カグラには最近、悩みがあった。それは、最近出来た彼女の事である。
約一月前、カグラに人生で始めて彼女が出来た。マッドハッターである彼女はボーイッシュでサバサバしており、男装を好むちょっと変わった女の子である。彼女とは、普通じゃない出逢い方をして結ばれた。そのファーストコンタクトが異常であっただけに、それが後々まで尾を引いているのである。
その彼女に関する悩みとは何か。それは、以下の通りである。
「メイ、待たせてごめん」
「いや、別に待ってないさ……カグラ、駄目じゃないか」
とある日のデートにて。待ち合わせ場所に来たカグラは、いきなり彼女のメイに駄目出しをされる事となった。
「あの学祭の時の格好、滅茶苦茶可愛かったんだから、ちゃんと可愛い服を着ないと」
彼女は、カグラが女装して待ち合わせに来なかった事を残念がる。いつもそうなのだ。結ばれてからというもの、カグラは女装させられる事が多くなっていたのだ。彼女にとって、学園祭の時に見たカグラの女装のインパクトが相当強かったらしい。彼女自身、普段は男装しており、今日も燕尾服を着ている。彼女自身が男装を好むので、カグラが女装すれば、ある意味釣り合いは取れているとも言える。
さすがに男として見られていないという事は無いのだろう。カグラとメイの身体の相性は抜群で、エッチの時になれば、カグラの逸物でメイがよがり狂う事も珍しくない。もっとも、彼女主体で馬乗りになって動くという情けないシチュエーションではあったが……。
「男の格好した二人が手を繋いでたら可笑しいだろう? さあ、早く女装しなくちゃ!」
「待て! その理屈はおかしいっ! メイが女の子らしい服着たら万事解決だと思うんだ!」
何故わざわざ男女逆転した格好をしなくてはならないのか。カグラは女性向けファッション店に引きずられながらも、尤もだと思う意見を言う。しかし、彼女はそれで納得してくれなかった。
「ボクに女の子らしい服は似合わないし、性に合わないんだ。それに、学園祭の時のカグラの女装、凄くキュンキュンきたんだよ。なのに、あれ以来自分から見せてくれないじゃないか!」
「あんなの、二度と自分からやるかっ……って、ちょっと!」
カグラはメイにズルズル引きずられて、哀れな子牛のようにファッション店へと連行されていった。
*****
「可愛い! やはりボクが見込んだ通りだよ」
着せ替え人形のようにカグラに色々な服を着せては、楽しそうな声をあげるメイ。それだけでなく、ショップの店員までもが一緒になってコーディネートを楽しんでいる。一方カグラは、憮然とした表情で服を着せられていく。
「こんなのはどうでしょう?」
カグラの心中をよそに、店員がどんどん服を持ってくる。店員が持ってきたニットワンピースをメイは手に取り、カグラに見せてくる。
「凄くカグラに似合ってると思うよ。さあ、これを着てよ」
「やっぱり中性的な顔だから、大抵は似合いますね」
男らしくないと言われたようで、カグラはあまり嬉しくなかった。それでも、メイが心の底から楽しんでいるようで、その空気をぶち壊すのは気が引けた。何だかんだで、カグラはメイの虜になっていたのだから。しかし、このままでは少し拙い。せめて、メイに男らしさを見せられたら、とカグラ思うのだが……。
それから約一時間程も、カグラの女装ファッションショーは続いた。
ようやくファッション店から出たカグラたちは、その後もショッッピングを楽しんだ。と言っても、楽しんでいたのは主にメイであったが。ちなみに、カグラは女装させられたままである。値段の事もあり、比較的安価な服を買ったのだが、メイはコーディネートの出来にご満悦である。(カグラにとって)意外な事に、女装していても周囲の人に違和感が無いのが不思議であった。
一度、メイがクレープを買いに行くのを待っていた時、チャラ男にナンパされるという事があった。結果的に、メイが「ボクの彼女に手を出さないで欲しい」と言ったのだが、チャラ男たちはメイを男装した女子だとは思わずに「チッ、彼氏持ちかよ……」と呟いて去っていったのだ。カグラは「おいっ、気付けよ!」と思わず叫んでしまった。その時、隣でメイが爆笑していたのが忘れられない。
そろそろ、男を見せるときだと思う。しかし、どうやって男だと実感させられるだろうか。運動は元々得意ではないし、そもそも体格が小さくて外見上の男らしさは皆無に近い。
(やっぱ、アレしか無いかな……)
カグラは密かに、とある決心をした。
デートを終え、メイの家に来たカグラたち。メイの家には現在、誰もいない状態である。
「ボクの父と母は今日、家に居ないんだ。だから、泊まってもいいよ?」
メイ
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