山城の欠点は、地形に制約されるその作りであるというのは周知の事だ。
なので、どうしても相互で支援する事が出来ない場所というものが存在する。
そこを集中的に攻めて突破してしまえば、ドミノ倒しのように瞬時に制圧されてしまう。
その為に必要なのが、鉄砲の集中運用である。
「それで、この城の弱点と言えば…どこかわかるか?」
「この地形なら…東北端ですか?」
「その通り、一見攻め辛そうに見えるが、実はそこがこの城のアキレス腱となる」
東北端の曲輪は、この城の中では一番標高が高い。
更に、そこは設備が充実している場所でもあり、収容人数も多い。
普通に考えれば、そこを攻めるとなればかなりの労力を要するはずだ。
しかし、先の夜戦で守備兵力の半数を失った今ではまともに避ける兵力も無いだろう。
一番設備が充実している場所ならば、実質的にそこが本丸の役割を担っている。
事実、兵舎の類はここにしかない。
縦長の城の地形も、相互支援にかなりの支障をきたしている。
これが山城の弱点だ。
「さてさて、どう戦う?」
とは言うものの、城方の取れる手段は限られている。
城に籠り防戦するか、討って出るかだ。
だが、そのどちらを選んでも、未来は決まったようなものだが…
ついに本格手な攻撃が開始された。
太鼓や鐘の音が一斉に響き渡り、竹の束や梯子などを持った集団が前進を開始する。
その後ろに、武器を持った者が続く。
「そう言えば、何か交渉するとか言ってましたよね?」
生徒の1人が、そんな事を言い出した。
「ああ、じゃがこの様子では決裂したんじゃろうよ」
「そうです、城と城主の首を差し出せば他の者の命は助けると言う条件でしたが…」
馬上の鎧武者が口を挟んできた。
彼に聞いた方が詳細がわかるだろう。
「拒否したと?」
「期待はしていませんでしたよ」
「子供の首で自分たちが助かろうとは、思っていても口には出せんじゃろうな」
結局は到底無理な話だったのだ。
出来るだけ近く、戦闘を眺められる場所へと一行も移動する。
ついに、城方からも攻撃が開始された。
お互いの射程距離まで近づいたのだ。
「流れ弾や矢に注意するんじゃぞ」
とは言っても、身を隠すような場所も無い。
ここは戦場なのだ。
一方の先鋒の部隊は、ついに堀切まで到達した。
堀切とは、角度が急な空堀のようなものだ。
それが三重に連続して掘られている。
なので、その上に板などを置いて渡るわけだが…
「いい的じゃな」
そうなれば、竹の束や盾などの遮蔽物を持っては渡れない。
予想通り、城方の攻撃によって、板の上を渡る者が次々と矢玉によって倒されている。
普通なら容易に突破できるものではないが、ここで奇妙な点に気付く。
あまりにも城からの攻撃が少ないのだ。
「少ないですね」
城からの反撃の数が少ない、それは生徒達も気付いた。
目に見えるだけでも、鉄砲や矢を放つ者の姿はかなり少ない。
百にも満たないであろうその人数で防戦を行うのは、はっきり言って無理だ。
予想通り、反撃の少なさもあってか、短時間のうちに堀切を三つ突破し、橋頭堡を築いた。
ここまで来ればもう城方になす術は無い。
竹の束に隠れ、鉄砲の火力を一点に集中させる。
そして、その援護下で一気に塀にまで近づく。
土造りの城は、張り出した構造物が作れないために、下方に死角が出来る。
そこまで潜り込めば、鉄砲や矢にも当たらない。
櫓などからの攻撃は、鉄砲による狙撃で防げるわけだ。
予想通り、手早く塀にまで張り付いた兵士たちが、塀を強引に破壊しようとしている。
簡素な造りなので、簡単に壊されてしまうだろう。
「う〜ん」
非常に順調である。
しかし、何故かバフォメットの表情は冴えないまま唸り声をあげている。
喜び勇んで解説されてもそれはそれで困るのだが、あまりに口数が少ない。
何か腑に落ちない点でもあるのか。
「先生、どうしたんですか」
「うん?ああ、ちょっとばかし気になる事があってな」
生徒の問い掛けそう答えたバフォメットだったが、今一つ要領を得ないでいる。
「何が気になるんですか、言って下さいよ」
それを教えて貰わなければ授業にならないではないか。
「ん、そうか…なら言うがな…」
バフォメットが思っていた事はこうだ。
まず城方の兵力があまりにも少ない事。
「普通は投入出来うるだけの兵力を張り付けるはずじゃ、それが無い」
「逃げたんじゃないですか」
籠城中に人が減るのはよくある事だ。
前にも言ったが、最後まで着いてくる人間など実はとても少ないものである。
なので、生徒の言った事は中々説得力があった。
「まあ、そういう考え方も出来るがな…」
人が潜む空間など殆ど無いであろうその城に居るのは百名足らず。
話では四百
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