔を向ける

 「彼は私が暗殺するの、姉上は邪魔しないで」

どうにか落ち着いてきた思考で自分がどういう状況なのかようやく理解できた
咲さんが入ってきたことと、もう一人の彼女の言葉のおかげで
要するに俺を今襲おうとした彼女=今までのストーカー=咲さんの妹ということらしい
予想外のオチに驚いたが、彼女達の様子から考えるに二人して俺をハメようとしていた訳ではないようだ
朔(?)さんの方は自分の姉を敵でも見るような目をしているし
だけど何故咲さんは俺をわざわざここまでつれてきたのだろうか?

 「……あなたはこの人が好き、だけど私もこの人に惚れてしまった」

咲さんの唐突のカミングアウトに思わず胸がドキっとしてしまう
今日は色々ありすぎて心臓に悪い
だけど彼女の方も俺に気が合ったというのはこんな状況だけどやはり嬉しい

 「ダメ、この人は私だけの主様になってもらうの」

うっりとした声色でそういう朔さんは恋する乙女のようであるけれど、彼女の醸し出す
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