俺とコレットは今、彼女の実家にいる
説明すると少々長くなるかもしれないが、簡単に言うと彼女が妊娠したからだ
1月ほど前に彼女が妊娠したことが発覚して、俺達二人は珍しく頭を抱えることとなった
俺と彼女の間に子供ができたのはとても喜ばしいことなのだが、どこかの森の中で出産するわけにもいかないし、産まれてすぐの子を旅に同行させるのも気が引ける
独り立ちするか、旅についてこれる程度はどこかに腰を落ち着けて成長を見守りたいというのが俺達の考えだった
彼女のお腹はまだ大きくなっていないが、
とある国の城下町の宿屋で二人で悩んでいると1通の手紙が彼女宛てに届いた
送り主は彼女の母親で、ある程度定期的に二人は手紙のやり取りをしているのを知っているので別段特別なことでもなかったし内容も変わったことはなく、いつも通り彼女が旅に出ていることを心配に思っている、というものだった
コレットが手紙を読んでいる間、隣に座って頭を抱えて唸っていると、不意に彼女が何か閃いたように立ち上がった
「そうだ!ボクの実家で過ごせばいいんだよ!お父様もお母様もきっと子育ての手伝いもしてくれるだろうし、実家のあるボクの故郷はとてもいい街だよ」
コレットの産まれ育った街は、彼女の思い出や良いところを散々聞かされていたので少し興味があったし、彼女の両親が居れば子育てのわからないこともきっと教えてくれるだろう
彼女の家のある街はどの程度遠いのかは知らないが、彼女と出会ってからそれなりの時間を共に過ごしてきたのでかなりの距離になるだろうが何とかなるだろう
そう判断した俺は彼女の提案を了承した
「それじゃあ準備ができ次第ボクの実家に向かうとしようか、歩きだとどれほどかかるかわからないから、ハーピー運送で働いている知り合いに手伝ってもらうつもりだけどけど……キミには他にそういった感じのツテはあるかい?」
少し遠い街になるが、幼少の頃の友人が立ち上げたサバトで転移魔術のようなものを研究していたはずだ、そいつに言えばきっと手伝ってもらえるかもしれない
そのことを伝えると彼女は楽しそうな表情を浮かべて俺に微笑みかけた
「いつものように歩いて旅をするのも悪くないけど、自分の足以外で急いでみるのもたまには悪くないね」
「きっとキミの思っているより早く着くだろうけど、ボクの両親へのあいさつの言葉はしっかりと考えておいてよね♪」
………自分の娘を旅先で孕ませた男のことを彼女の両親はどう思うだろうか?
そう考えると少々嫌な汗をかいてしまうがなるようになるだろう
彼女の知り合いがいるハーピー運送の支部にたどり着くのに馬車で一週間、そこから俺の知り合いのサバトのある街までハーピーの空輸で3日、転移魔術の誤差の範囲から彼女の実家のある街まで徒歩で2日
急ぎながらも彼女の身体を気遣っての旅は忙しくも楽しい旅路となった
街の端にある彼女の実家の大きな屋敷に入ると彼女の両親が出迎えてくれた
母親の方は貴族のようなまぁわかりやすいヴァンパイアの恰好をしているが、父親の見た目は若い…というか若すぎる、父親、というよりもコレットの弟と言っても通じるような少年だった
そしてどこかコレット似た雰囲気の小さな女の子が彼女の母親の後ろに隠れるよう顔を覗かせていた
「おかえりなさいコレット、それと初めまして、コレットの母親のアレクシアよ」
彼女の母親は高圧的な種族であるはずのヴァンパイアと思えないほど優しく、母性的に微笑んでくる
俺のことは母親との文通でコレットが良く言ってくれていたらしく、特に問題なく受け入れてもらえたようだ
「お父様、お母様、アメリアただいま、これからまたしばらくよろしくね」
アメリアというのは小さな女の子のことだろうか?
「あぁごめんごめん、キミには話してなかったっけ?、この子はアメリア、ボクの自慢の妹さ」
「ほらアメリア、お母様の後ろに隠れてないで出ておいで……よしよし、いい子だね、ボクが旅に出る前と比べると結構大きくなったじゃないか」
コレットがアメリアを抱きかかえ、俺の前に連れてくると、アメリアはぎこちなくお辞儀をして俺にニコッと笑顔を見せてくれた
「これからよろしくおねがいしますね、おにいさま♪」
お兄様という響きはなんだかむず痒いが、俺はコレットと結ばれているわけで、彼女は義妹になるのだからおかしくはない
そう思っていたら顔に出ていたらしく、コレットとアレクシアさん、それとコレットの父親がニヤニヤと笑っていた
アメリアはなぜみんながニヤニヤしているのかわからずキョトンとしていたが
アメリアと遊んであげたり、家事を手伝ったり、アメリアとコレットに街を
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