「―っとにあれだね。さすが淫魔だね。あたし達と考えることが全然違うわ。」
「まぁ、そう言ってやんなよ。」
あの後倒れてしまったドアをユウタがはめなおして。
私は二人の前に座っていた。
正座、というらしい姿勢で。
タタミという変わった緑色の床の上で。
さっきまでいたリビングよりも小さいけどそれなりに広い部屋の中央で。
しょんぼりしていた。
というのもどうやら私は勘違いしていたから。
あの声を聞いて、間違ったことを想像していたから。
「どこをどうやったらあれがエロい声に聞こえるのさ?何?あたし達がしてるとでも思ったの?すごい想像力だね。あたしには真似できないわ。」
「だから、そういうこというなよ。」
「だってさ、ただ着替えてただけだよ?」
そう、着替え。
ユウタとアヤカは着替えをしていたらしい。
というか、アヤカがユウタに着せてもらっていたらしい。
自分できればいいのになんて思ったけどどうやら一人で着るには難しい服のようだ。
ユカタ。
こちらの世界で、というかこの国では有名な服。
これもまたジパングで見かけたものに似ていた。
確か…キモノって言ったかしら?
それによく似ている服。
アヤカが着ているユカタは黒地に白いウサギが描かれているものだった。
そして体に巻かれた黄色い帯。
それを着込んだ彼女からはさっきまでとは違う印象を受ける。
こう言っちゃうのもあれだけど…さっきまではだらしないとしか言えなかったアヤカがユカタを着込むと随分としゃきっとしたというか…。
恐ろしげでいらいらしていた雰囲気とは違う、凛とした大人の雰囲気を纏っているというか。
それでいて、やはり可愛らしく見えるのはとても不思議。
っていうかアヤカ、昨日からウサギの柄の服をよく着てるのよね。
…好きなのかしら?
「あ、そうだ。」
と、言ったのはユウタ。
何かを思いついたかのような顔で私を見た。
自然、目があう。
赤い瞳と黒い瞳が互いを映す。
「どうせだったらフィオナも着てみる?」
「え?」
「浴衣。確か姉ちゃんの着なくなったやつがまだ残ってたはずだからさ。サイズ的にも合うだろうし。尻尾と翼の出るところを工夫すれば着られると思うけど。」
そう言ったユウタは隣においてあった大きな箱(アヤカの着ているユカタも入っていたのだろう)を探ってそれを出した。
それはアヤカの着ているものよりも一回り大きいサイズ。
私が着たらちょうどいいだろう。
色は対照的に白。
白い生地に赤い花、花びらなどが描かれている。
そして赤い帯。
アヤカの着ているウサギ柄のユカタは可愛らしいけど、これもまたいい。
一言で表すなら。
「…素敵。」
自然と言葉が漏れた。
綺麗なものを目にしたときに自然と出てしまう感嘆のため息のように。
昨日ユウタが見せてくれた夕焼けに彩られた町を目にしたように。
その声を聞いてユウタは得意げに笑みを浮かべた。
「だろ?どうせだったら着てみたらどうだよ?」
「…。」
正直なところ、着てみたい。
あんな素敵な服、着込んでみたい。
今までリリム特有のあの露出の多い服しか着ていなかったから自然とそう思う。
別におしゃれに興味がないわけじゃない。
おしゃれしたくなかったというわけもない。
ただ、着飾ってもそれを見せる相手がいなかっただけ。
さらに言うと私はリリムだからおしゃれしたところで皆の反応なんて同じだから。
いくら可愛い服を着たところで男の人を魅了してしまうのは変わらないから。
だから今までおしゃれなんてしなかった。
でも。
これは、着てみた。
「それじゃあ…いい、かしら?」
その言葉にユウタは嬉しそうに言った。
「おう。」
アヤカを見て。
「それじゃあ頼むわ。」
と、一言。
…え?
「は?」
私とアヤカは同時にユウタを見た。
アヤカはわけがわからないというk表情で。
おそらく私も同じような表情を浮かべているだろう。
その表情を向けられたユウタは…。
「…ん?」
同じような顔をしていた。
私達三人ともわけがわからないといった顔。
実際よくわからない。
「ユウタが着替えさせてくれるんじゃないの?」
と、私。
「…勘違いしているようなら言っとくけどオレはあやかの着つけはできてもフィオナのはできないぞ?そういうのは女の子同士でやってくれよ。」
と、ユウタ。
「は?何であたしがそんな面倒なことしなきゃいけないの?提案したのはゆうたでしょ?それじゃあやるのもゆうたでしょうが。」
と、アヤカ。
三人とも考えが違う。
それでも私のとアヤカのは近いものだった。
ユウタがしてくれると思ってたのに。
アヤカもユウタがしてくれると思っていたらしい。
むしろそう思うのが当然だと思う。
「…あのさ。オレはあやかだからできたんだぞ?」
「別にあたしだろうがフィオナだろうが変わらないでしょ。」
…それはだいぶ
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