「と言う訳で、今日は教室を飛び出して野外授業を行いマース」
「いろいろ説明吹っ飛ばし過ぎじゃありゃしませんか」
「めんどい」
「またそんな…」
妙にテンションの高い彼女とは対照的に、生徒たちの表情は皆暗かった。
それもそのはず、この人物の授業はいつもこうだ。
思いつきやその場の勢いでコロコロと授業内容を変更したりする。
この前など生徒を魔物達に売り渡すと言う暴挙に出たばかりだ。
「なんでこの人クビにならないんだろう…」
前々から疑問に思っていた事だ。結局彼女はしばらく謹慎するだけで仕事に復帰していた。
何か見えない力が働いたのだろうか、黒い噂は絶えない。
「頭ばかり使うと老けるぞー、体動かすんじゃ体!」
当の本人はそんな噂はどこ吹く風と言った具合である。
そんな姿が更に生徒達の気分を重くさせる。
事の発端は数日前に校内の掲示板に貼り出された連絡事項だった。
「今回だけは募集制って所が余計気になるな」
野外授業を行うに当たって、志願する生徒を募集すると言った内容。
珍しい事なので、その話は学生達の間でちょっとした議論の的になっていた。
「どうせ大した事じゃ無いんだろうと軽い気持ちで志願した俺が間違ってた…」
その事を思い出した生徒達の表情が更に曇る。
実は募集要項に記されていた注意事項には、このような事が書かれていた。
『また、いかなる事態が起ころうとも当校は責任を負いかねます。
あくまで参加は自己責任でお願いします』
「と言うか注意書き小さすぎだろ、虫眼鏡使わないと見えねえよ」
「詐欺だよ詐欺」
世の中いつも騙されるのは善人ばかりだ。
この事に気付いた生徒は皆無であり、彼女…バフォメットの口からその事を知った。
言って見れば騙されてホイホイ着いて来てしまったバカが何人も居る事になる。
流石に女子生徒は勘が鋭いのか、1人も参加していなかった。
その事が更に生徒達のやる気を削ぐ。
「人を簡単に信じてはならん…今回は授業を始める前から勉強になったじゃろう?」
「訴えたら勝てるよね絶対」
「訴える前に消されそうだわ…」
もうここまで来たら従う他無い。
人望があるのか無いのかよくわからないが、その能力の高さだけは万人が認めている所である。
もう少し性格がまともであれば…と誰もが口を揃えて言うのはご愛嬌だ。
「えー、では授業に入る前に注意事項をいくつか言っておく」
事前に配られたプリントの束を捲る。
その表紙にはきったない字で『たびのしおり』と書かれていた。
文字の他には、これまた汚い蝶のようなものやら花のようなものが描かれている。
「完全に子供のセンスだよこれ」
「じゃあまず3ページから379ページまでをご覧くださ〜い」
「長いよ!」
大体そんなにページ数は無い。
よくわからんボケは放って置いてとにかくページを捲ってみる
そこには日中のスケジュール予定表が綺麗な字でビッシリと書かれていた。
「別人が書いたみたいだ」
「別人が書いたんじゃよ」
「あっさり認めやがった」
予定では、まずは結団式を行う手筈となっている。
「面倒じゃからここは省きま〜す」
「せめて予定通りしましょうよ」
一気に数ページ程すっ飛ばされてしまった。
今回の授業の名目、それは異文化交流だと言う。
前回ジパングに関する授業を行ったので、大方予想は出来る。
普通なら辞退者が続出するような状況なのだが、辞退出来ない理由があった。
「人呼んで、バフォメット探検隊じゃ!」
「急に原住民に襲われたり不自然な岩が転がってきたり木に登ると毒蛇が居たりするんですか?」
「希望があればな」
「無いよそんなもん」
希望者は居なかった。
「何と今回の授業を受けた者には、無条件で単位を差し上げます!」
「これだよ」
「くやしい…!単位なんかに…」
口ではこう言っても、体は正直なものだ。
「こいつら仕舞いに単位で股開きそうじゃな」
「開きます!」
「やだ…カッコイイ…」
「いつまでやるんだよこの流れ」
「…と言うわけで〜現地では必ずわしの言う事を聞くんじゃぞ」
「何ですかもう〜」
かれこれ30分以上、バフォメットの説明が続いていた。
旅のしおりも既に3週目に差し掛かっている。
「シャキっとせんか!油断したら死ぬぞ」
「死ぬってそんな、戦場のど真ん中に放り出されたわけじゃあるまいし」
「その通りじゃよ」
「…ん?」
「今から戦場を見学して貰いま〜す」
「……」
「帰る!今すぐ帰る!」
「先生お腹痛くなってきました!」
「親から祖父が危篤だって連絡が!」
「うわー!もう駄目だァー!!」
「うんうん、皆喜んでくれて何よりじゃ」
今回の授業の内容も加え
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