俺の名はウルフ。一応、教団に属する剣士である。
俺は今、教団からの命によって森の中に入っていた。依頼内容は、双子姉妹の捜索である。行方不明になった彼女らは、ララとリリという、俺も良く知っている姉妹であった。森へ食材を取りに行ったきり、もう五日も戻っていないらしい。
これは拙い事になった、と俺は思った。森というものは、自分らが考えるより遥かに危険だからだ。
肉食の野生動物はもちろん、魔物なんかも出没し、さらには異界への入り口なんかも存在する。だから教団では、人々には森の奥深くには行くなと指導する。
しかし、彼女らはどうした弾みか、ついつい奥深くにまで行ってしまったらしい。俺はうっそうと茂った木々の間に、彼女らが落としたと思われる籠が転がっていた。中には、山菜やキノコなどの食材がぎっしり入っていた。きっと、食材調達に夢中になってしまったのだろう。これで、危険にも気付かないまま森の最深部へと入ったのは確実であった。
この辺りは、手練の冒険者でも入り込めない地域である。迂闊に踏み込めば最後、戻ってこなかった奴も多々居るくらいである。
もちろん、教団はこんな危険な場所を放置しようとはしなかった。しかし、かつてギルドと共同で森に攻め込んだ時も、何の成果も挙げられないまま無駄に人員を犠牲にする結果に終わったのだ。それ以来、教団もギルドも森の最深部には近づかない事を厳命した。
本来なら、俺だってこんなところまで来たくなかった。最深部とはいうものの、実際はどれだけの面積かも不明で、どのような動物や魔物が居るかも把握しきれていないのだ。
しかし、俺には引けない訳があった。それは、迷い込んだのがララとリリという事である。
俺と彼女らは、いわゆる幼馴染である。幼い頃はよく一緒に遊んだものである。だが、成長するにしたがって、俺は彼女らが好きになってしまう。
しかし、誰が見ても綺麗で可愛らしく成長していく彼女らに比べ、俺は誰が見ても平凡な容姿である。到底彼女らとは釣り合わないという事を自覚していった。周囲からちやほやされ、誉めそやされる彼女らは高嶺の花。それに、彼女らは下級とはいえ立派な貴族の出。俺はしがない平民。どう考えても釣り合う訳がない。俺は彼女らへの想いを断ち切ろうと、自ら志願して教団の剣士団に入団した。
だが、どれほど離れようとしても、彼女らが頭から離れないのだ。このような想いを抱えても無駄だというのに。しかし、離れれば離れるほど、彼女らへの想いは強くなっていく。
俺は、自身を情けない奴だと笑った。二人とも好きだなんて、どれだけ欲深い奴なのだ、と。一夫多妻は教団によって禁じられているというのに、その地点で最低な男である。俺には、彼女らに近づく資格など無い。いずれ彼女らには立派な貴族の子弟との婚姻が訪れるであろう。俺の出る幕など、皆無である。
それでも、彼女らを忘れる事なんて到底できなかったようである。ララとリリが失踪したと聞いた時、俺はひどく動揺した。何があっても、彼女らを助けなければならない。気が付けば、俺は自ら教団の捜索隊に志願していた。
未練タラタラな想いを断ち切るべく、俺は激しい訓練に身を置き、毎日を血反吐を吐くような生活を送った。だが、それも限界のようだ。このような想いを抱えたまま彼女らの近くにいるのは、これ以上無理だと思った。
(何が何でも、彼女を助け出す。たとえ自分が死のうとも……そして、彼女らを助けたら、俺はこの国を出て行く)
そのような思いを抱え、俺は森の最深部へと踏み込んで行った。
*****
俺は森の中を慎重に進んでいく。途中、何度も足を止めては地面を注意深く調べ、彼女らの通った痕跡を見つけようとする。彼女らが迷い込んだのは五日前だが、運が良ければ足跡とかがまだ残っているかもしれないと思ったのだ。
しかし、思わしい成果は今のところ出ていない。それどころか、だんだん危険な方へ進んでいるのではないかと思えてきたのだ。
「――おっと!」
俺は咄嗟に飛び上がり、回避行動をとる。俺が今まで居た場所に、植物の蔓がウネウネと伸びて来ていたのだ。それも一本だけではない。何本も何本も、植物の蔓は俺を捕まえようと伸びてくる。
俺はその蔓を避け、切り払う等の回避行動を取るが、四方八方から伸びてくる。遂に逃げ場所をなくした俺はあっけなく捕らわれ、身体の自由を奪われた。そして、とある花の方へと引き寄せられていく。
「あはっ、やっと捕まえたぁ!」
「えへへ、もう逃がさないっ!」
その花の方から、二人分の声が聞こえてくる。その声を聞いた瞬間、俺はあっと叫び声をあげた。それらの声に聞き覚えがあったのだ。
「――ララっ! リリっ!」
何と、俺が探していた二
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