外伝 変らぬ者達


秋である。

さて、冷やひやと涼しい風が吹きぬける丘の一番高い所に彼は立っている


「・・・・・」


夜である。

彼が眺めるのは、夜の闇に沈みゆきながらも圧倒的な存在感を誇る巨大な城である
背後には絶壁がそびえており、絶壁は山脈に連なっている。

教科書に書いたような難攻不落の城といったところか。男はそれを眺めている


「・・・・ふぅ〜」


息を真上に吐き出して、自分の前髪を揺らす

現在、その城には敵が篭城している・・・・その城の前にはずらりと軍が並んでおり
城を包囲している形となった

若い・・・・20代前半の男で、服は何処にでも居そうな平凡な市民の服装をしている
その男はその風景をぼんやりと眺めているだけである


「軍団長殿!!」

「ぅん〜?」


一人の若い兵士が鎧が擦れて打ち合う音を響かせて男のもとまで走ってきた
男は間延びした、なんとも暢気な声で答える・・・・

この男、軍団長である。


「部隊の再編成終了いたしました」

「そ・・・それじゃ、皆には休むように伝えておいて・・・・監視もちゃんとつけてね」

「は・・・・・」


兵士はくるりと反転、男と同じ風景を眺める


「落せますかな」

「落したいねえ」

「軍団長殿・・・・隊長殿を疑うわけではありませんが、そう言った発言は兵達の前では
控えてください、浮ついた言葉は兵士達に疑心を生ませます」

「はは・・・・うん、心得てるよ。君も今日はゆっくり休んでおいて」

「は・・・・失礼致します、軍団長殿も御早いお休みを・・・・夜風は身体に染みます」

「お気遣いど〜も」


今度は兵士はゆっくりと陣へと帰っていく・・・・男は再びその城へ視線を移した。


「・・・・・・落したいねえ」


再び同じ事を呟いた、そして自分の頭を横に撫でた

男はもう一度訪れた秋の夜の静寂に身をゆだね、ゆっくりと寝転んだ


「で、君は何してるのかしら?」


男は空に言葉を投げかけた・・・・すると、寝転んだ男の頭に向って足音が聞えてくる
カチャカチャと金属が擦れ合う音、恐らくは鎧やら剣が擦れあう音であろう

そして、寝転んだ男を見下ろすように人影現れた


「おや」


それは、とても見目麗しい・・・・何処かの令嬢かと思うばかりの美貌を持つ美女
凛とした雰囲気、枝毛が一本もないほど艶やかな長い金髪、切れ目で整った顔立ち
白磁のように白い鎧を纏って、腰には一本・・・装飾のされたロングソードをさげている

一見すればどこぞの将にも見える美しい女性が男を見下ろしていた


「まるで詐欺だな」

「初対面の相手に詐欺呼ばわりですか、中々手厳しいんだニャー」

「・・・・・」

「で、君だあれ?」

「・・・・・そうだな、とりあえずは名乗ろう。イェータ・エリクソン。流れの剣士だ」

「流れの剣士には見えないなあ・・・・ぅん、とりあえず僕も名乗ろうかしら?
僕はアンドレ・ヘレニウスって言う者だよ、見ての通りこの軍の軍団長をしちゃってる」


アンドレは身を起こしてイェータに向き直った・・・月明かりが頭上より降り注いでいる


「先の戦いは見事であった・・・・」

「あ、昼間の見てたんだ」

「朝からだ」

「朝からね・・・・」

「寡兵でありながら巧みに敵を分断して蹴散らす・・・・特に最初の戦術には驚いたぞ。

まさか最初から本陣を空にして、朝霧にまぎれて敵の懐に入りこみ・・・・
そして、動転し混乱した相手の陣を部隊全てで突撃で駆けぬけ八つ裂きに・・・

最後は散り散りになった相手を迅速に・・・・稲妻が打つ様に撃破・・・・見事である」


賛辞だろうが、アンドレはふぅんと人事の様に聞き流す


「相手が「その程度の敵」だったから出来ちゃった・・・ロクに訓練もされてない民兵だから
慌ててくれたし・・・・八つ裂きにした後に集まる事もなかったから・・・・いかに敵の将が
優秀であっても、調練してない兵に手間取る事なんてそうそうないよ」

「ならば、その敵兵の質を見極める目があったということだ」

「ああそう・・・・」

「それで・・・・素晴らしき武辺者だとおもったのだが、出会ってみたら・・・・こんなに
ふざけた男だったとは」

「勝手に期待して勝手に失望してくれたね・・・・中々我侭な人だ」


アンドレは再び敵城を見据えた


「それで、君は僕に何の用?」


イェータはアンドレの目の前に立って、凛としたその両目でアンドレを見据える


「私は見ての通りの者だ、流れの兵をしている。戦いの噂を聞きつけてやってきた。
あなたの見事な手腕に感服し、是非とも貴方の軍の戦列に加えていただきたい」

「や〜だよ」


アンドレはイェータのお願いを一蹴、その場にごろんと横とになった


「考えもしてく
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..14]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33