ある日の事、拓は手紙を貰った。それは、彼の下駄箱に入っていたのだ。
『今日の放火後、体育館の裏手で待つ!』
何だこれは、というのが第一印象であった。殴り書きのような汚い字、そして誤字が目立つ文。放火後ってどこに火付けする気だよ、と思わず突っ込んでしまう。
この様な手紙なのだ。当然果たし状に決まっている。行けばヤンキーに囲まれてボコボコにされるに決まっている。しがない一生徒である拓には、喧嘩する度胸も無い。ここは逃げるしかないな、と拓は思った。ほら、大昔の偉人も言っているではないか。三十六計逃げるにしかず、と。
だから拓はその日、手紙での呼び出しをすっぽかして帰った。この行動が、後にあんな事に繋がるとは、その時の拓は全く予想していなかった。まあ、素直に体育館裏に行っても同じであっただろうが……。
*****
次の日、拓は登校した瞬間に後頭部を殴られて気絶させられ、気が付けば身体をロープでぐるぐる巻きに縛られて転がされていた。そして、拓を囲む数人の者たち。どうやら、ここは体育倉庫のようである。
彼を囲んでいるのは、学校どころか近隣にまで知られている暗黒グループの面々である。そのメンバーはオーガやウシオニ、ミノタウロスやマンティコア等、皆女子なのだが喧嘩が異常に強くて凶暴な者ばかりである。そして、それらを束ねるヘルハウンドの玲華が拓を見下ろしている。
(やばいっ! 何っ、何が起こってるんだ!?)
よりによって、最凶最悪のグループとは……。拓はあまりの恐怖で全身に冷や汗を流していた。このグループに敵対した事もなければ、怒らせた事もない。それどころか、同じクラスであるにも関わらず、接触する事さえ避けていた筈である。何故このような目に遭わされているのか、正直理解できない。
「じゃあ姉御、アタシらはこれで……」
「おう、じゃあまた後でな!」
取り巻きの声に応える玲華。その玲華を残して、体育倉庫を去っていく取り巻き立ち。彼女らが出て行くと、、拓が意識を取り戻した事にとっくに気が付いていた玲華は、彼の胸倉を掴んで引き起こすと顔を近づけてドスの利いた声で凄んだ。
「おいっ、オメエ何で昨日来なかったんだよ!」
怒り心頭といった表情で詰め寄る玲華。それを聞いた拓は、もう恐怖で頭が真っ白になりそうであった。
(なっ、何っ! 昨日の手紙、まさかコイツだったのか――)
この学校で最強である彼女を怒らせるとどうなるか。そんな事は鈍い拓でも簡単に予想できる。あまりの事態に、拓は気が遠くなってゆく。
「ずっと待ってたのに……アタイに恥かかせて、どうなるか分かってんだろうな!」
玲華に身体を押さえつけられ、先に来る惨劇を予想して思わず目を瞑る拓。しかし、予想していた衝撃は来なかった。その代わり、拓の身体を温かく包み込む感触を感じた。拓はおそるおそる目を開ける。すると、意外な状況が目の前に広がっていた。なんと、彼女はうっとりとした目で拓にしがみ付いていたのだ。
「……好きだ。アタイは、テメエの事が好きなんだよぉ!」
初めて見た時からテメエに惚れてた。そう口走りながら、玲華は驚きで固まる拓の唇を奪う。
「んむっ! んちゅぅっ……んんっ、んっ! んはぁっ……ハァッ、ハァッ! ア、アタイ、もう……」
彼女は唇を離すと、我慢できねえ、と口走る。そして拓のベルトをガチャガチャと外し、ズボンに手をかけて無理やり脱がせた。
「待って! 何すんのさ!」
「何って、決まってんだろ。エッチ、おまんこ、セックス、交合い、ハメハメ、夜の営み、子作り……」
「そんなの、ダメだって!」
事も無げに卑猥な言葉を並べる彼女に、拓は突っ込みを入れる。もちろん、性的な意味ではなく、言葉である。すると、彼女はみるみる不機嫌になり、その目がすうっと細くなる。
「ああ? オメエ、アタイとセックスするのが嫌なのかよ!」
玲華は拓を睨みつける。拓は嫌だとはっきり言おうとしたが、玲華の圧力に何も言えなくなってしまう。下手な事を言えば殺される。何故かそんな気がして、恐怖で身体が強張ってしまう。
そして、脳裏に浮かぶ今後の惨劇。玲華を怒らせれば、その取り巻きの連中に簀巻きにされ、川に叩き込まれるシーンまで頭の中に浮かんできたのだ。いや、川に叩き込まれるだけで済めばいいが……。
「ちょっ、待った! そういう訳じゃ――」
拓は慌てて玲華をなだめる。彼女の取り巻きにどんな報復をされるか分からないという恐怖もあった。つくづく自分がヘタレだと自覚する拓であったが、怖いものは怖いのだから仕方が無い。
「じゃあ問題ねえな」
だが、彼女は拓の言葉を都合良く解釈し、むき出しになっている拓の逸物に手を添えた。そしてそのまま、逸物を上下にし
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