アサシンとデスストーカー

まったく、なんで1人の人間が逃げたからってここまでするかな

ここまで来るのには3日かかった、それまでに俺を殺そうとやってきた里の人間は20人ぐらいだったと思う

流石に砂漠地帯に入ってからは1人も来ていない

まったく、なんでアサシンを辞めたのに人を殺さにゃならんのだ




俺の名前はガサ=ワーズ、ちょっと名前が売れてた元アサシンだ

同業者や依頼主からは『白い鷹』とか呼ばれてたっけな

アサシンの里で産まれたせいで物心が付いたときには既に何人か殺していた

数年前までは人を殺して金をもらうって言う生活を何の疑問を持たずに続けていたが、少し前からそんな生活が嫌になってアサシンを辞めた

最後にやった依頼の依頼主を殺してそのまま里を飛び出した

まぁ嫌になった理由は気が向いたらでいいか、めんどいし




とりあえずこの砂漠を抜けると親魔物派の国に行けるはずだ

あっちの方は腐りきった教会のクソッタレも、頭の硬い里の奴らも居ないだろうしな

街に着いたらまず仕事を探さないとなぁ・・・

今まで人を殺すことしか知らなかったから、どうすればいいかまったく分からねぇなぁ・・・

まぁとりあえずはこの砂漠を抜けることだな

そろそろ日が暮れてきたから今日はここで休むか

今日で砂漠に入ってから3日目だったはずだから、予定通り行けばあと明日のうちに着くな

明日も早いしさっさと寝るか…






あぁ、人の気配がするもんだから目が覚めちまった

まったく、もう来ないかと思って久しぶりに熟睡してたのによぉ…

人の安眠を妨害するやつには痛い目をみてもらわねぇとな

が、なぜかいつもと違う感じがするな

暗殺対象の様に生ぬるい気配でも、同業者や里のやつらの様な血のようにどろりとした気配でもない、今まで感じたことの無い感じだ

ていうか気配はすごく近くからするのだが全然姿が見えない

テントも最低限のものだからそれに隠れることなんて不可能だし、砂漠だから物陰に隠れるのも不可能だ

そんな感じでおろおろしていたら目の前の砂が一気に舞い上がった

あまりにびっくりしすぎて硬直していると舞い上がった砂塵の中から一人の女性が出てきた


 「ゲホゲホ…うー、深く潜りすぎたわ…」


少し大きめの胸や健康的な褐色肌なのは俺好みなのだが…

下半身がなんていうか…蠍だ

魔物なのだろうが…なんていう種族だったか思い出せない


 「ふぅ…いきなりで悪いけど貴方があの『白い鷹で』あっているかしら?」


…こいつから敵意は感じないが、俺は今まで反魔物勢力に居たので、一応武器は構えておくか


 「まぁ元だが一応はあっているな」


うーん、蠍だからデスストーカーだっけか

しかし見れば見るほど俺好みだな、下半身の蠍の部分も褐色肌に合っていて悪くないしな


 「そんなに警戒しなくてもいいじゃないの…」


 「私は貴方の故郷に居る知り合いから、貴方が脱走するけどアテがないだろうからって、面倒をみるように頼まれただけよ」


…里は基本魔物嫌いのやつらばっかりの所だったはずだが、魔物側の内通者がいたとはな


 「別に俺はデスストーカーさんに世話されるほど落ちぶれてはないぜ」


 「あらそうなの、今まで人を殺すことしか知らなかったのにこれから生きて行けると思っているのかしら?」


 「それと私は、デスストーカーじゃなくてギルタブリルよ」


…結構痛いとこついてくるな

ん?…この人以外の気配がするな

この人に被害が出る前にさっさとヤっちまうか


 「…なぁ、説教とかならあとでいくらでも聞くから、1分ほどまた砂の中に隠れててくれないか?」


 「なによそれ……まぁいいわ、あとでたっぷりお説教をしてあげるわ」


そう言って彼女はまた砂の中に潜っていった

さぁて、人の恋路を邪魔する奴はなんとやらって言うし、さっさと退場してもらうか

気配から察するとざっと4人ってところだな、まぁ何人来ようがあんまり関係無いけどな




俺は懐から何本か投げる用のナイフを取り出し、何も無い所に投げる

否、何も無い『ように見える』ところに投げる

ナイフはしばらくそのまま飛んでいったが、途中で見えない何かに刺さり、そこから大量の血が流れ出る

これで一人だな


まずは一人目に刺さったナイフを回収する

節約は大事だしな

そしてそのまま後ろに薙ぐ

その動作で俺の真後ろから刺そうとしてきた男の首が飛ぶ

ナイフは1本ダメになったがこれで二人目だな


流石にこれ以上ナイフをダメにすると色々マズイのでいつも仕事で使っていた細剣を取り出す

正直これ1本あれば別に他の武器は無くてもいいぐらいのお気に入りだ

なんの装飾もないシンプルな形で、刀身は純度の高いガラス
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