「ハァハァ」
僕は走っていた。
なぜ走っているか、それは追われているからだ。
それは誰に?相手は人間じゃない。
いや、ある意味人間じゃなくて良かったと人によっては思えるだろう。
しかし、今の僕にはそう思えない。
なぜなら
ダダダダダダッ!
武装した魔物娘がマシンガンで僕を撃ってくるからだ!
「そっちに逃げたぞぉ〜」
「逃がさないわよ、ダーリン」
「私の気持ち、受け取ってぇ〜!」
この地域一帯は戦場だ。
一方的な虐殺、いや、告白が繰り広がれている。
僕は今、銃声が鳴り響く住宅街を必死に走り抜けていた。
次々にチョコまみれにされ、お持ち帰りされる男達を横目に、右へ、左へ、できるだけ直線を走らないように走る。
口は固く閉じ、流れ弾が、魔物娘の思いと魔力が詰まった手作りチョコの弾丸が口に入らないようにする。
むやみに口など開けていたりすると……
「さぁ、お・い・つ・め・た」
「ひ、ひぃ〜」
「そんなに怖がることないじゃない。ほら、あ〜ん」
ターン!
このように銃口をを口向けられ、チョコの弾丸をお口にダイレクトアタックされてしまうのだ。
魔物娘が使っている銃は音は大きいが、弾丸の威力は余りない。
発射された時の熱でチョコも溶けているので、当たっても痛くないのだ。
感覚的には水鉄砲で溶けたチョコをBUKKAKEられたような感じかな?
実際僕も何発かの流れ弾に当たったが、服が汚れた以外は全くの無傷だ。
そんなことよりも今はチョコを口に打ち込まれた男性の方である。
実はこれで終わりではない、むしろここからが『本番』だ。
「ふふ、食べたわね?食べちゃったわね?」
「うぐっ、うぐ?」
「さぁ、わたしの気持ち、う・け・と・っ・て!」
バザァ!
「う、うほぉ〜〜!」
ブシャ!と同胞の鼻から鼻血が吹き出す。
また一人犠牲者、いや、カップルが成立してしまった。
チョコを食べさせた魔物娘はその場で服を脱ぎ捨て、勝負下着と丸分かりの派手な姿になり、この日のために考えに考え抜いたであろう悩殺ポーズを男性の目の前でした。
その破壊力は魔物娘の周りにハートマークが浮かび上っているように見えるほどである。
それがどうしたと思われただろうか?
だか、そのポーズがいけないのだ。
チョコの原料であるカカオ豆には弱いながらも興奮作用があり、媚薬とも言われているミネラルが豊富な増血作用のある食品だ。
そんなチョコを魔物娘が本気で作ったらどうなるか?
当然、魔ごころの詰まった立派な媚薬に仕上がってしまだろう。
さらに男性達は走っているのだ。
心臓バクバクで全身の血の流れも早くなっている。
そんな男性達に媚薬チョコレートを食べさせるとどうなる?
当然興奮状態になってしまうし、人によっては鼻血を吹き出す人もいる。
そして、目の前に半裸の美女が誘ってきたら、……もうおわかりだろう。
魔物娘が追わずとも男性の方から飛びついてきてくれるのだ。
つまり、
『チョコを食べさせ告白をする → 相手は惚れる!』
と、このような恐ろしい結果になってしまうのだよ!
僕がその事実に気づいたのは、つい先ほど一緒に逃げていた男性が彼女持ちになってしまった現場をポリバケツに隠れながら観察していたからだ。
興奮した男性は魔物娘に連れられ近くの民家の中へ入っていった。
そのすぐ後、家の中から 「しゅきぃ〜!だいじゅきぃでしゅ〜!」 と大声で叫ぶ男性の声を聞いてしまった。
彼は確実に惚れてしまったのだろう。
そして今、先ほどお持ち帰り確定になった男性も魔物娘と一緒に近くの民家の中へ消えていった。
残ったのは壁や道路に飛び散ったチョコレートと、男性が流した少量の鼻血。
鼻血のバレンタインとはこのことだろうか?
「あっ、見つけたぁ!」
「なにぃ?!まだ生き残りがいたのか!」
「美味しく食べてあげますからねぇ〜」
クソッ、もう見つかった!
また別の殺害現場、もといダイナミック告白の現場に隠れるしかない。
なぜか武装した魔物娘達は告白現場へ近づいてこない。
彼女達なりのエチケットなのか、横取りをさせないためのルールなのかはわからないが、とにかくそこへ逃げ込めば一時的に隠れることができるのだ。
しかし告白の時間も長くて数十秒で終わってしまうため余り長い間は隠れることができない。
家の中へ隠れることも考えたが、見えない壁みたいなものが邪魔して庭にすら入れない。
なので今は少しの休憩を取りつつ魔物娘から逃げ続けるしかない。
なんでこうなってしまったんだろうか。
それは1時間前まで遡る。
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