「昔なぁ」
「ん?」
見送りに来てくれた友が突如そう切り出してきた・・・・
彼とは友に村を出て、街へ行き、兵として国に志願してきた・・・・長年の親友である
そんな彼が「昔」を語ろうとしているのだから、自分の知っている昔話だとばかり思っていた
「妖怪にでおうた事がある」
はて、妖怪などその気になれば見つけられるようなものであるが・・・幸い自分はまだ一度も
出会った事は無い・・・・彼は一体どこでであったことがあるのか?尋ねた
「どこでじゃ」
「・・・・お前とおうたのがもう11の時じゃぁ・・・・あれは俺がむぅつ(6)か、ななぁ(7)ん
時やった思う・・・・皆で「鬼隠し(鬼ごっこ)」しとうた時じゃ」
知らんわけじゃ・・・
自分は10の時に村に流れ着いて来た者なのだから知らない筈である
「ワシと同い年くらいのちーさい童の姿で現れて・・・日が暮れるまで遊んでおった」
「・・・・おい、それはもしや」
「んあ、そうじゃ。たぶん・・・・ゆきわらしやあ思う」
「・・・・・」
「また会おうなぁゆうて・・・もうなんぼも会ってないがなぁ・・・ん?どうした?」
「どうしたもこうしたも無いわ、そない恐ろしいこと滅多にいうもんじゃねえ」
「ははははは!すまんすまん」
彼は笑いながこちらの背中を叩いてくる・・・・
そして、首に腕を回して最後の別れを告げる
「そいじゃあ達者にくらせえ」
「・・・・ぁあ・・・」
「手紙、おかあ達に渡してくれ」
「・・・・・・・・・ああ」
「・・・・・・・・・・・・・達者での」
「・・・・・・・・・・・・すまん」
そうして二人は別れた、寒い寒い・・・雪の振る2月の末
春の足音が聞えてくる・・・・そんな冷たい時期だった
〜雪山〜
一人の少女がゆっくりと吹雪の中を歩いている
人間ならば凍えて動けなくなるほどの寒さの中を平気な顔で歩いている事から、
彼女が人間ではないことを物語っていた。
白い着物に身を包み、雪の様に白い髪は静かに揺れ、青白い肌の色はまるで死んでいるようだ
だけれど、その表情は僅かに紅潮している、髪には花の髪飾り
その出で立ちはまるで 花嫁 のようであった
「・・・・・源次郎さん」
彼女は歩く・・・・
歩いて歩いて・・・何処までも歩いていく・・・・
「何処に居られますか・・・・」
かつて遊んだ貴方は私を嫁にとって遊んでくださいました・・・・あの時は子供のままごとでした
ですが、此度は・・・・考えるだけでも胸の奥がシンとなります。
胸に溢れる思いを携え彼女は歩く
「何処に居られますか・・・・源次郎さん」
大吹雪がふき抜ける中・・・・彼女は見つけた
「・・・・・ぉお」
懐かしくは恋しい・・・・かつて彼と夫婦の戯れをした・・・・村を見つけた
「ふぅう・・・・・今日はよぉ・・・吹雪くのぉ」
「ぅうむ・・・・」
老夫婦はぎしぎしと戸を殴りつける風に不安に思いながらも、家の中で耐える事しか
できないのだ
「都に行った源次郎は元気じゃろうか・・・・」
「もう6年になりますねぇ・・・・便りの一つも寄越してくれんと、心配でしょうがありませんよ」
「んだな・・・・都にいって・・・・べっぴんさんを嫁にもらって、孫の顔でも見せてくれりゃあ
思い残すことなく逝けるっちゅうもんじゃが・・・」
「そうですねえ・・・・・もう他の子は結婚も済ませたぁのに・・・」
等と、都へ向った今年二十歳になる次男の息子へと思いを馳せていると
こんこん・・・・と
戸を叩く音が聞えた
「?はぁい・・・」
「いやいや、わしが出よう・・・・」
老人は立ち上がって戸のところまで行き、冷気が入ってこないようにそっと戸をあてた、だが
戸を開けた瞬間、今まで感じた事のない程の寒さが隙間から突き抜けてきた!
「ぬぅ・・・ぅぐ・・・・?」
よくよく前を見れば、そこには一人の女性が立っているではないか
白い着物を身に纏った美しい女性が・・・じっとこちらを見つめていた
「だ、誰じゃ・・・・」
「・・・・・源次郎さんは、いらっしゃいますか?」
「誰じゃと聞いておる!」
「・・・・・いらっしゃらないようですね・・・・・何処に参られました?」
「(こやつ・・・・雪女じゃな!?)」
戸を閉めようと老人は思い切り戸を引っ張った
「!?・・・!!」
戸は凍てつき閉まらない・・・・目の前の雪女は静かに語る
「源次郎さんは・・・・何処に参られました?」
「だまれ!!源次郎は貴様のような化生の物など相手にせんわ!!早々に去ねぇ!!」
老人どの怒号を浴びせられた雪女
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