クリスマスも近づいたある日、カグラはバイトに励んでいた。理由は、メイへのクリスマスプレゼントを買うためである。元々やっていたバイトであるが、最近はシフトを増やしている為、メイと会えない日々が続いている。
とはいえ、これも二人の仲を深める為である。それに、クリスマスイブには二人で過ごす約束もしているので、問題ない。
しかし、カグラにとって一つだけ厄介な事があった。それは――。
「何で、俺がこんなの着なきゃいけないんだっ!」
カグラは思わず叫んだ。彼の今の格好は、ミニスカサンタである。バイト先で無理やり着せられたのだ。
「カグラ、よく似合ってるじゃないか。俺が見込んだ通りだ」
カグラの女装姿に、グッと親指を立てる店長。
「見込んだって……俺が男だって知ってんだろ!」
「それだけ中性的な顔してたら、男には見えんさ」
それに、ウチには女の子が居ないんだからしょうがないだろう、と店長は開き直る。クリスマスセールなのに、むさい男のサンタばっかりでは客も萎える、というのが店長の言い分である。
しかし、カグラはその店長に言いたい事が山ほどある。
「女の子が居ないのは、店長のセクハラが原因でしょうが!」
そう、この店長、無類の女好きなのだ。可愛い女子が入ったかと思えば、業務中でもナンパしまくりである。だから、このバイト先には女の子が寄り付かない。
そして、カグラも今、貞操の危機を迎えていた。
「いやあ、これだけ可愛いと、男と知ってても道を踏み外しそうだよ」
カグラちゅわぁぁんっ、と気持ち悪い声を出しながら、カグラに抱きつこうとする店長。そのおぞましい笑顔に、カグラは全身に鳥肌が立つのを感じた。
「どぉりゃぁぁぁーーーっ!」
イヤらしい手つきで身体を撫で回してくる店長に、カグラは回し蹴りを喰らわせた。
そんなハプニングに見舞われていたカグラであるが、それでもクリスマスを楽しみにバイトに励んでいた。そして遂にクリスマスイブを迎える。
「ちょっと、店長! 今日は午前だけって言ってたでしょうが!」
「いやあ、人手が足りないんだよ。大丈夫、ちゃんとバイト代は出すからさ」
「当たり前です! これでタダ働きだったら、怒りますよ俺!」
休むと言っていたのに人手不足で駆り出され、カグラはぼやく。例によって、ミニスカサンタの格好である。それでも、何だかんだでお世話になっているのだから断りにくかったのだが……。
しかし、午後になってもカグラはバイト先から退出でっきなかった。あまりに人手が足りなさ過ぎて、バイトを抜けられる雰囲気ではないのだ。いや、何度もカグラは抜けようとしたのだが、その度に店長がカグラを引き止めるのである。
「頼むよ〜、君に今抜けられると、回らなくなるんだよ〜」
確かに、今日はやけに客が多い事もあり、他のバイトもてんてこ舞いである。しかし、当初の予定では今日は休みだったのだ。バイトを切り上げて帰ろうとするカグラの気持ちも分からなくない。今日はメイと一緒に過ごす約束である。早く帰らないと、時間が無くなる。
「今日は彼女と過ごすから早く帰してって言ってたでしょうが!」
カグラは店長に言う。そんなカグラに、店長は憎たらしい程に満面の笑みを浮かべ、言葉を返した。
「確かに聞いた。だが、俺の言葉はただ一つ……」
『……リア充爆ぜろ!』
「こんの、ド阿呆ぉぉーーーっ!」
笑顔で親指を下に向けた店長に、カグラは飛び蹴りを喰らわせた。
*****
「くそっ、結局遅くなってしまった……」
何だかんだでギリギリまで引き止められたカグラは、大慌てで街中を走る。その格好、ミニスカサンタのままである。本来なら女装で街中を走りたくないのだが、着替えていたら約束の時間に遅れてしまうので、形振り構っていられなかったのだ。
しかし、ミニスカ姿で大股で走っているにも関わらず、周囲は誰もがカグラを男だとは気付いていないようである。走り方が男丸出しだというのに、その辺りがカグラには悲しく感じられた。
猛ダッシュの結果、ようやくメイの家に着くカグラ。応対に出てきたメイは驚いて目を丸くする。しかし、次の瞬間、メイは腹を抱えて笑い出す。
「笑うなよっ! これでも滅茶苦茶恥ずかしいんだよっ!」
「あはは、ゴメンゴメン。でも、カグラがそんな格好で来てくれるなんて、ボク……」
すっごく嬉しいよ、と言いつつメイは口の端から涎を零す。
「口に出さなくてもボクのして欲しかった事をしてくれるなんて……」
「ちょっと待てっ! これには色々と事情が――」
「はぁはぁ、カグラのミニスカサンタ……じゅるり♪」
慌てて弁解しようとするカグラ。しかし、メイはもはや聞く耳を持っていな
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