「……今年も来たよ……クリスマス・イブゥッ!」
真っ黒なサンタコスに大きな袋を引きずったデビルが言った。
寒々とした街の夜。
雪が降り積もり、地面は白に染まっていた。
辺りは暗く、街の街灯が付いているのに暗く感じる。
街は雪が降っていることもあり寒々しく、家々に灯る明かりをいっそう暖かく見せた。
家の中ではカップル、家族と共に過ごしている……ように見える。
そんなカップルや家族を、デビルは瞳孔が開いた目で、鋭く、刺すように見ていた。
きっと目が合ったら『おっかねぇ!殺される!!』と言ってしまうかもしれない。
「おっと、そんなことをしてる暇はなかった。今夜も恵まれない魔物娘、ぼっち男子に愛を届けないといけないからね」
デビルは再び、ざくざくと降り積もった雪を踏みしめながら、ぼっち男子の元へ行くのであった。
***
「へへへっ……今夜は俺だけ残業……同僚は彼女や家族と一緒に暖かい部屋で楽しく。……ックックック、マッチでも擦って、幸せの幻影を見ながら職場を火の海にしてやろうか?」
色々と危ない感じの会社員が一人、照明が付いてない部屋で、パソコンの明かりだけで残業をやっていた。
時間は午前11時を過ぎ、もう1時間もすれば終電も無くなりそうである。
今日は泊まりだ。悪いことにクリスマス・イブの日に……。
室温は低く、会社員は厚いジャケットを着て、背中には貼り付けようのほっかいろを仕込んでいた。
はく息は白い。
指先もぷるぷると震えていることから、長時間寒い部屋で頑張っているのだろう。
「くそッ……こんな日にッ……なんでこんな日に残業なんてッ!帰っても別に予定とかはないけど、どうせ一人だけれども……でもッ、他の人間が楽しんでるのにッ、俺がこんな扱いになっているのは我慢ならんッッ!くそ〜っ……彼女とかほしぃ〜」
「メリ〜クリスマース♪」
バンッ!とドアを開けて入ってきたのは、黒いサンタコスのデビルちゃん。
大きな袋を持って、ずんずんと会社員の所まで歩いてくる。
「きっ、キミは?」
「私はブラックサンタのデビルちゃん!クリスマスに嫉妬や恨み辛み、ましてや他人を呪うような彼女のいないぼっち男子の所にやってきて、恋人を運んじゃうキュートなキューピットよ
#9829;」
「は……はぁ?」
いきなり現れたデビルに目を白黒させながら、とりあえず答える会社員。
しかし、その会社員の目は、ツルペタな胸や絶対領域の太ももに視線を向け、ちょっとだけうれしくなったりしていた。
「あなた、彼女が欲しいと言ったわね?」
「ハァハァ……ロリペロペロ……えっ?アッハイ!恋人が欲しいです!できれば今すぐにでも!」
そう、とデビルが言って、袋の中をガサゴソをし始めた。
何を出すのか気になった会社員が見ていると、そこからにゅっと、小さな子供の腕が現れる。
「えっ!?」
その腕は会社員のネクタイを掴み、そのまま袋の中に引き込んでしまった。
「うわぁああぁぁぁああ!!」
袋の中から聞こえてくるのは会社員の悲鳴と、幾人もの子供の、女の子の甲高い声だった。
『キャーッ!お兄ちゃんよ!お兄ちゃんが来たわ!!』
『ありがとうサンタさん!今年も女子会だと思ってたけど、ようやくお兄ちゃんがやってきました!!』
『それも私たち一人にお兄ちゃんが一人ずつ……これは感謝せざる追えないわ!』
『『『『『ありがとう、サンタさん!来年も(彼氏に恵まれない)魔物娘に祝福を!!』』』』』
「メリークリスマス
#9829;」
袋の中に入れられた部屋から、デビルは笑いながら出て行った。
残ったのは、電源のついたパソコンと、会社員の仕事だけだった。
***
「はーい、撮るよー!チーズ!」
パシャリ!
最新のデジカメでとたのは、パソコンとケーキとチキン。
パソコンの画面には、可愛らしい二次元の女の子が笑っている。
「フフフ、今年もみーたんと一緒のクリスマスだね☆さー、お祝いしよう。今日はクリスマス・イブだから……」
「…………」
パソコンに写った女の子は答えない。
それはそうだ。彼女はパソコンの画面に映し出された絵であって、部屋にいるのは男一人であることに変わりはない……。
それでも男は楽しそうに、笑顔でケーキやチキンを口にほおばる。
「ああ、楽しいな!楽しいな!!今年もこんな楽しいクリスマスが送れて幸せだよ……。ほんと…………幸せ」
男の声が徐々に小さくなる。
下を向き、もうすぐで声が消えそうになったとき、ブルルッ、と男の携帯が震えた。
着信音に気づいた男は誰からのメールか確認するため、携帯をとる。
メールだった。
「……ッ!!?」
メールの送り主は、男の兄からだった。
兄
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