大砲と小さな村

砲撃の音が響き渡る、敵の攻撃である。
右翼方面で砲兵部隊を指揮するよう言われたデュグランがそれに気付いた。
戦端が開かれた事を知り、自分の仕事にかかる。

「こっちも始めないと…」

直ちに砲撃準備を整える。
しかし、自身が指揮する砲兵隊は非常に厄介なものであった。
砲に関する知識や技術などは、言ってみれば財産である。
なので、大砲職人達は決して自らの技術を他に渡さない。
ギルドでそれらを募集して集めたのが今の砲兵隊である。
しかし、砲の作りから口径、運用方法に至るまで、同じものは二つと無い状況である。
更に不具合なども頻発し、まともに扱える砲の数は既に七割未満であった。

「準備が出来た所から砲撃開始!急げよ!」

デュグランの命令により砲撃が開始された。
しかし、散発的に各自が思い思いに発射する状況である。
絶え間なく聞こえる相手の砲撃に比べると何とも頼り無い。
辺りが煙に包まれる。霧が濃い上に辺りに煙が充満し先が見えない。
仕方なく手を止め煙を払う。こんな事では大して戦力にならんのじゃないか…などと思う。


元々自分は過去の人間である。まだ長弓などが主力だった頃の戦場で駆け回った男だ。
当時は連戦連勝だった敵の長弓部隊の弱点に気付き、砲撃によりそれを粉砕した事もあった。
魔物と結ばれ長寿を手に入れたとて、発達する技術や戦術などからは置いていかれた。
自分は必要なのだろうか…と悩んでしまう事が最近は多くなってきた。
そろそろ身を引くべきなんだろうか、それでも体が戦場の空気を求めてしまう。
つくづく救えない人種だ。




などと感傷に浸っている場合では無い、状況は刻々と変化している、戦場なのだ。
煙が晴れるのを待ち砲撃、それの繰り返しである。
しかしならが、砲撃先の敵が良くわからなかった。
偵察に向かわせた部下から報告が入ってこない。
通りかかったハーピーを見つけて話を聞くと、どうやら敵の数自体は少ないらしい。
それより気なる話があった。

「百門以上だと!?」

「砲撃が激しくて味方が進軍出来ません…」

「配置が漏れたのか!?」

敵が魔王軍に砲撃を集中させている、とハーピーは言った。
更に敵の砲の数がすさまじく多い。
加えてこの砲撃速度、この霧の中、どう考えても何かおかしい。

「司令官殿に報告は?」

「しました。更に詳細を報告しろと言われて…」

「相手がわかったら俺にも知らせてくれ!いいな」

そう言って再びハーピーを偵察に向かわせる。
相手が少ないのならそれを崩せばいい。
そこを突破口にすればいいだけの話だ。
砲兵隊からみて右後方にある村でも戦闘が始まったと連絡が入る。
あそこには魔物も居るので抑えられるだろう。それよりも早く眼前の敵を潰さなくては。























ズドン、ズドンと相変わらず鈍く散発的な砲撃を加える。
砲撃を続けてどれ位経っただろうか。
まだ眼前の敵の情報がわからない。偵察に向かったハーピーも戻ってこない。
偵察に向かった部下もまた帰ってこない。
霧が晴れては来たが、まだ何もわからない。
段々とこちらの砲弾も少なくなってくる。
更に部下を偵察に向かわせた。
これで帰って来なければいよいよおかしい。




そう思っていた時、喚声が近づいて来た。放った偵察隊が戻ってきたのか。

「いや…違う」

うっすら見えた人影が力なく崩れ落ちる。
その背後、霧の中から現れたのは、偵察に向かわせた部下では無かった。
奇声を上げながら向かってくる集団。
目に付くのは異様な服装。
赤と青を基調にした姿に細長い帽子を被り、銃を背負っている。
右手に黒く丸いものを手に、左手に縄のようなものを持ち突撃してきた。
そして左右の手を擦り合わせ黒い物体を放り投げる。
その放り投げられた黒い物体が爆ぜた。

「爆弾だと!?」

黒い物体は掌サイズの爆弾であった。
この集団はそれを投げつけながら尚も突っ込んでくる。
突如として出現した謎の集団により、砲兵陣地はパニックに陥った。
爆弾により死傷する者、槍に突かれ剣に斬られる者、銃で撃たれる者が続出し、ついには陣地を捨てて逃げ出す者も出てきた。
落ち着かせなくては、と思いデュグラン自信も剣を抜き乱戦に参加する。

「お前が指揮官か!」

そう言いながら一人の兵士が向かってきた。
相手も剣を持ち斬りかかって来るが、それを避け相手の胸元に剣を突き立てる。
それを引き抜き、相手が倒れるのを確認してから更に敵を探す。
また一人が自分に気付き向かってくるが、斬り捨てる。更に今度は槍を持った兵士が突っ込んでくる。
その突きをかわし、懐に入りまた剣を突き立てた。

「まだまだ、腕は鈍ってないな」

自分の技が通用する、その事実がたまらなく嬉しかった。
デュグラン
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