馬上の人達


霧が徐々に晴れてきた。
見えなかったものが見えてくる。
そして、知りたくなかった事実も知るハメになる。



左翼方面の戦況は相変わらず、魔王軍が進軍を止められていた。
バフォメットも、部隊を一旦下がらせ、集まった情報を基にして打開策を練っていた。
敵の大砲の秘密も、段々と見えてくる。

「精霊か」

「精霊…?」

呟いた言葉に反応し、よくわからない、と言った表情でテレーズが首を傾げた。

「わからんか?例えばじゃ、この濃霧の中で、何故こうも断続的な砲撃が可能なのか」

シルフだ、そうバフォメットは断言した。
風の元素から生まれた精霊シルフ。それを使い魔にした者が居る、と言う事だ。

「確かに、陣地だけ霧や煙を消したりは出来るでしょう…でも」

「ああ、他のもおるな」

上空からの偵察で、敵の陣地の詳細がすぐわかったのもこれで説明出来る。
しかし、他の要素はどうなのか?
それも、精霊だとバフォメットは言う。


敵の大砲は、木製の車輪が付いたものだ。
大砲と言う物は、運動法則にしたがっている。
弾を撃つと、そのエネルギーはすさまじいものになる。
数百キロもの重量がある大砲が、反動で一気に数メートルも後退する。
その為に、大砲の後ろに土手を盛り、それで停止させ、元の位置に戻す。
そういった作業が必要となる。ハズなのだが…

「これは、ノームの仕業で説明出来る」

確かに、百門以上ある大砲の後ろに土手を作る作業を手動でやっては、時間が足りない。
ノームならば、それらを一気に作り上げる事は可能だ。

「更に、砲弾の威力」

「イグニスですか…」

「まあ、それも多少は関係しておろうが、砲弾それ自体は違うじゃろう」

イグニスは、精々発射速度を速める為に用いられている程度だろう。

「恐らく魔力の篭った砲弾、それも種類が多い」

砲弾と言えば、まずイメージされるのは大きな鉄の塊。
それ以外にも、爆ぜる、小さな玉が飛び出す等、種類がある。
それらを混合して使っている。バフォメットはそう睨んだ。
実際、後方に運ばれる負傷者の傷も様々だ。
一概に砲兵と行っても、かなり手の込んだ魔法と科学の連合部隊。
それがオルタラの砲兵隊なのだ。


「仕掛けてみるか…」

「攻勢を強めますか?」

「いや、そうではない」

「では何を?」


バフォメットが何をしようと言うのか、テレーズはまだよくわからなかった。
逆境にあっても、常に先の手を考える。この司令官殿はそういう人だ。
また何か、策を思いついたのか…

「確か、カラステングが居たな?」

「カラステング…ですか?」

「ここに呼んで来てくれ」

意外だった、カラステングとは、本来ジパング地方のみに生息するハーピーの一種である。
参加者を募った時、応募して来たのをテレーズは覚えている。
珍しい種族だが、それ以上の感想は無かった。
一体何をする気なのか。


そのカラステングであるが、ハーピー達に混じって偵察に従事していた。
なにせ空を飛び回っているのだ、呼び出すのにも一苦労だ。
それでも何とか呼び寄せる事に成功し、バフォメットの元へやって来た。

「何か御用ですか?」

緊張している、そう一目見てわかる程、カラステングの言葉は堅い。
何故自分がここに呼ばれているのか、よくわからないと言った表情である。

「そのままでよい」

「しかし、御館様の御前で…」

聞きなれない単語であるが、どうやら司令官と言う意味なのだろう。

「かまわん、と言った。何度も言わせるな」

「…はっ」

ジパングの魔物は皆こうなのか、と内心複雑な気分になったバフォメットであったが、
早速呼び出した理由を伝える。

「別動隊を出す、導いてくれ」

「へ?」

「わからんか?」

「…い、いやぁ…その…」

余りに簡潔過ぎるその言葉に、カラステングが困惑する。

「それじゃあ誰だってわかりませんよ?」

「むう…そうか?」

見かねたテレーズが助け舟を出す。
それを受けて、バフォメットが丁寧に説明を加える。
平静を装ってはいるが、やはり焦っている。
テレーズはそう感じていた。

「攻撃隊を出し、大きく迂回させて敵の側面を突きたい」

「それを私に導けと?」

「千里眼、と言う能力があるそうじゃな?」

「なるほど…」

「霧が完全に晴れたら気取られる。チャンスは今しか無い」

正面からの攻撃が通用しない現在、迂回して攻撃するしか手段が無かった。
カラステングを呼び出したのは、霧の中で正確に相手を捕捉出来るその能力。
それが不可欠だった。

「お話はわかりました」

「やってくれるか?」

「私が率いる兵力は?」

「騎士団の半数」

そう言われた途端、カラステングの表情が変わった。
精鋭騎士団の半数を自分に任せる。バフォメ
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