時間的にはまだ夜とは言えないが、すでに太陽は西の空に沈みつつある。
冬の季節は、すぐに辺りが暗くなる。
気を抜くと、帰る場所がわからなくなってしまう。
しかし、幸いにも日が暮れる前には生徒達が全員戻って来た。
誰にも気づかれぬよう、そっと胸を撫で下ろしたバフォメットであったが…
早くも、新しい問題に直面していた。
「……」
割と大問題である。
想定していた中では最も危険な事それは…
人数が増えていた。
「食い物拾って来いとは言うたがな…誰が彼女や嫁まで見つけてこいと言うた」
既にリザードマンを連れてきた生徒と、もう1人を除いた27人が、食料探しに出た。
1人では危険だろうと、ペアやトリオを組ませて行かせたのだが、あまり意味は無かった。
「勝手について来たんですよ」
「俺らの意思じゃありません」
皆口を揃えて自分のせいではないと言う。
確かに、この連中にそんな甲斐性があるとも思えない。
彼女たちに言われるまま流された結果なのはわかる。
しかし、揃いも揃ってこの押しの弱さは何だ。
「先生、俺は違いますよ!」
「ほう、何が違うんじゃ?」
「俺は自分の意志でついて来いって言いました!」
「余計悪いわアホ!」
勢いよく頭の悪い事を言い放ったのは、ドラゴンを連れてきた生徒であった。
よりにもよって、先程話題にのぼった禍そのものを、この場に連れてきてしまった。
戻って来た時には、一瞬身構えたバフォメットであったが、どうやら争う気はないらしい。
それどころか、連れてきた生徒の隣にぴったりと寄り添っていた。
そのしおらしい姿からは、話で聞いたイメージは全く当てはまらない。
…幸せそうな顔が妙に癇に障るのだが、言葉には出すまい。
とりあえず許す。
器量が大きいのも彼女の魅力の一つだ。
「どいつもこいつも…イチャイチャイチャイチャしおって…ッ!」
「言葉に出てんじゃねーか」
己の耐性の無さを指摘されたのは、こいつにだけは言われたくない筆頭のアカオニだった。
その本人はと言えば、1人で食料を探しに行くと言い森の中へと姿を消した。
帰って来た時には、巨大な黒い物体を片手で引き摺りながら帰って来た。
その物体の正体は、猪であった。
「懐に何突っ込んでんだ?」
「え!?な、何の事じゃ!?」
「今ソイツから何か貰っただろ?」
「し、知らんなぁ〜…山吹色のお菓子なんてわしは知らんぞ?」
「買収されてやがる…」
やはり悪魔とて黄金の力には抗えないのだ。
懐からでもはっきりと形がわかる程の金塊を貰っては猶更だ。
「死んどるのか、それ」
話題を変えようと、運んで来た猪の話を切り出した。
やはり大きい。
まさかこのあたりの主ではあるまいか。
それぐらい立派なものだった。
「うんにゃ、気絶してるだけだわ。今からさばく」
自分でさばくと言う。
ここで役立つのが、生徒の一人が連れて来たサイクロプスである。
解体するのに、大きな刃物は必要ない。
精々刃渡り10センチ程度のもので事足りる。
条件に合う刃物をサイクロプスから借りて、さっそく解体に取り掛かる。
「しっかし…増えたなぁ」
「うむ…困った事じゃ」
「随分賑やかになったなぁ…竜まで居るたぁ大したもんだ」
「喜べんわ…こんなもん」
傍らで作業を見守るバフォメットの表情は冴えないままだ。
買収されたクセに。
「よーし、じゃあまず殺すか」
「今からか」
「ほんとは殺して血抜きやって…一日くらい放置しておいた方がいいんだけどな」
時間が無いのでこのまま頂く事にする。
アカオニが、猪の頸にナイフを押し付けると、刃をゆっくりと差し込む。
頸動脈の辺りを切り開くと、血が勢いよく溢れ出て来たが、怖気づいてはいけない。
様子を見守っていた生徒達の何人かも、その様子に眉を顰める。
「雌か?」
「おう、雄はマズイからな…冬は発情期だし」
雌を追い回し、雄同士で争う雄はそれ以前のものに比べて格段に味が落ちる。
「皮勿体ねえけどなぁ、今回はいいか」
「毛皮にしたかったのか?」
「あんまり良いもんでも無いけどよ、どっかの徳の高い坊さんだって使ってるらしいぜ」
「ありゃ熊では無かったか」
「うん、そうだっけ?」
とにかく、首を切って血抜きを行う。
ちゃんと血を抜かなければ、肉が不味くなるのでちゃんと処理をする。
木の枝に逆さに吊るして血を抜く方法もあるが、個体が大きいので難しいか。
「時間かかるなー」
「むう、なら他の食べ物の準備もするかのう」
「他の食物って何があるんだ?」
「ん?色々あるぞ」
生徒たちが各々見つけてきた食料は、やはり山菜やら茸の類が主である。
しかし、そのサイクロプスとドワーフを連れて来た生徒達が大量に食料を持ってきた
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