デビルちゃん、ぼっち狩りサンタクロース

 街から街へ旅をする男、ボッチデ・ヒトーリは堕落教会がある街へとやってきました。
 今日はクリスマス・イヴ。
 街はクリスマスムードです。
 あちこちのモミの木は飾り付けられ、時刻は夜の8時になろうとしていました。
 夜の街の空からは真っ白の雪が降っています。
 街の光りは眩しく、どこもかしこもキラキラと輝いて見えました。
 そんな輝く街にはリア充が溢れかえり、カップル達が独身男性、独身女性に精神的攻撃をするという横暴をしていたのでした。


「くそったれクリスマスだぜ」


 古い車で一人旅していたヒトーリは、当然ぼっちでした。
 友人がおらず、恋人はできたことがありません。
 家族とは当然離れて暮らしており、今年もこの日がやってきたと思っていました。

 しかし、いかにクリスマスとはいえ、いつものように宿はとらないといけません。
 ヒトーリは今夜の宿がある所を聞きだすために、目に付いた酒場へと車を走らせました。

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「おう兄ちゃん!メリーリスマスだ!!」

 酒場に入ると酔っ払ったオヤジ達が酒(クリスマスにつきもののシャンメリーという子供用シャンパン)を飲みながらヒトーリを迎え入れてくれます。
 そのことは嬉しいことなのですが、オヤジ一人一人の隣には恋人らしき魔物娘がくっついていました。
 イチャイチャ・ラブラブ。
 ピンク色のハートが酒場を飛び回ります。
 胸糞悪くなったヒトーリは言いたいことを無理矢理飲み込み、なんとか返事を返しました。


「ああ、くそったれクリスマス・イヴだな」

「おいおい、くそったれとはご挨拶だな。ガハハ!」


 酒場のテーブルにはホールケーキやチキンだらけ。
 他にも色鮮やかな料理の数々がヒトーリの目に飛び込み、思わずつばをゴクリと飲み込んでしまいそうなほど美味しそうです。
 決してクリスマスに関係する食事をとるつもりはなかったヒトーリですが、食欲には勝てそうにありません。

 チキンとケーキを頼み、安い宿はないかと店の人に聞くことにした。


「チキンとケーキを頼む。あ、ホールじゃなくていいからな。あと、この街で安くていい宿屋を知らないか?今日この街に来たばかりでわからないことだらけなんだ」


 それを聞いていた先ほどのオヤジが話に入ってきました。


「おいおい兄ちゃん。ってことは今は一人なのか?んなわけねーよな?」

「いや、一人だけど」


 カシャーン。


 お店の人二人(二人はカップル)は二人用のケーキと二人前のチキンを床に落としてしまいました。
 近くにいた魔物娘達や男性達も皿やグラスをその場に落とし、ヒトーリを信じられないという顔で見ています。
 静まり返る酒場。
 今までの陽気はどこへやら?
 ピンク色のハートの幻影は消え去り、街の外から聞こえるクリスマスソングだけが虚しく聞こえます。
 沈黙を破ったのは聞いてきたオヤジでした。


「なぁ兄ちゃん、悪いことは言わねぇよ。今すぐこの街から……いや、今日は一歩も外へ出るな。クリスマスソング歌って、クリスマスの映画を見て、ケーキ食べたら寝な。それと絶対に堕落教会に近づんじゃねーぞ。そうじゃねーと……」


「メリ〜クリスマース♪」


 バコーン!

 酒場の扉が突然蹴破られます。
 蹴破られた酒場入口から黒と茶色のサンタコスを着たデビルちゃんが入ってきました。
 白い息をコホーッと吐きながら、真っ赤の目を光らせながらの登場です。
 背中には真っ黒な袋と、可愛らしくピンク色のハートでデコってある赤いチェーンソー(魔界銀使用)を持っています。
 どちらにも血文字で『ぼっち許すまじ』の文字が英語で書いてありました。
 胸辺りには赤く光る目のような宝石であしらわれた、美しいブローチがついています。


「なになにこの雰囲気?今日は恋人達が期待膨らますクリスマス・イヴだよ?(魔物娘図鑑の世界では)性夜なんだよ?なんでみんな楽しそうじゃないの?」


 デビルちゃんは可愛らしく、あざとらしいぶりっ子をしながら店の中を見て回ります。
 とても可愛らしいデビルちゃんですが、そのの目はキノコ狩りプロの眼です!
 きっと独り身のキノコセンサーがビンビンに高まっていることでしょう。


「お、おぅ、すまねぇ。ちょいと友人が怪我しちまったみたいでよ、思わずみんな心配しちまったんだ」


 ヒトーリに忠告したオヤジが、なんとか言い繕ろおうとします。
 それを聞いたデビルちゃんは、ぞっとする程の無表情で、下からオヤジの眼を覗き込みます。

 嘘かな?
 ホントかな?
 ホントの
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