若気の至りとその果てに

「チックショォォォーーーッ!」

 俺は思わず叫んだ。またもや邪魔されたのだ。何を邪魔されたかと言うと、恋愛に関してである。意中の女性を横から掻っ攫われたのである。


 思えば、昔からそうだった。高校時代、告白しようと女子を連れ出したかと思えば、その途中で友人に話しかけられる。「空気読めよ!」と思ったが、まさか告白しに行くから邪魔すんなとも言えず、何とか逃れ方を考えているうちに、女子が「もういいよね。私忙しいんだけど」とどこかに行ってしまう。

 そして後日、その女子は別の男と付き合い始めたのである。正直、告白が上手くいくとは限らない。それでも、見事に妨害した友人を、俺は睨んだものである。それ以来、その友人とは縁を切っている。

 それだけでは終わらない。さらに同じ高校時代になるが、ある意中の女性とお近づきになり、やっとの思いでメアドをゲットしたのだが、当時の同じ部活の奴らがふざけて、俺の携帯から卑猥な内容のメールをその女子に送りまくったのだ。俺は慌てて取り繕おうとしたが、もう遅い。その女子からは「二度と近づかないで!」というメールが返され、終了である。


 そして今回、気になっていた女性を友人に掻っ攫われた。苦心の思いで近づき、やっと仲良くなった矢先の事である。その友人は、大学で出来た友人なのだが、どうやら俺には人を見る目というものが皆無らしい。

 俺は人が信じられなくなってきていた。あまりにも、立て続けにそのような事が起こるため、俺は大学にも出ずに引きこもる日々が続き始めた。周囲の人が信じられなくなってきたのだ。

 そんなある日、友人からの連絡が入る。その友人は、小・中学の同級生で、高校は別々だった為に疎遠になったのだが、バイト先が一緒という事もあり、大学は別でありながらも再び交流が出来たのだ。

 どうやらずっとバイトに出てこない俺を心配してきたらしい。俺は、自分に起こった事を全て話した。すると、どういう話の流れか、その友人と飲みに行くことになる。



「俺も……俺も彼女が出来ないんだチクショォォォーーーッ!」

 そして飲みに行った先では、いつの間にか愚痴り合いになっていた。その友人も失恋を繰り返していたようで、その飲み会? はだんだん妙な雰囲気になっていく。周囲の客が、哀れな視線を俺らに向けているのを感じる。

 しかし俺は、この空気を悪くないと思った。目の前の友人は、はっきり言っては申し訳ないが、非モテ系である。同志が目の前に居るという事もあり、俺はなんだか親近感を覚えるのである。

 馬鹿話もした。俺は久々に、心から笑ったような気がする。そして、その流れで友人が、とある提案を口にする。

「なあ、明日学園祭に行こうぜ」
「は? 何処の?」

 その友人の言葉に、俺は頭の中に疑問符を浮かべる。確か俺の大学も友人の大学も、学園祭の時期は来ていない筈である。一体どこの学園祭に行くつもりなのだろうか。

「何言ってんだ、紋須田女学院高校があるだろうが」

 その友人は言葉を続ける。確かに、紋須田女学院高校は、今が学園祭の時期である。しかし、俺はとある事を思い出す。

「なあ、確かあの学校、男子禁制じゃなかったか?」

 そう、その高校は男子禁制という一風変わった校風を持つ学校である。そしてそれは、学園祭の時も変わらない。敷地内に入れるのは女性だけであり、たとえ授業参観でも男性は立ち入り禁止である。

「何言ってんだ、女装すれば良いだろうが!」
「……はい?」

 その友人の言葉に、俺は言葉を失う。なぜ、そうまでする必要があるのだろうか。

「一般の女は普段男とも関わるから、ソイツと俺らを比べるだろ。だが、男子禁制で男に触れていない女なら、俺らを不細工だと認識しないかもしれん。彼女を作るなら、もうこれしかないだろうが」

 なるほど、と俺は納得する。確かに、比較対象が無ければ上手くいくかもしれない。

 それに、女子高に忍び込むという計画が、だんだん俺には楽しくなってきたのだ。俺はその友人の計画に乗る事にした。今思えば、とんでもなく馬鹿な行為である。いくら泥酔していたとはいえ、この時の俺は、どうかしてたとしか思えない。


*****


「なあ、いいのか?」

 そして翌日、俺と友人は紋須田女学院高校に来ていた。二人とも女装しているのだが、はっきり言って酷い。友人曰く、俺はまだ小柄で中性的な顔に近いからマシな方である。しかし、友人の女装は人目で女装だと分かるものであった。何しろ体格が女性らしくないのだから。こんな野性味溢れる女子がどこに存在するだろうか。

「細かい事はいいんだ。世の中には不細工な女子だって居るだろう」

 しかし、どこまでも楽観的な友人は、気にした様子も無い。それどころか、好みの女子を探そうと
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