大蒜、さらに接吻

「ねぇ、ユウタ」
既に逢瀬を重ねた回数なんて二桁に及ぶ。
以前は一週間に一度のペースだったのが今では2、3日に一度は会いに来ている。
そんなに逢瀬を重ねたところで血をもらうのは週に一度だけ。
そうでないとユウタの体を壊してしまうことになる。
直接吸っているわけでもないので魔力に体を犯されることもない分、人間の体では回復が遅いのだ。
ならなんでそのようなまでに頻繁に会いに来るかといえば…。
その…なんだ、まぁ…単に会いたいからということさ。
単純に、ユウタにね。
そんなこと、彼には聞かせていないけど。
既に真夜中といえる時間、私はユウタの隣にいた。
他には誰もいない。
寂しく光る外灯に照らされる影はユウタのだけだ。
私の影はいつもどおり映らない。
ユウタを前に以前同様公園で、今日はベンチに座りあって、私は口火を切った。
「もう私もユウタに触れられるところまできているね」
言葉の通り、私はユウタのおかげで触れることに抵抗はなくなった。
いや、正確にはユウタ限定で、ということだ。
ユウタになら肌と肌を触れ合わせても悪寒を感じず、嫌悪感を抱くこともない。
…本当は実は最初から抱いてはいなかったのだけどね。
私自身ユウタを突き飛ばし、大怪我させてしまうことを恐れていたのだが思っていた以上に体が嫌がらないものだった。
不思議と、嫌なものを感じなかった。
それはやはりユウタだからかもしれない。
ユウタ独特の雰囲気のおかげかもしれない。
引き寄せられる、惹かれるようなユウタ。
おかげで最初の頃と比べると実に進んだ。
自分から触れることができなかったのに、十分な進歩である。
今ではユウタの頬を撫でることも、抱きしめることもできるだろう。
…拒否されてしまったのだけど。
「まぁ、そーだけど?」
ユウタはベンチに手を着き、上体を逸らしながらも私の言葉に答える。
ベンチに胡坐をかいて、こちらを向いている彼に。
…ベンチで胡坐というのもなんだか変だが。
こんな時間、外出していればユウタの双子のお姉さんであるアヤカが黙っていないだろうが大丈夫らしい。
既に食事は終えたし、それに今日は父親がいるらしい。
何か変な行動をするようならお父さんも止めるだろ、とのことだ。
それなら安心して逢瀬を楽しめるというものだ。
「だから、ユウタ」
私は彼に詰め寄るように身を寄せた。
ずいっと、顔を近づける。
前なら男性にこのようなことはできなかった私が、だ。
変われている。
そう思える。
ユウタ以外の男性にできるかと問われればできないだろうけど。
「う、ん?」
ユウタは私が迫った分、体を後ろに退いた。
私も続くように体を進める。
「もう少し進めてもいいと思うのだけど、どうだろう?」
「いいんじゃ、ないの?これくらい近づいても平気になってきたんだし。」
「それでは…その―

―手を繋いでもいいだろうか?」



流石に近すぎるというので体勢を立て直して二人で座り直したその後。
私の発言にユウタは安心したような、それでもどこか残念なような様子を見せた。
…もしかしたら期待していたところなどあったのだろうか。
…むしろ私が期待しているのだが。
「えっと…じゃあ…」
ユウタは立ち上がり、気まずそうに私を見た。
気まずい、というよりも恥ずかしいといったところだろうか。
頬をわずかに赤くしているところからしてユウタも多少なりとも何か特別な感情を抱いていると思っていいだろう。
その感情まではわからなくとも。
そっけない対応をされるよりもずっといい。
「ああ」
私も立ち上がりドレスを直して手を出した。
ただそれだけなのになんだろう。
ただ手を繋ぐというだけだが、どうだろう。
その行為をしようとしているだけで胸が高鳴る。
今までだってそうだった。
ユウタの手に触れ、頬に手を添え、その身を寄せているだけでも、嬉しい。
そう思える理由は既にわかっている。
ここまでできるようになったのはユウタのおかげ。
血までもらってその上ここまで手伝ってくれた。
そんな相手に何の情を抱かないわけがないだろう。
抱いているさ、ちゃんとしたものを。
わかっているさ、これが何の気持ちなのかも。
そんなものがわからないほど私は愚かではない。
今まで無駄に生きてきたわけでもない。
それでも、こんな感情を抱いたのは初めてだがね。


―私は好きだよ。ユウタが好きだ。


聞かれれば喜んで答えよう。
問えば隠さず伝えよう。
自身に偽るほどでもない。
恥じる気持ちでもない。
こんな私が抱いたんだ。
ヴァンパイアが人間を想うんだ。
素敵じゃないか。
周りのヴァンパイアも気に入った男性を眷族にして連れ帰るらしい。
人間であるときは酷い対応を続けるというが、時間が過ぎ、彼らも同じようになれば恋人同然の対応になると聞く。
最も私はそん
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33